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示談
示談は、一般的に加害者から被害者の方に一定の金銭を支払い、被害者の方に被害届の取下げや告訴の取消し等を求めるために行います。
加害者が犯罪事実を認めている場合、加害者の弁護人が被害者の方に示談を申し込むのが一般的です。被害者の方自身で示談を行うこともできますが、加害者側と直接交渉をしたくない方は、委託を受けた弁護士が代わりに行います。
1 示談交渉の流れ
加害者と加害者弁護人との間で示談の準備
加害者弁護人が事件担当の警察・検察官に対し、「示談したい」旨を伝え、「被害者の方の連絡先を弁護人に教えてもよいか」と被害者の方へ問い合わせてもらうよう依頼
※加害者が被害者の方の連絡先を知っている場合、直接弁護人から連絡が来ることもあります。
被害者の方が承諾したら、弁護人が被害者の方と連絡を取り、示談交渉
2 加害者が示談を求める理由
示談の主たる目的は、
- 加害者が真摯に反省し被害弁償を尽くして、被害者の方の被害回復を図るため
- 検察官による処分(起訴・不起訴)や裁判官による量刑を軽くするため
です。
また、示談により賠償問題も解決したとして、将来における民事上の損害賠償請求を防ぐという意味合いもあります。
3 示談のメリット
- 早期に被害弁償を受けることができます。
民事訴訟を提起し、判決を得るまでには、早くても数か月はかかります。
しかし、示談であれば、示談成立と同時に金銭の受取りが可能です。
※損害賠償を加害者に請求するためには民事訴訟を提起する必要がありますが、その際に損害を証明する責任などは被害者側に課せられています。民事訴訟は時間がかかるだけではなく費用や労力もかかってしまいます。
- 加害者に対する遵守事項を設けることができます。
示談金の支払い以外にも、「加害者は被害者との接触を禁じる」といった事項を加害者と合意することができるため、被害者の方の今後の不安を取り除くことにもつながります。
※損害賠償請求訴訟における判決は、賠償金の支払いを命じる内容のみとなります。接触禁止条項などの条件が判決で組み込まれることは原則としてありません。
4 示談のデメリット・注意点
- 加害者の処分・量刑が軽くなる可能性があります。
示談には、一般的に「加害者を宥恕する(犯人を許す)」点を含み、また、被害弁償を受け取ると、「被った損害が少しでも回復した」と評価されるからです。
※犯人を許すつもりがないのであれば、その旨を相手方に明示した上で示談交渉することをお勧めします。
- 示談の条件が被害者の方の気持ちに沿った内容であるか、慎重に吟味しましょう。
一旦告訴を取り消すと再度告訴をすることはできません。
示談金を総額で受領した場合、後日、原則としてその金額以上を請求することはできません。(予期しない後遺症が生じた場合等を除く)
- 当事者間作成の示談書は、当事者間の合意文書に過ぎず、強制力はありません。犯人が金銭賠償をしなかった場合、改めて民事訴訟を提起しなければなりません。
金銭に関わる示談の場合、公正証書という形にしておけば、民事訴訟を提起しなくても強制執行ができます。(後述の刑事和解により、強制力を持たせることも可能です。)
- 加害者の資力が少ない場合、示談のタイミングを逃すと、事実上相手方から損害賠償を受けられなくなるおそれがあります。
5 示談金の相場の例
- 傷害事件 軽傷:10万~50万円
重傷:50万円~ - 性犯罪 痴漢・盗撮:10万~50万円
不同意わいせつ(旧強制わいせつ):50万~100万円
不同意性交等(旧強制性交等):100万円~ - 財産犯 失われた財産の時価+5万~30万
- 器物損壊 損壊された物の時価+5万~30万
- ストーカー 10万〜100万円前後
示談に応じて被害届の取下げ等をすることも、示談金を受け取ることも、被害者の方の大事な権利です。何ら後ろめたさを感じる必要はありません。
刑事和解
被告人と被害者等の方々との間で、裁判手続きによらず当事者間の話し合いだけで、犯罪から生じた損害等に関する民事上の請求について和解(示談)が成立した場合、刑事事件を審理している裁判所に申立てを行い、裁判所にその合意の内容を公判調書に記載してもらう制度をいいます。
この公判調書は、民事裁判における裁判上の和解と同一の効力を有し、強制力があるため、改めて民事訴訟を提起しなくても強制執行の手続をとることができます。
「示談に応じたけど、こんなはずじゃなかった…」と後悔する前に、一度被害者支援に詳しい弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所へご相談下さい。