
小学生から中学生までの義務教育期間中に,学校の教員から体罰や暴言,不適切な指導を受けた場合,後々の子どもの心身に大きな影響を与え,健全な成長を損ねるおそれがあります。
学校教育の場において,教員には生徒を適切に指導する権限が認められていますが,他方でその指導が行き過ぎた場合には,違法な行為となることもあります。
特に体罰は法律上も明確に禁止されており,直接的な暴力は伴わなくても,暴言や人格を否定するような指導も,問題となる場合があります。
今回は,子どもが教員から体罰や暴言,不適切指導を受けてしまった場合の事実確認の方法や,再発防止のための対応,そして法的責任の追及について,弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。
このページの目次
教員による体罰・暴言・不適切指導とは
学校における指導は,生徒の教育のために必要な範囲で行われるものですが,その範囲を超える行為は問題となります。
特に体罰は,法律によって明確に禁止されています(学校教育法11条)。体罰とは,教員が生徒に対して身体的苦痛を与える行為をいい,殴る,蹴る,叩くといった行為が典型例です。
直接的な暴行がなくても,人格を否定するような暴言や過度な叱責などは,不適切指導と評価される場合があります。
例えば「お前は価値のない人間だ」などの人格否定や,長時間の過度な叱責,必要以上の罰を与える行為などは,問題となる可能性があります。こうした行為は教育の範囲を超えるものとして扱われることがあります。
参考事例
高校2年生のCさんは,授業中の態度を理由に担任教員から強く叱責されることがありました。最初は注意をする程度でしたが,次第に他の生徒の前で人格を否定するような発言を繰り返されるようになりました。さらに,ある日Cさんは授業中に教員から強く肩を押され,机にぶつかるという出来事がありました。Cさんは精神的なショックを受け,学校に行くことができなくなってしまいました。
Cさんの保護者が学校に相談したところ,学校は調査を行い,その教員に対して指導が行われることになりました。保護者は弁護士にも相談し,学校の対応や責任について検討することになりました。
(この参考事例はフィクションです)
事実確認のために必要なこと
体罰や暴言などの問題が疑われる場合,まずは事実関係を正確に把握することが重要です。保護者としては,子どもから状況を丁寧に聞き取ることが必要になります。
いつ,どこで,どのような指導が行われたのか,どのような言葉が使われたのかなどを,具体的に整理することが重要です。同じ場面に居合わせた生徒がいる場合には,その証言が参考になる場合もあります。
怪我がある場合には,写真を残しておくことや,医療機関を受診して診断書を取得しておくことも重要です。さらに,日記やメモなどの記録を残しておくことで,後に問題を検討する際の証拠となる可能性があります。
学校への相談と再発防止に向けた対応
体罰や不適切指導が疑われる場合には,学校に対して正式に申し入れや相談を行うことが重要です。多くの学校では,いじめや体罰に関する相談窓口や担当者が設けられています。保護者としては,校長や教頭などの管理職に事情を説明し,学校としての調査を求めることが考えられます。
学校には教育環境を安全に保つ責任があるため,問題が確認された場合には再発防止の措置が取られるべきです。例えば,教員への指導や配置の見直し,学校内での研修の実施などが行われる場合があります。教育委員会に相談することも,一つの方法です。
教員個人に対する民事責任の追及
教員の行為が違法と評価される場合には,民事責任が問題となることがあります。
民事責任とは,被害者が受けた損害を金銭などで補償する責任のことです。
例えば,体罰によって怪我をした場合の治療費や,精神的苦痛に対する慰謝料などが請求される可能性があります。暴言や人格否定によって精神的な被害を受けた場合にも,慰謝料が認められるケースがあります。
公立校の場合には,教員個人ではなく自治体の責任が問題となる場合もあります。
これは国家賠償法に基づく責任として扱われることがあります。
教員の刑事責任
体罰の内容が悪質な場合には,刑事責任が問題となることもあります。
刑事責任とは,犯罪行為に対して国が刑罰を科す責任のことです。
例えば,殴る,蹴るといった暴力行為があれば,暴行罪(刑法208条)が成立する可能性があります。
怪我を負わせた場合には,傷害罪(刑法204条)が成立する可能性もあります。
継続的な暴言や嫌がらせによって精神的な被害が生じた場合には,別の犯罪が問題となる可能性もあります。このような場合には,警察への相談が検討されることもあります。
体罰などが疑われる場合は弁護士に相談を
学校での体罰や不適切指導の問題は,子どもの心身に大きな影響を与える可能性があります。しかし,学校との話し合いや責任の追及を保護者だけで進めることは難しい場合も少なくありません。
そのような場合でも,弁護士が関与をすることで,事実関係の整理や証拠の収集,学校や自治体との交渉を適切に進めていくことができる余地があります。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所では,刑事事件の加害者側の弁護活動だけでなく,被害者の立場からの法的対応についても,ご相談を受け付けています。お子様が教員から体罰や不適切指導を受けている疑いがある場合には,速やかに弁護士へ相談することをご検討ください。
