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交通事故の損害賠償

2023-03-05

交通事故に巻き込まれると、自動車が壊れる等自分の所有物が損傷させられることになります。また、被害者も負傷してしまうと、入院したり、通院したり、仕事を休まざるを得なくなってしまいます。治療が終わっても、後遺症が残ってしまうこともあります。酷い事故だと被害者が亡くなってしまうこともあります。こうしたときに、被害者やその遺族が、加害者に対してどのような責任を追及することができるのでしょうか。

ここでは、交通事故によって被害者が負傷したり、死亡した場合の損害賠償について、裁判所の基準による場合を解説します。

積極損害

交通事故により発生した損害です。

治療関係費

まず、入院や通院で要した治療費があげられます。必要がない治療や過度に高額な治療、事故で発生した傷害とは無関係な治療や不必要な特別室など、過剰、無関係な治療の費用については損害に含まれません。医師による特別の指示がある場合などは認められることがあります。また、将来の手術費や治療費などいまだ発生していない費用についても、発生する蓋然性が高い場合は認められることがあります。

付き添い費用

被害者に付添が必要な場合、被害者の近親者や職業付添人の付き添い費用も損害に含まれます。

将来の介護費用

将来の介護費用についても、医師の指示又は症状の程度により必要があれば損害として認められます。

雑費

おむつや装具、など入院・治療に必要かつ相当な雑費も損害に含まれます。入院雑費は1日につき1500円とされています。

交通費・宿泊費

通院に要する交通費も損害に含まれます。基本的に電車やバスの料金になりますが、症状によりタクシー利用が相当とされる場合はタクシー代も認められることがあります。被害者本人のほか、近親者の交通費や宿泊費も認められることがあります。

学生の学費等

被害者が学生や幼児等の場合、塾の費用や補習の費用、学校等へ行く際の近親者の付き添い費用が認められる場合があります。

装具・器具等購入費

交通事故によって義歯、義眼、義手、義足等の装具・器具が必要となった場合、これらの購入費も損害に含まれます。交換が必要なものだと将来の交換費用も含まれる場合があります。

家屋・自動車等改造費

交通事故で受けた障害により生活を改めざるを得ず、自宅の家屋の立替・改装や自動車等を改造せざるを得なくなった場合、これらの費用が損害として認められることもあります。

葬儀費用

交通事故で被害者がなくなった場合、葬儀費用も損害となります。

その他に、診断書等の文書料や成年後見開始の審判手続費用、弁護士用等も損害に含まれます。

消極損害

交通事故がなければ得られたであろう利益は消極損害と呼ばれます。大きく分けて、休業損害、後遺障害による逸失利益、死亡による逸失利益があげられます。

休業損害

交通事故での受傷によって休業した場合、現実に収入が減少した分は休業損害として認められます。有給休暇を使用した場合でも休業損害と認められます。増額や昇給が見込まれる場合、その金額を考慮して決められる可能性があります。

専業主婦等の家事従事者については、女性労働者の全年齢平均の賃金額を基礎として決められます。

無職者の場合は、就労の可能性があれば認められることもあります。

後遺症による逸失利益

交通事故により後遺症が発生すると、労働能力が低下して従前のように働くことは困難となり、収入の減少が予想されます。これにより失われるであろう利益については、逸失利益として損害に含まれます。

逸失利益算定の基礎となる収入は、原則として事故前の現実の収入です。

労働能力の低下については、自動車損害賠償保障法の別表の後遺障害別等級表・労働能力喪失率表を参考として、被害者の職業、年齢、性別、後遺症の部位、程度、事故前後の稼働状況等を総合的に判断して、労働能力喪失率が決められます。

労働能力が低下する期間である労働能力喪失期間は、始期は症状固定日、終期は原則として67歳とされています。

損害賠償請求をすると、上記の労働能力喪失の終期までの分を、請求した時に得られることになります。この金額をその後も運用できるとすると、利息分本来の喪失分より多くの利益を得てしまうことになるため、「中間利息控除」として、増額する利息分を控除します。中間利息の控除はライプニッツ式とホフマン式がありますが、現在はライプニッツ式が主流です。なお、民法の規定により、中間利息の控除は、損害賠償の請求権が生じた時点における法定利率により決められます(民法第417条の2第1項)。令和2年4月1日以降は年3%です。法定利率は3年毎に見直されます。

逸失利益の計算は、「基礎収入額×労働能力喪失率×労働能力喪失期間に対応するライプニッツ係数」により行われます。

一方で、この損害賠償金額は高額になることが予想されます。特に被害者が重い障害を負ったり亡くなったりしたときは、莫大な金額になります。

死亡逸失利益

被害者が死亡した場合も逸失利益が損害として認められますが、事故後も生活に費用が掛かる後遺症と異なり、生活費分が控除されます。

逸失利益の計算は、「基礎収入額×(1-生活費控除率)×就労可能年数に対応するライプニッツ係数」により行われます。

逸失利益算定の基礎となる収入は、原則として事故前の現実の収入です。年少者については、以前は男女別の全年齢平均賃金を基礎にしていましたが、最近は女子年少者については男女計の全労働者の全年齢平均賃金を基礎にするのが一般的です。

生活費控除率は「一家の支柱」(その者の収入を主として世帯の生計を維持している者のことです)の場合は、被扶養者の数によって異なってきます(被扶養者一人の場合は40%、二人以上の場合は30%が一般的です)。女性は独身、主婦、幼児等含めて30%、男性は50%とされています。最近は女子年少者については、基礎となる収入と同様に男女差が解消されつつあり、生活費控除率は40~45%とされているものも多くなっています。

就労可能年数は原則として67歳までとされています。

慰謝料

積極損害や消極損害のほか、精神慰謝料も損害に含まれます。

死亡の場合は、次の金額が基準となりますが、具体的な事由により増減されます。

一家の支柱  2800万円

母親、配偶者 2500万円

その他    2000~2500万円

傷害の場合は、原則として入通院期間を基礎として定められます。

例えば、入院2か月だと101万円、入院1か月・通院3か月だと115万円となります。

後遺症がある場合は、原則として次のように等級によって決められます。重度の後遺障害の場合には、近親者にも認められることがあります。

第1級 2800万円、第2級 2370万円、第3級 1990万円、第4級 1670万円、第5級 1400万円、第6級 1180万円、第7級 1000万円、第8級 830万円、第9級 690万円、第10級 550万円、第11級 420万円、第12級 290万円、第13級 180万円、第14級 110万円

加害者に故意若しくは無免許、ひき逃げ、酒酔い、著しいスピード違反、殊更な信号無視、薬物等の影響により正常な運転ができない状態での運転等重過失がある場合、著しく不誠実な態度がある場合は、これらの慰謝料が増額することもあります。

物損

交通事故により自分の運転する車両が損壊などされた場合、適正な修理費相当額が損害として認められます。修理費が車両の時価額に買い替え諸費用を加えた金額を上回る場合は、経済的全損となり、時価相当額と買い替え諸費用が損害と認められます。買い替えをすることが相当と認められる場合には、事故時の時価相当額と売却代金の差額が損害と認められます。修理しても外観や機能に欠陥が生じるなど商品価値の下落が見込まれる場合は評価損も損害と認められます。

買い替えのために必要となった登録費用などの登録手続き関係費用についても損害と認められます。

修理や買い替えの期間中にレンタカーなど代車を利用した場合には、これも損害に含まれます。営業車両で他に代替ができない場合は、休車損も損害として認められます。

その他、レッカー代や保管料などの雑費も損害に含まれます。

車両の他に損壊された物についても同様に、修理費や廃棄費用、購入価格相当分等が損害として認められます。

遅延損害金

事故日から遅延損害金が発生します。利率は時点における法定利率により決められ、令和2年4月1日以降は年3%です。法定利率は3年毎に見直されます。

減額される事由

損益相殺

交通事故に起因して被害者本人やその相続人が利益を得た場合、その金額分損害が補填されたとして、損害賠償額から控除されることがあります。

自賠責で受け取った損害賠償金、労災保険の休業補償給付金等が控除されます。これらは、上記の損害と同一の利益が既に得られているといえるからです。一方で、労災保険法に基づく特別支給金や私的な生命保険など、同一とはいえない利益は控除されません。

素因減額

被害者に児湯の事情により損害が拡大したと言える部分については「素因減額」されます。素因は、被害者の精神的傾向である心因的訴因と、既往の疾患や身体的特徴などの体質的・身体的訴因とに分類されています。どれだけ減額されるかは、具体的事案毎に個別に判断されます。

同乗事故

運転手が事故を起こして同乗者が負傷した場合、同乗者も事故の被害者として損害賠償請求権を有します。加害者の運転する車両に同乗していたからといって当然に賠償額が減額されることはありませんが、飲酒していることを承知で同乗するなど被害者側にも落ち度があると判断されると、減額されることがあります。

過失相殺

過失相殺については、自動車対歩行者、四輪自動車同士、単車同士、単車対自動車、自転車対自動車、横断歩行者の事故、という類型毎に基準が定められています。

例えば、自動車と歩行者の事故で、横断歩道上で、車信号が青、歩行者信号が赤で、住宅・商店街での事故で、歩行者が児童や老人である場合、過失割合は50:50となります。

信号機のない交差点で、広路の直進四輪自動車と狭路から広路に右折した四輪自動車との衝突事故で、直進車に15㎞以上の速度違反があった場合、過失割合は直進車と右折車とで30:70となります。

弁護士に相談

このように、損害賠償金額の算定は非常に複雑な要素があり、相手方との和解交渉や訴えの提起、そのための資料の準備は用意ではありません。

こうしたことに適切に対処するためには、専門家である弁護士に早期に相談することをお勧めします。

交通事故に遭ったら

2023-02-24

交通事故の被害に遭ったら

交通事故に遭ったら、まずは相手方を確認しましょう。本人の容姿や名前だけでなく、車の方も車種やナンバーを確認しましょう。

自分自身が大した怪我をしていなかったり、自車の損傷が軽微であっても、その場で話し合って立ち去るようなことは避けるべきです。後日後遺症が発生しても追及することが困難になります。また、交通事故を起こした加害者が警察に事故を報告しないこともあります。警察に報告をしたのを確認し、警察や救急がくるのを待つべきです。

警察や救急が来た後は、その指示に従いましょう。怪我をしていないのであれば、そのまま現場検証をすることもあります。相手方の名前や連絡先、保険会社についても確認しておくべきです。

物損か人損か

交通事故に遭ったときでも、車や工作物が損壊しただけで人には被害が出ていない物損か、人も死傷している人損かによって、扱いが異なってきます。

人損の場合は、加害者側は過失運転致死傷の刑事事件の被疑者としても扱われます。

一方で、物損の場合は、過失運転致死傷罪は成立しないため、刑事事件の加害者とはなりません。飲酒運転や事故報告義務違反など他の規定の違反があれば当該事件の被疑者とはなりますが、事故の相手方が被害者となるわけではありません。

民事―損害賠償

交通事故によって自分の車を損壊されたり、あるいは被害者が負傷したり亡くなったときは、被害者やその遺族は、加害者に対して不法行為に基づく損害賠償請求権を有します。

自賠責保険

自賠責は自動車損害賠償保障法によって全ての自動車に契約が義務付けられています。これは人損の場合に適用され、人の死傷がない物損事故には適用されません。

自賠責保険で支払われる支払限度額はあらかじめ決まっています。傷害による損害については120万円、死亡による損害については3000万円です。後遺障害による損害にも支払われ、神経系統の機能または精神・胸腹部臓器に著しい障害を残し、介護を要する傷害で、常時介護を要する第1級の場合は4000万円、随時介護を要する第2級の場合は3000万円となっています。その他の後遺障害では、等級によって3000万円から75万円支払われます。

任意保険

加害者側が任意保険に加入している場合、任意保険からも支払が行われます。対物も対象となっている場合、物損事故についても保険金が支払われます。

よく「対人対物無制限」という表現がなされますが、この場合でも被害者が望む損害賠償額全額が支払われるわけではなく、あくまで保険会社の算定基準に従って支払われます。

損害賠償

保険でも損害の回復に十分でない場合は、加害者本に対し損害賠償請求をすることになります。

多くの場合、いきなり訴えを提起するのではなく、まずは加害者と話し合いをすることになります。加害者と損害賠償について合意した場合、和解(示談)をすることになります。当事者同士の話合いで解決しなかった場合、調停など第三者の協力を求めることになります。

このような方法を用いても解決しない場合、訴えを提起し、裁判所による判断を求めることになります。

裁判ではけがの程度や入院・通院日数、後遺症の等級などを基準に損害賠償額が算定されます。裁判所もこれまでの裁判の結果を蓄積してつくられた算定基準によって損害賠償額を算定しますが、基本的に保険会社の算定する金額より高額になります。

刑事―捜査・裁判

交通事故を起こした加害者は、道路交通法や「自動車の運転により人を死傷させる行為等の処罰に関する法律」(「自動車運転処罰法」などと略されます)に違反したとして刑事事件の被疑者・被告人ともなります。被害者もこの刑事事件の捜査や裁判に関わることになります。

捜査

交通事故を起こした場合、加害者が飲酒をしていたり、被害者の怪我の程度が大きかったり亡くなったりしたときは、加害者が逮捕されることもあります。もっとも、その後勾留されずに釈放されることも多いです。

勾留された場合は逮捕も含めて最大23日の中に検察官が加害者を起訴するかどうか判断し、起訴するのであれば、勾留満期までに起訴します。

一方で、勾留されなかった場合、このような時間制限はありませんので、捜査は長期化することになります。概ね6か月ほどで検察官は終局処分をしますが、1年以上かかることも珍しくありません。終局処分の前に被害者又は被害者の家族・遺族が検察官から取り調べを受け、加害者に対する処罰感情の確認などがされます。

示談

加害者の依頼した弁護士(弁護人)から、保険金とは別に加害者が損害賠償金を支払って示談することを求められることもあります。この場合、示談書を交わして示談することになるでしょう。この示談は、上記の民事における示談(和解)示談書においては、謝罪や示談金の支払のほか、「この示談により本件事故についてお互い債権債務を有しない」「今後本件について損害賠償を求めない」などといった文言(清算条項)が付されることになります。また、「加害者を許す」「寛大な処分を求める」といった文言(「宥恕条項」といいます)を付けることも求められます。

示談締結や示談における宥恕の有無は、検察官の終局処分を大きく左右します。検察官としては、被害者の損害が回復したかどうか、被害者が処罰を求めているかを重視するからです。

公判

示談の有無や被害者の処罰感情にもよりますが、全治2週間以上の怪我を負わせた場合は、加害者が公判請求される可能性があります。

過失運転致死傷事件や危険運転致死傷事件のように被害者に甚大な被害を与える事件では、被害者や遺族、その依頼を受けた弁護士が、公判手続きに参加することができます。

公判手続きでは、証人に対して情状に関する事項について、尋問することができます。

また、事実又は法律の適用について意見を陳述することができますし、そのために被告人である加害者に対し被告人質問をすることができます。

また、加害者が被害者側に落ち度があるとか、自分に過失はないなどと主張することもあります。この場合、被害者が証人として出廷し、加害者である被告人の弁護人の反対尋問を受けることになります。

弁護士への依頼を考える

以上のように、交通事故が起きると、被害者も民事・刑事という大変負担のある手続に巻き込まれることになります。これに適切に対応するためにも、弁護士への依頼を考えるべきでしょう。

弁護士に依頼することで、次のような局面で役に立つでしょう。

適切な保険金の受取

加害者側の任意保険による支払いについて保険会社に任せたままだと、保険会社の算定基準により保険金額が決まってしまいます。被害者や遺族が不満を述べても、保険会社の担当者は経験豊富であり、難解な説明や慣例などを述べて、被害者側の主張が退けられることが多々あります。

しかし、弁護士が担当することで、裁判所の算定基準によるなど、被害の実態に合ったより高額な保険金の支払いを受けられる可能性があります。

適切な示談の対応

被害者側から加害者側に損害賠償を請求する前に、加害者側の弁護士から示談を求められることがしばしばあります。事故のことを忘れたいからと早急に示談に応じてしまうと、後遺障害の慰謝料も含めて債権債務が存在しないかのような清算条項にされてしまったり、意味も分からず宥恕文言を書いてしまい、加害者を許したかのようにされてしまう可能性があります。

弁護士が示談の対応をすることで、後遺障害が発生した場合は別途合意をする等、損害を回復するために適切な条項を設けることが期待できます。また、示談はするがやはり加害者を許せない場合、「処分については裁判所にゆだねる」など宥恕条項を入れずに示談を締結することができます。

民事裁判対応

加害者側と交渉しても解決できなかった場合、損害賠償請求をすることになります。慰謝料や逸失利益、後遺障害慰謝料などを請求することになります。このときには、休業損害や、入院・通院だけでなく、事故により労働能力が喪失し将来得るはずの利益が失われた分を計算し、これらの損害が発生した証拠を示す必要があります。このようなことを日常生活に復帰しながら行うことは非常に厳しいでしょう。こうしたことは法律の専門家である弁護士に依頼することでより適切に対応することが期待できます。

刑事裁判対応

刑事裁判においては、被害者やその遺族だけでなく、被害者から委託を受けた弁護士も、被害者参加をすることができます。証人への尋問や被告人質問、意見陳述において、被害者や遺族の思いを反映させて裁判所に示すことができます。

また、被告人が事件について争っているため被害者が証人として出廷する際は、検察官が証人テストを行いますが、弁護士も被害者や遺族と事前に打合せを行います。被告人の弁護人は、被害者側に落ち度があることを示そうと厳しい尋問をしてくることが予想されますが、このような尋問にも冷静に対応できるよう準備をすることができます。

このように、弁護士に依頼することで、各局面において適切に対応することが期待できます。

交通事故に遭われたら、まずは弁護士に相談することをお勧めします。

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