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傷害事件の被害者になったら

2023-11-17

事件に巻き込まれて、傷害事件の被害者になってしまった場合について、解決策として、取りうる法的手段方法についてまとめました。

傷害

【先決事項】

まず、受傷をした状態から、元の健康な身体状況を取り戻すために、きちんと医療機関に受診して、適切な治療を受けて十分な身体の回復をはかりましょう。これがまず第一になすべき事柄です。その対応ができてからでも法的解決を図ることは、ごく普通に出来ますので、心配はいりません。身体の状態が思わしくないに慌てて行動した結果、怪我をした受傷状態が重くなるなどの事態は避けなければなりません。

そして、医療機関に関わりった際、治療費、薬代、病院等医療機関への自宅からの交通費(往復)も損害となり得るので、これらの損害については、賠償請求する際には、証拠として明らかにする必要があるため、支払った金銭の領収書類は、なくさないようにすべて保管しておきましょう。

【刑事事件化する場合】

次に、傷害事件として受傷事実に関し、これを刑事事件とするか、しないかを検討しましょう。
一人でどうして良いか分からない場合には、家族、親しい友人等に相談するのも方法ですが、適切な解決には、法的観点からの具体的アドバイスを受ける必要があることからすれば、専門家としての弁護士等に相談することが有効です。弁護士に相談すると費用負担が心配だと考える方も多いですが、最近では、弁護士による無料の法律相談や行政の窓口における無料相談なども広く行われており、インターネットを用いて、これらの情報検索をすることにより弁護士との接点も見つけることが可能となっており、利用することがおすすめです(犯罪被害に遭ってしまった場合に弁護士を依頼することのメリットはこちらにもまとめてあります。https://higaisya-bengo.com/bengosi_irai_meritto/)。

そして、刑事事件とする場合には、警察への被害申告として、被害届の提出が必要となります。被害届の提出と傷害の事実を証明するための診断書の提出は、初めての人であってもそれほど難しくはありませんので自分ですることもできます。診断書は診療を受けた医療機関に申し出れば作成してもらえます。

被害届を警察に出すと、通例、警察により、加害者としての被疑者(犯人)に対して、捜査が開始されることになります。
被害者の中には、被疑者との人間関係を気にして、被害届を出すことをためらう向きもあると思いますが、被害届を出すことにより、被疑者がどうなるかについて具体的に知れば、この点はある程度解決できるものと思われます。

【被疑者の受ける捜査とは】

被疑者に対しては、警察が、身柄拘束として逮捕する場合としない場合とに分かれます。逮捕されると、通例、検察官により被疑者の勾留請求がなされ、これを裁判所が認めると、一律10日間の身柄拘束が継続します。さらに勾留は10日間迄を限度として延長される可能性があります(逮捕・勾留についてはこちらもご参照ください。https://sendai-keijibengosi.com/keijijikennonagare/)。勾留中は、当然、被疑者は身体拘束により刑事施設の中にいる状態となり、外部に出ることはできず、それまでなされていた社会生活は停止した状態となります。被疑者は、仕事や学校に行けなくなり、解雇や退学といった処分を受ける可能性もあります。
勾留が終わると、起訴不起訴の処分がなされて、起訴されれば裁判所の刑事裁判を受け、最終的には、必ず有罪無罪のいずれかの判決を受けて裁判の結果を受け入れることになります。

これが、警察に被害届を出し、逮捕が執行された場合の捜査から公判へと発展したときの典型的な手続きの流れになります。
これに対し、被害者は、被告人(被疑者が起訴されると被告人と名称が変わります。)の裁判手続に、証人として、被害を受けた状況を証言したり、裁判所に、被害者としての心情を訴えたり、さらには、刑事裁判の一当事者として法廷に参加して被告人に質問したりすることが可能となります(被害者参加)。また、刑事事件の法廷において、傷害による損害賠償を和解として解決する手続もあります。

【刑事事件化しない場合】

これに対して、被害届を出さなければ、事件化されないことから、通例、刑事裁判にはなりません。この場合、被害者が受けた傷害の結果等々の諸々の損害については、民事上の裁判手続等により解決が図られることになります。

【ぜひ法律相談を】

被害届を出すとその後の手続きは、おおむね上記のとおりです。悩みが解決せずに苦しむ日々を長引かせるのはよくありません。ぜひ、弁護士の法律相談を受け、心の中の不全感を解消しましょう。
あいち刑事事件総合法律事務所では,被害者に特化した相談を受け付けています。初回の相談は無料ですので、傷害事件の被害に遭ってしまった場合は、まずは弊所までご相談ください。

損害賠償命令制度について

2023-11-14

犯罪被害にあった場合に、加害者への賠償請求について、損害賠償命令制度の利用が考えられます。
今回は、損害賠償命令制度について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説いたします。

損害賠償命令制度とは

法廷

損害賠償命令制度は、一定の犯罪について、刑事事件が係属している地方裁判所に対し、損害賠償請求についての審理・裁判を求めることができる制度です。
刑事事件で被害を受けた人でも、その賠償を裁判で求めるには、刑事裁判ではなく民事裁判で訴える必要が原則としてあります。
そうすると、裁判のために時間も費用も掛かってしまい、泣き寝入りせざるを得ない被害者が出てきます。
その負担を軽減するために、刑事裁判でも賠償請求ができるのが損害賠償命令制度です。
「犯罪被害者等の権利利益の保護を図るための刑事手続に付随する措置に関する法律」に規定されております。
申立手数料が2000円で民事裁判と比べて安く、刑事訴訟記録がそのまま証拠として利用でき、比較的短期間で終わるため、被害者のメリットは大きいです。

対象犯罪

対象となる犯罪は、以下のとおりです
1 故意の犯罪行為により人を死傷させた罪又はその未遂罪(強盗殺人、殺人、傷害、傷害致死、遺棄等致死傷、不同意わいせつ等致死傷、強盗・不同意性交等致死、強盗致死傷、逮捕等致死傷、危険運転致死傷等)
2 不同意わいせつ、不同意性交等、監護者わいせつ及び監護者性交等の罪又はその未遂罪
3 逮捕及び監禁の罪又はその未遂罪
4 未成年者略取及び誘拐、営利目的等略取及び誘拐、身の代金目的略取等、所在国外移送目的略取及び誘拐、人身売買、被略取者等所在国外移送、被略取者引渡し等の罪又はその未遂罪
5 2から5までに掲げる罪のほか、その犯罪行為にこれらの罪の犯罪行為を含む罪又はその未遂罪(強盗・不同意性交等,特別公務員職権濫用等)
被害者参加事件とは異なり、過失犯は除かれております。
対象犯罪となるのであれば、加害者との賠償交渉の過程で、損害賠償命令制度の利用の可能性を考慮に入れながら対応していくことになります。

手続き

申し立てができるのは、被害者本人又は被害者が死亡した場合の相続人です。
相手は、対象犯罪に係る刑事被告事件の被告人に限られ、共犯者や使用者は除かれます。
申立ての時期は、対象となる刑事被告事件の公訴提起時から、弁論終結時までです(刑事事件の流れはこちらを参照ください。https://osaka-keijibengosi.com/keiziziken_flow/)。
被告人に対して有罪の判決があった場合、直ちに損害賠償命令事件の審理が開始されます。
刑事事件を担当した裁判所が、刑事記録を取り調べ、原則として4回以内の期日で簡易迅速に手続が行われます。
審理は、基本的に非公開で行われます。
裁判所を交えた話し合いにより、和解で終わることもあります。
4回以内の期日で終わらない場合や、損害賠償命令の申立てについての裁判に対して異議の申出があった場合等は、通常の民事裁判に移行します。

損害賠償命令制度の利用をご相談ください

この損害賠償命令制度についても、利用するかどうか、どのような内容の請求をするかは,高度な判断が求められます。
起訴前や判決前に加害者から示談・被害弁償の意向を示された場合、被害者の加害者に対する処罰意思の強さや賠償金へのこだわりや賠償金以外について求めることがあるか、等を総合的に判断して対応することになります。
出来るだけ重い刑事処分を受けてほしいので賠償金は一切受け取らないのか、出来るだけ重い刑事処分を受けてほしいが賠償金は受けたいのか、賠償金さえ受けられれば示談に応じてもいいと思っているのか、等の考えは個々の被害者によって考えは異なります。
加害者の支払い能力の問題も考慮しなければなりません。
加害者が異議を出してきたら、民事裁判に移行しますので、その可能性も考慮して対応しなければなりません。
損害賠償命令制度をどのように利用するかは、精通した弁護士とよく相談して検討することになります
ぜひ、損害賠償命令制度も含め、被害者の方は当事務所に相談・依頼してください(https://higaisya-bengo.com/soudan/)。

不同意わいせつ罪の被害を相談。被害届の受理や示談交渉といった弁護士による被害者支援

2023-11-10

不同意わいせつ罪の被害に遭ってしまった場合、弁護士が行える被害者支援について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。

悩む女性

参考事件
Aさんは職場の上司であるBさんに誘われ、仕事終わりに2人で食事に出かけました。Aさんは出先で泥酔してしまったBさんをタクシーに乗せようとしましたが、その際にBさんから不意に抱き着かれました。
(この参考事件はフィクションです)

不同意わいせつ罪


参考事件でAさんがBさんにされた抱き着くという行為は、不同意わいせつ罪(刑法176条)に該当する可能性があります。不同意わいせつ罪に関する規定は、令和5年の刑法改正によって新設されています(詳細については個別記事をご覧ください。https://osaka-keijibengosi.com/rape/)。
刑法が改正される前は、わいせつ行為を罰する規定として、強制わいせつ罪や準強制わいせつ罪が存在していました。もっとも、強制わいせつ罪や準強制わいせつ罪が適用されるには、単にわいせつ行為があっただけでは足りず、加害者による暴行や脅迫の事実、被害者の心神喪失や抗拒不能が証明される必要がありました。また、たとえ暴行や脅迫があった事実を証明できたとしても、その暴行や脅迫によって被害者の反抗が著しく困難になったという要件も求められていました。
そのため、わいせつ行為の被害に遭っていても、暴行や脅迫の事実やその程度に関する証明ができずに、警察で被害届が受理されない、検察官による起訴ができないといったケースも散見されました。
刑法改正により新設された不同意わいせつ罪は、このような弊害に対応すべく、①暴行や脅迫のように従来の強制わいせつ罪、準強制わいせつ罪でも捕捉できていた場合に加えて、新たに「同意しない意思を形成し,表明し又は全うするいとまがない」(刑法176条1項5号)「経済的又は社会的関係上の地位に基づく影響力によって受ける不利益を憂慮させる」(同項8号)といった行為類型を追加して罰則の対象を拡大するとともに、②「同意しない意思を形成し,表明し若しくは全うすることが困難(刑法176条1項本文)」であれば犯罪が成立するようになっています。
それゆえ、従来の強制わいせつ罪や準強制わいせつ罪では被害届の受理や検察官による起訴を断念せざるを得なかったケースでも、加害者を処罰できる可能性が拡大したといえます。

弁護士による被害者支援


もっとも、刑法176条は不同意わいせつ罪が成立する場合として複数の行為類型を列挙しているため、自分が受けた被害が果たして不同意わいせつ罪に該当するのかを判断するのは容易ではありません。警察に被害届を提出しようにも、不同意わいせつ罪の要件を満たしているかを意識して事情を説明しなければ、立件が困難だという理由で被害届が受理されないということにもなりかねません。
このような場合、弁護士による被害者支援を受けることが重要です。刑事事件の経験が豊富で、被害者支援にも長けた弁護士によるサポートを受けることができれば、被害届も受理されやすくなります。警察へ事情を説明しに行く際に、弁護士が同行することもできます。法的知識に基づいたアドバイスにとどまらず、犯罪被害に遭われた方の心情に配慮したサポートも期待できるため、一人ですべてを対応する場合と比べ、心強さには大きな差があります。
不同意わいせつ罪の罰則は「6月以上10年以下の拘禁刑に処する」と規定されています。つまり、加害者が刑事処分を受ける場合、必ず刑事裁判を行うことになります。刑事裁判の局面でも、弁護士が被害者の方をサポートできる場面は多岐にわたります。一例を挙げると、証人尋問や意見陳述のために出廷した被害者の方に同席する、判決を下す裁判官へ被害感情をしっかりと伝えるために書面の作成や代読を行うといったことが可能になります。また、検察官とのやりとりをスムーズに行う、加害者側の弁護人との示談交渉を行うといった、裁判外での対応もサポートできます。
刑事裁判が行われる場合、被告人(加害者)には必ず弁護人がつきます。これに対して、被害者には一定の場合を除き、自動的に弁護士がつくことはありません。しかし、法律の知識や制度の十分な理解がなければ、どのような手続が行われているかもよく分からないまま、気がついたときには加害者の処分が決まっているということにもなりかねません。弁護士による被害者支援の重要性はますます高まっているため、犯罪被害に遭ってしまった場合は、速やかに弁護士へ相談することが大切です。弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所では、犯罪被害に遭われた方へ向けた無料法律相談を実施しております(https://higaisya-bengo.com/soudan/)。まずは弊所までお電話ください。

ハラスメントへの対策

2023-03-12

会社内でのハラスメントが問題となってきています。

ハラスメントにより心身に酷い損害を被り、会社を辞めざるを得なくなるかもしれません。パワーハラスメント(パワハラ)をはじめとしたハラスメントの対策は今や企業の義務となっています。

ここでは、どのようなハラスメントがあるのか、ハラスメントにどう対応するべきかについて説明します。

ハラスメント対策義務化

パワーハラスメント(パワハラ)対策

労働施策の総合的な推進並びに労働者の雇用の安定及び職業生活の充実等に関する法律(以下「労働施策総合推進法」)第30条の2第1項では「事業主は、職場において行われる優越的な関係を背景とした言動であつて、業務上必要かつ相当な範囲を超えたものによりその雇用する労働者の就業環境が害されることのないよう、当該労働者からの相談に応じ、適切に対応するために必要な体制の整備その他の雇用管理上必要な措置を講じなければならない。」と定めています。令和4年4月1日からは、中小企業も対象となり、すべての企業において職場におけるハラスメント対策が義務となっています。

そして、事業主は「優越的言動問題(第30条の3第1項に規定されている「労働者の就業環境を害する前条(第30条の2)第一項に規定する言動を行つてはならないことその他当該言動に起因する問題」のことを指します)に対するその雇用する労働者の関心と理解を深めるとともに、当該労働者が他の労働者に対する言動に必要な注意を払うよう、研修の実施その他の必要な配慮をするほか、国の講ずる前項の措置に協力するように努めなければならない。」(第30条の3第2項)、「事業主(その者が法人である場合にあつては、その役員)は、自らも、優越的言動問題に対する関心と理解を深め、労働者に対する言動に必要な注意を払うように努めなければならない。」(第30条の3第3項)、と定められています。労働者も「優越的言動問題に対する関心と理解を深め、他の労働者に対する言動に必要な注意を払うとともに、事業主の講ずる前条第一項の措置に協力するように努めなければならない。」(第30条の3第4項)とされています。

その他のハラスメントの防止

雇用の分野における男女の均等な機会及び待遇の確保等に関する法律(男女雇用機会均等法)は性別を理由とする差別を禁止する(第5・6条)のみならず、婚姻、妊娠、出産等を理由とする不利益取り扱いを禁止しています(第9条)。そして、事業主に対し「職場において行われる性的な言動に対するその雇用する労働者の対応により当該労働者がその労働条件につき不利益を受け、又は当該性的な言動により当該労働者の就業環境が害されることのないよう、当該労働者からの相談に応じ、適切に対応するために必要な体制の整備その他の雇用管理上必要な措置を講じなければならない。」(第11条第1項)、「職場において行われるその雇用する女性労働者に対する当該女性労働者が妊娠したこと、出産したこと、労働基準法第六十五条第一項の規定による休業を請求し、又は同項若しくは同条第二項の規定による休業をしたことその他の妊娠又は出産に関する事由であつて厚生労働省令で定めるものに関する言動により当該女性労働者の就業環境が害されることのないよう、当該女性労働者からの相談に応じ、適切に対応するために必要な体制の整備その他の雇用管理上必要な措置を講じなければならない。」(第11条の3)、などと定め、セクハラやマタハラを防止することを求めています。

何が「ハラスメント」になるのか

ハラスメントには様々な形があります。

パワーハラスメント(パワハラ)

パワーハラスメントについては、前述の労働施策総合推進法第30条の2第1項に規定されており、職場において行われたもので、以下の要件をすべて満たすものをいいます。

①優越的な関係を背景とした言動

②業務上必要かつ相当な範囲を超えたもの

③労働者の就業環境が害されるもの

「職場」とは、労働者が業務を遂行する場所を指し、会社の事務所に限らず、勤務時間外の懇親会や通勤中など職務の延長と考えられるものなど、労働者が業務を遂行する場所といえれば、「職場」に該当します。

「労働者」は、正規雇用労働者のみならず、パートタイム労働者、契約社員などいわゆる非正規雇用労働者を含む、事業主が雇用する全ての労働者をいいます。

「優越的な関係を背景とした言動」とは、業務を遂行するにあたって、当該言動を受ける労働者が行為者とされるものに対して、抵抗や拒絶することができない蓋然性が高い関係を背景として行われるものを指します。上司から部下への言動や、その人の協力がなければ業務の円滑な遂行が困難な場合のその人の言動などがあたります。

「業務上必要かつ相当な範囲を超えた」ものとは、その言動が明らかに業務上必要性がない、またはその態様が相当でないものを指します。当該言動の目的、当該言動を受けた労働者の問題行動の有無や内容・程度を含む当該言動が行われた経緯や状況、業種・業態、業務の内容・性質、当該言動の態様・頻度・継続性、労働者の属性や心身の状況、行為者の関係性等の様々な要素を考慮して決められます。もっとも、人格を否定するような言動は業務上必要かつ相当な範囲を超えたとしてパワハラに当たるでしょう。

「就業環境が害される」ものとは、当該言動により、労働者が身体的又は精神的に苦痛を与えられ、就業環境が不快なものとなったために能力の発揮に重大な悪影響が生じる等の当該労働者が就業する上で看過できない程度の支障が生じることを指します。

セクシャルハラスメント(セクハラ)

セクシャルハラスメント(セクハラ)とは、職場において行われる労働者の意に反する性的な言動により、労働者が労働条件について不利益を受けたり、就業環境が害されることをいいます。

「職場」とは、パワハラと同様、事務所など労働者が通常働いている場所のほか、出張先や自室的に職務の延長といえる宴会なども該当します。

「労働者」には正規雇用労働者のみならず、パートタイム労働者、契約社員などのいわゆる非正規雇用労働者、派遣労働者も含まれます。

「性的な言動」とは、性的な内容の発言や性的な言動のことをいいます。性的な内容の発言としては、性的な事実関係を尋ねること、性的な内容のうわさを流すこと、性的な冗談やからかいをすること、食事やデートへの執拗な誘い、個人的な性的体験談を話すことなどが該当します。性的な言動としては、性的な関係を強要すること、必要なく身体に触れること、わいせつ図画を配布・掲示すること、強制わいせつ行為、強制性交行為などが該当します。

セクハラの行為者は、上司や同僚だけでなく、取引先や顧客もなりえます。性別に関係なく、被害者にも行為者にもなり得ます。異性間だけでなく、同性間でもセクハラとなり得ます。

妊娠・出産・育児休業等ハラスメント

マタニティハラスメント(マタハラ)、パタニティハラスメント(パタハラ)、ケアハラスメント(ケアハラ)などといわれます。

これらのハラスメントは、職場において行われる、上司や同僚からの、妊娠・出産したことや、育児休業、介護休業等の利用に関する等に関する言動により、妊娠・出産した女性労働者や育児休業・介護休業等を申出・取得した労働者の就業環境が害されることをいいます。

妊娠・出産を揶揄したり、育児休業の取得を妨げるような言動が該当します。

特に、妊娠・出産したことを理由として解雇したり、育児休業を取得したことを理由に降格させるような行為は「不利益取扱い」に該当し、男女雇用機会均等法、育児・介護休業法違反となります。

一方で、育児休業の制度等の利用を希望する者に対して業務上の理由により変更の依頼や相談をすることや、客観的に見て体調の悪い妊婦の業務料を削減するなど、業務上必要な言動はハラスメントに該当しません。

ハラスメント相談

労働施策総合推進法第30条の2第2項では「事業主は、労働者が前項の相談を行つたこと又は事業主による当該相談への対応に協力した際に事実を述べたことを理由として、当該労働者に対して解雇その他不利益な取扱いをしてはならない。」と定めています。

もっとも、会社によってはそもそも相談窓口を置いていないところも見られます。

また、相談しても大したことではないとかそれはパワハラではないなどと言って取り合ってくれないところもあります。さらに、相談しても他の人、ひどい場合には加害者に相談した事実を漏らすこともあります。

そうした場合は、会社内での解決にこだわるのではなく、外部に助けを求めるべきです。

各都道府県の労働局や労働基準監督署に総合労働相談コーナーが設置されています。

その他、各地の法テラスでも弁護士による相談を受け付けています。

ハラスメントの責任追及

ハラスメントによって心身に不調をきたしたり、退職せざるを得なくなってしまったときは、会社に対し、労働者への安全配慮義務を果たさなかったとして、損害賠償請求をすることが考えられます。

また、従業員である行為者の行ったハラスメントが不法行為に該当するのであれば、会社は使用者として損害賠償責任を負うことになります。

ハラスメントの内容が暴行・傷害や強制わいせつ、強制性交、名誉棄損などの犯罪に当たれば、行為者は刑事責任を問われることになります。

弁護士に相談

ハラスメントは労働者の修了環境を害しますし、ときには不法行為や犯罪に該当するものもあります。会社の相談窓口に相談しても、行為者に漏れてしまうのか心配があるかもしれません。

そうした時は、弁護士など組織外の専門家に相談することも考えましょう。弁護士には守秘義務があり、行為者や会社に秘密が漏れる心配はありません。

内容によっては、労働局など専門機関との協力、会社や行為者にハラスメントの防止の要求や損害賠償請求、刑事告訴などの手続に移行することもできます。

ハラスメントを受けているのではないかお悩みなら、弁護士への相談も考えてみましょう。

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