Archive for the ‘犯罪被害者支援’ Category

ストーカー被害に遭ってしまったら

2023-12-22

ストーカー被害に遭ってしまった場合、早期に弁護士に依頼することで、さらなる被害を防止するための対策がとれます。弁護士に依頼することでどのような対策がとれるかについて、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。

ストーカー

参考事件

Aさんは以前に交際していたBさんから、自宅の近くで待ち伏せをされたり、SNSでメッセージを送られたりすることが続いていました。Aさんは最寄りの警察署に行って被害の相談をしましたが、警察からは「実害が出ているわけでもないので、次にまた何かあったら警察まで連絡してください」と言われてしまいました。
(この参考事件はフィクションです)

ストーカー規制法が定める処罰の対象

ストーカー規制法(正式には「ストーカー行為等の規制等に関する法律」といいます)は「つきまとい等」又は「位置情報無承諾取得等」と、「ストーカー行為」を規制の対象としています。「つきまとい等」についてはストーカー規制法2条1項が定義を示しており、具体例として「つきまとい、待ち伏せ、押し掛け、うろつき(同項1号)」、「監視していると告げる(同項2号)」、「拒否しているにもかかわらず行う電話、電子メール、SNSメッセージ(同項5号)」などが挙げられています。
「位置情報無承諾取得等」の定義は、ストーカー規制法2条3項が定めています。具体的には、無断で車にGPS機器を取り付けるといったものがあります(同項2号)。
「ストーカー行為」とは、同一の者に対して「つきまとい等」又は「位置情報無承諾取得等」を繰り返して行うことを指します(同法2条4項)。ストーカー規制法の規制対象となる行為については、警視庁のサイトでも紹介されているため、ご参照ください。
https://www.keishicho.metro.tokyo.lg.jp/kurashi/higai/dv/kiseho.html

つきまといやストーカー事件の特徴

Bさんの行為は、ストーカー規制法が定める「つきまとい等」や「ストーカー行為」に該当する可能性が高いといえます。そのため、Bさんには刑罰(ストーカー規制法18条)が科されたり、禁止命令(同法5条1項)が言い渡されたりすることが考えられます。
もっとも、警察に被害を相談しても、参考事件のAさんのように、実害が出ていないことを理由に、すぐには被害届の受理や禁止命令の発動に至らないことも少なくありません。つきまといやストーカー行為はエスカレートしやすいという問題があり、次に実害が出た時点では、取り返しのつかないことになっていることも考えられます。

弁護士による被害者支援でさらなる被害を防止

つきまといやストーカー行為の被害に遭ってしまった場合、早期に弁護士に依頼をすることで、さらなる被害を防止するための対策がとれます。
まず、弁護士が被害状況の聴取を行って書面を作成することで、警察による被害届の受理や禁止命令の発動を促すことが考えられます。加害者の行為がつきまといやストーカー行為の要件を満たしていること、既に実害が出ていることを、法律の専門家である弁護士が適格に指摘することで、捜査機関による対応を求めていきます。
また、加害者の住所や連絡先が判明している場合、弁護士が加害者と直接対応することも考えられます。加害者との交渉の中で、つきまといやストーカー行為に対する損害賠償を求めることもできますし、法的に拘束力が生じる形で、被害者の方への接触や連絡を禁止させることを約束させることも可能になります。加害者からのさらなるつきまといやストーカー被害を防止するための対応としては、こちらの記事もご参照ください。
https://higaisya-bengo.com/kagaisya_mamotte/

ストーカー被害に遭ったら早期に弁護士へ相談を

このように、弁護士に依頼をすることで、警察による対応を促すことや、損害賠償を求めることが可能になります。特に、弁護士を交渉窓口にすることで、被害者の方が直接、加害者とやりとりをしなくてよいことは、大きなメリットになります。
つきまといやストーカー行為の最も厄介な点は、放置してしまうことで加害者の行動がエスカレートし、深刻な被害につながってしまうおそれがあることです。反対に、早期に弁護士が間に入って加害者と直接交渉を行う、警察による対応を促すことで、深刻な被害に至る前に解決を図ることは可能です。
つきまといやストーカー行為の被害に遭ってお悩みの場合は、まずは被害者支援の経験が豊富な弁護士に相談しましょう。

キャバクラがボーイによる窃盗被害に遭った場合

2023-12-19

キャバクラの店員であるボーイが店のお酒を盗んだ事件を例に、キャバクラ店としてどういった対応ができるのかを弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。

キャバクラ

事例

大阪市北区にあるキャバクラ店でボーイとして働いていたAが、店でお客さんに提供するために発注していた高級シャンパン(購入価格1本あたり4万円、店での販売価格1本あたり10万円)を合計10本を勝手に持ち帰り、転売していたことが、在庫が合わないことを不審に思った同店のオーナーVの調査で発覚した。
VはAに責任を取らせるためにはどうするのがよいのか弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所に相談することにした。
(フィクションです)

窃盗罪か業務上横領罪か

本事例のAは、店のお酒を勝手に持ち帰っているため、窃盗罪が成立すると考えられます。
もっとも、Aが単なる従業員ではなく、店長など店の在庫を管理する権限を持っていた場合には、窃盗罪ではなく業務上横領罪が成立することになります。
このように、Aの店での立場や役職によって、成立する犯罪が変わる場合があります。
なお、Aは持ち帰ったお酒を転売していますが、転売していることは「不可罰的事後行為」となり、基本的に犯罪は別途成立しません。

刑事事件化する場合のメリットデメリット

Aが店のお酒を持ち帰ったことは、上述のように犯罪に該当するため、Vとしては、警察に対して被害届の提出や告訴などを行い、刑事事件化することが考えられます。
刑事事件化するメリットとしては、Aが刑罰を受ける可能性が出てくること、Aから示談交渉などで被害弁償をしてくれやすくなることが挙げられます。
デメリットとしては、警察が捜査のために店に立ち入ったり、Vや店の店員に事情聴取などが行われたりするなど、捜査へ協力しなければならなくなり、警察の立ち入りにより店のイメージが損なわれたり、事情聴取などへ協力しなければならなくなることから業務に支障が出たりすることが挙げられます。また、刑事事件化したとしても必ずAが刑罰を受けるとは限らないという点にも注意が必要です。

刑事事件化するには

刑事事件化するには、警察に捜査を開始してもらう必要があります。
そのためには、被害届を提出したり、告訴をしたりする必要があります。
しかし、多くの場合、警察は被害届や告訴をすぐには受け取ってくれません。
「犯罪の証拠がない」「民事の話である」などと理由を付けて受理を拒みます。
そのため、警察に被害届等を受理してもらうためには、あらかじめ重要と思われる証拠は収集しておき、被害届等を受理するように警察に働きかける必要があります。
弁護士に依頼すれば、証拠収集や警察に受理してもらいやすい被害届や告訴状の作成などを行ってくれます。刑事事件化した場合の流れについては、こちらの記事もご参照ください。https://osaka-keijibengosi.com/keiziziken_flow/

損害賠償請求する場合のメリットデメリット

Vとしては、Aに対して店が被った損害の賠償を求めることもできます。
Aに対して金銭賠償を直接求めることもできますし、裁判所に損害賠償請求訴訟を提起することもできます。
多くの場合は、直接賠償を求めると思いますが、いくら損害賠償を請求する権利があるとしても、請求の仕方によっては恐喝罪に問われてしまう可能性もあるため、弁護士に依頼して交渉の窓口になってもらいましょう。
裁判所に損害賠償請求訴訟を提起する場合のメリットは、裁判所が下した判決を基にAの財産を差し押さえるなど強制執行が可能になることが挙げられます。
一方デメリットとしては、損害の立証をVがしなければならないこと、裁判には時間もお金もかかること、Aに財産がなければ勝訴したとしても金銭的な賠償が実現されないことがあげられます。
そのため、損賠賠償請求訴訟を起こす前に、充分な証拠を収集し、Aに財産があるかないかを調査する必要があります。
また、本件では、損害としてシャンパンの購入価格での算出をするのか、販売価格での算出をするのかについても検討する必要があります。
キャバクラの場合には、購入価格と販売価格が大きくことなることがあり、本件でも1本当たり6万円の差があります。
そのため、Aとしては購入価格での賠償を申し出てくる可能性が高いため、販売価格での賠償を求めていく場合には、その請求が正当なものかどうかを含めて弁護士に相談することが重要です。

示談交渉の活用を

これまで説明してきたように、刑事事件化では店のイメージダウンにつながったり、業務に支障が出たりといったデメリットが考えられ、民事訴訟にも時間と労力、お金の問題があります。
そのため、まずは示談交渉を行い、Aから任意で損害を賠償してもらえるように働きかけることも活用しましょう。示談交渉については、こちらの記事もご参照ください。https://higaisya-bengo.com/jidan_wakai_kaiketu/
Aに絶対に刑罰を受けてもらいたいといったような要望が強くある場合でなければ、もっともはやく賠償を実現できる可能性があります。
また、示談は契約の一種なので、AだけではなくAの家族に賠償金の支払いをしてもらったり、連帯保証をしてもらうというような条件を付けることも可能です。
民事裁判の判決では、そういったことは不可能なので、早期の賠償実現のために示談交渉の活用もご検討ください。

会社役員による業務上横領事件 刑事事件化すべきかの判断基準

2023-12-15

青森県内で発生した会社役員による業務上横領事件について、あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。

横領

事件概要(10月31日配信のABA青森朝日放送の記事から引用)
八戸市の水産加工会社の元役員が、業務上横領の疑いで逮捕されました。容疑者は、当時役員を務めていた八戸市の水産加工会社で、2020年12月に、2回に分けて合わせて83万円を着服横領した業務上横領の疑いが持たれています。被害会社によりますと、元役員が2012年4月から2021年3月までに複数回にわたり、不正に金銭を引き出して私的に流用し、被害総額は2億円にのぼるとしています(引用元記事https://www.aba-net.com/news/news-91364.html)。

業務上横領事件が起きた場合の刑事手続

警察が捜査を開始する端緒には様々なものがありますが、その一つに被害届の提出があります。業務上横領事件の場合は、会社内部で不透明な資金の流れや不自然な会計処理が発覚し、内部調査を経て警察に被害届が提出されるという流れが多いです。
被害届を受理した警察は、本格的に捜査を開始していきます。在宅のまま被疑者(容疑者)の取調べを行うこともありますが、引用事件のように逮捕がされることもあります。逮捕に引き続いて勾留の決定がされた場合は、被疑者は最大20日間の身体拘束を受けることになります。
刑事処分は警察官ではなく、検察官が起訴・不起訴の判断をして決定します。勾留の決定がされている場合は、勾留の満期日までに検察官が処分を決めます。引用した事件では会社役員が業務上横領罪の疑いで逮捕されていますが、刑法253条は業務上横領罪の法定刑を「10年以下の懲役に処する」と定めているため、検察官が起訴の判断をした場合は、被疑者は必ず刑事裁判を受けることになります。刑事正式裁判になると、最終的に裁判所が有罪・無罪の判断及び量刑の決定をします。刑事事件の流れについては、こちらの記事もご参照ください。https://sendai-keijibengosi.com/keijijikennonagare/

会社役員が業務上横領事件を起こした場合

刑事事件によっては、被害者からみて被疑者が誰か分からないこともありますが、業務上横領事件の場合は、まずは内部調査を行うことがほとんどなため、被害届を提出する前に被疑者が判明する場合もあり得ます。
警察に被害届を提出する前に、会社が役員から事情を聴くこともできます。ケースによっては、すぐに警察へ被害届を提出するよりも、内々での対応にとどめた方が有益なこともあります。例えば、会社側が聞き取りを行って、役員が横領の事実を認め、弁償の意思も資力もあるとなれば、示談を締結することで早期に問題を解決することも可能になります。示談については、こちらの記事もご参照ください。https://higaisya-bengo.com/jidan_wakai_kaiketu/
 これに対して、被害届を提出して刑事事件化した場合、被疑者となった役員が逮捕・勾留されて長期間の身体拘束を受けることで、役員が自ら弁償のために資金工面に動けなくなり、かえって問題の解決を長引かせてしまうリスクもあります。また、逮捕がされた場合は基本的に実名報道がされることになるため、被害に遭った会社に非はないにしても、警察沙汰になったことが大々的に報道されることで、会社自身も思わぬ風評被害を受けてしまうこともあります。

被害に遭った会社から弁護士に相談・依頼するするメリット

このように、会社役員による業務上横領事件が発生した場合、被害届を提出して刑事事件化するべきかどうかは、会社や役員を取り巻く事情によって変わってきます。そして、その判断は容易にはできません。刑事事件となった場合に、被疑者が逮捕・勾留される可能性、起訴されて刑事裁判となる見通しについては、刑事事件の経験が豊富な弁護士に相談することが一番確実です。会社として顧問弁護士がいる場合でも、刑事事件としての見通しや被害者側としてどのような対応ができるかは、専門分野の弁護士に相談することが重要です。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所では、長年、刑事事件に力点を置いた弁護活動を行ってきた経験から、刑事事件化した場合の見通しを示し、早期の示談対応を行うといった、被害に遭ってしまった会社の求めるニーズに合わせた弁護活動を展開します。
会社役員による業務上横領事件の被害に遭ってお悩みの場合は、まずは弊所までご相談ください。刑事事件と被害者対応に実績のある弁護士が相談にあたります。

交通事故の被害者になったら

2023-12-13
交通事故

1 事故発生直後の対応

交通事故が発生した際には、まずは現場の安全確保が最優先です。
事故車両が動かせる状態なら、安全な場所に移動させ、ハザードランプを点灯させましょう。
けががないか確認し、必要であれば、まずは救急車を呼ぶことが重要です。
事故の衝撃で、当初は痛みを感じなくても、後から症状が出ることがあります。
また、事故の状況をできるだけ詳細に記録しておくことが、後の手続きに役立ちます。
これには、事故現場の写真撮影や、通行人等の目撃者のがいれば、協力を依頼し、氏名及び連絡先の情報収集をするように努めましょう。
また、速やかに警察への通報が必要です。
これは道路交通法で義務付けられており、事故の事実を正式に記録するためにも重要です。
警察官が現場に到着したら、事故の概要を説明し、事故証明書を後日取得することを忘れないでください。
この証明書は、保険会社への請求や、もし裁判になった場合の証拠としても利用されます。
また、自分の記憶や証拠が新鮮なうちに、事故の詳細をメモしておくことも大切です。
事故の日時、場所、関わった車両の詳細、天候や道路の状況など、細かな情報が後の対応をスムーズに進める手助けとなります。

2 けがの治療が最優先

交通事故後は、たとえ軽い症状であっても、速やかに医療機関での受診が推奨されます。
事故による衝撃は、たとえ外傷が見えなくても内部に損傷を与えることがあります。
医師による診断は、健康状態の確認のみならず、後の損害賠償請求の根拠ともなります。
受診時には、事故に関する詳細を医師に伝え、診断書や治療記録のコピーを取得しておくことが重要です。
これらの文書は、保険会社への請求や法的手続きの際に、治療に関する証拠として役立ちます。
また、治療中は定期的に医療機関を訪れ、症状の変化を記録しておくことも大切です。
これにより、後遺症などの長期的な影響も適切に評価されることにつながります。

3 保険会社への連絡

交通事故が起きた場合、被害者は自身の保険会社と加害者の保険会社の双方に連絡を取る必要があります。
まず、自分の保険会社に連絡することで、自身の保険内容に基づいたアドバイスやサポートを受けることができます。
また、加害者の保険会社にも連絡をして、事故に関する情報を伝え、損害賠償の手続きを開始することが重要です。
この際、事故の詳細、治療の進行状況、治療費用など、具体的な情報を提供する必要があります。
保険会社への連絡は、文書で行うことが望ましく、電話でのやり取りは記録として残るようにメモを取ることが重要です。
こうした記録は、後の交渉や法的手続きにおいて、自分の主張を裏付ける証拠となります。

4 損害賠償請求

交通事故の被害者は、事故によって生じた損害に対して賠償を請求する権利があります。
損害賠償には、治療費、休業損害、慰謝料などが含まれます。
治療費には、病院での治療費のみならず、薬代や通院に必要な交通費も含まれることを理解しておくことが大切です。
休業損害は、事故によって仕事を休む必要があった場合に、その期間の収入の損失を補填します。
慰謝料は、事故による精神的な苦痛に対する補償であり、具体的な金額は事故の重さや治療期間によって異なります。
賠償金の請求は、加害者やその保険会社に対して正式に行う必要があり、この過程では書面による交渉が基本です。
損害賠償の内容や金額については、弁護士等の専門家のアドバイスを受けることがお勧めです。

5 示談交渉

交通事故の損害賠償においては、被害者と加害者(またはその保険会社)間での交渉が一般的です。
交渉の目的は、双方が納得できる賠償額を決定することにあります。
この過程では、事故に関する全ての情報と損害の証拠を用意し、具体的かつ合理的な賠償額の根拠を示すことが重要です。
交渉は書面で行われることが多く、提出する資料には診断書や治療費の領収書、休業証明書などが含まれます。
和解交渉がスムーズに進まない場合、弁護士などの専門家に交渉を代行してもらうことも一つの選択肢です。
和解合意が成立した場合は、その内容を文書にして双方が署名・捺印することで、法的な効力を持たせます。
和解合意書は、後のトラブルを避けるためにも、丁寧に作成し保管しておかなければなりません。示談についてはこちらの記事もご参照ください。https://higaisya-bengo.com/jidan_wakai_kaiketu/

6 裁判上の請求の検討

損害賠償交渉が決裂した場合、法的措置を検討しなければならないでしょう。
これは、裁判所を通じて損害賠償の請求を行う方法で、通常は弁護士を代理人として行われます。
裁判を起こす前弁護士の活動となりますが、事故の証拠や損害の詳細を詳しく説明し、請求の正当性を主張し、立証する必要があります。
訴訟の過程は複雑で時間がかかることが多く、弁護士に委任していたとしても長い争訟経過には精神的な負担も伴うため、十分な心構えが求められます。
そして、裁判所での判断は、双方の主張及び証拠に基づいて行われ、その手続き上で裁判所の形成した心証により判決がなされます。
判決結果に不服がある場合には、控訴ができ、さらに控訴審の判決に対しても不服があれば上告ができます(三審制)。なお、交通事故の加害者は民事のみならず刑事裁判にかけられることもあります。人身事故と刑事裁判については、こちらの記事もご参照ください。https://sendai-keijibengosi.com/jinshinjiko_shiboujiko/

従業員にウソの書き込みをされた

2023-12-08

会社の従業員に、会社の評判を悪くするようなウソ情報の書き込みをされた場合どうすべきか、刑事被害者案件の取り扱い豊富な弁護士が解説します。

名誉毀損

事案の概要

A社長は、愛知県内で、飲食店を多店舗展開する会社(A株式会社)を経営しており、従業員は全部で100人程、年商は10億円程度であった。
あるとき、自社店舗のインターネット上の口コミをチェックしていると、
「A株式会社が経営しているレストラン〇〇はいかない方がいい。従業員の対応も最悪だし、なにより料理にはゴキブリが入っている。
カネを払う価値などないばかりか、店で食事などすればゴキブリを食べることになり、場合によっては多額の治療費を払うことにもなりかねません。
皆さん絶対に行かないようにしましょう」
との記載があるのを発見した。
なお、A社は衛生管理を徹底しており、料理にゴキブリが入っているようなことはない上、その他の客から同様のクレームを受けたこともなかった。
すぐさまA社長を含めた役職者で会議を開いたところ、A株式会社に対して不満を漏らしている従業員Xが書き込みをしている可能性が浮上した。
Aが業務で使用しているA株式会社支給のパソコンに管理者権限でログインしてパソコンを調査したところ、従業員Xが当該業務用のパソコンで上記書き込みを行っていたことが判明した。
(事案はフィクションです。)

名誉毀損とは

名誉毀損行為を罰する法律は、以下のようになっています。
刑法
第二百三十条
 
1 公然と事実を摘示し、人の名誉を毀(き)損した者は、その事実の有無にかかわらず、三年以下の懲役若しくは禁錮又は五十万円以下の罰金に処する。
第二百三十条の二
1 前条第一項の行為が公共の利害に関する事実に係り、かつ、その目的が専ら公益を図ることにあったと認める場合には、事実の真否を判断し、真実であることの証明があったときは、これを罰しない。

まとめると、具体的な事実を書きこんで、他人の名誉、つまり社会的評価を低下させるようなことを公然と言ったり書き込んだりしたような場合には、基本的に名誉毀損罪が成立することになります(刑法第二百三十条第1項)。会社などの法人も、被害者になるとされています。
但し、刑法第二百三十条の二第1項により、その事実が公共の利害に関することで、公益を守る目的のみで公表された場合に、その事実が真実であれば、公表された人は罰せられないことになります。名誉毀損罪については、こちらの記事もご参照ください。https://keiji-bengosi.com/kyohaku_meiyokison/
損害賠償の点でも、上記刑法第二百三十条の二第1項を満たす場合や、悪口だとしても意見や論評の範囲にとどまっている場合などは損害賠償責任が生じないケースはあります。
今回の事案で言えば、そもそも料理にゴキブリが入っているようなことが無く、従業員Xとしてはゴキブリが料理に入っているとか、レストラン〇〇の環境が不衛生であるというようなことを証明するのは難しそうです。
文面からしても、事実以外に本人の感想が過激に記述されていますから、A株式会社やレストラン〇〇の評判を落とすために書きこんだと見られ、公益のために書き込んだとはいえなさそうです。
事案では、名誉毀損罪が成立すると評価できる可能性が高いと言えます。

名誉毀損の被害に遭ったら

名誉毀損の被害に遭ってできることは、主に以下の2つです。今回は書き込んだ人が判明しているので、発信者情報の特定については省略します。
①刑事処罰を求めること
事案の詳細をまとめて、管轄の警察署に被害届と告訴状を出します。
名誉毀損罪は親告罪とされていて、被害者が被害届だけでなく告訴状も提出することで初めて加害者を処罰することができます。
事案が明らかで、警察官の方が親切であれば、特段告訴状の作成について困難はないかも知れませんが、そうでないことも多いですし、告訴状も一つの法律文書になります。被害者の方、会社の法務担当者の方単独での作成は不可能とはいえないまでも困難が多いことでしょう。

②損害賠償を獲得すること
民法で言う不法行為が、損害賠償請求の根拠となるでしょう。実際に損害賠償を得る手段としては、大きく2つあります。それは、裁判外での交渉による方法と、裁判で勝訴判決を得る方法です。
裁判外での交渉による方法は、刑事告訴と組み合わせることで、事実上加害者に示談締結、損害賠償金支払を動機づけ、早期解決の可能性を上げるメリットがあります。ただし、相手方が交渉や任意の支払いにに応じない場合は、このメリットが享受できないことになります。裁判によらない示談や和解については、こちらの記事で詳細を解説しています。https://higaisya-bengo.com/jidan_wakai_kaiketu/
裁判で勝訴判決を得る方法については、相手方が交渉に応じなくても損害賠償を得るための公的なお墨付きを獲得できるメリットがあります。ただし、事実の立証責任が原則として被害者側にあること、時間がかかること、実際に加害者の財産から損害賠償金が回収できる保証までは無いこと、裁判をすることで書き込みの存在がさらに広まってしまうというようなデメリットもあります。

刑事事件被害対応は弁護士に相談

名誉毀損の被害に遭われた方は一度弁護士に相談してみることをお勧めします。特にあいち刑事事件総合法律事務所では、被害者弁護活動の経験も豊富な弁護士が相談に当たらせて頂いております。
事実がそもそも刑事事件や不法行為にあたるのかを確認していく必要がありますし、刑事処罰や損害賠償を求めていくのにも被害者の方が独力で進めていくには困難が伴うことが予想されます。
弁護士に相談することで、事案を整理し、解決策を見出していく助けになっていくはずです。

【報道解説】アニメイト関連会社元社長を特別背任の疑いで逮捕

2023-12-05

アニメイト関連会社の元社長が特別背任の疑いで逮捕されたという報道記事をもとに、特別背任とはどのような罪か、会社役員が特別背任を犯した場合に会社としてどのような対応をとるべきかについて、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。

横領・背任

ニュースの概要

漫画やアニメのグッズ販売会社「アニメイト」の関連会社に約1億8000万円の損害を与えたとして、警視庁捜査2課は令和5年11月15日、同社元社長のAを会社法違反(特別背任)容疑で逮捕した。
逮捕容疑は社長在任中の2019年5月〜22年4月、約70回にわたって人気カードゲーム「遊戯王」や「ポケットモンスター」などの中古トレーディングカードの仕入れを装い、経理担当者に指示して現金計約1億8000万円を関連会社から知人の口座に振り込ませた疑い。
捜査2課によると、送金された現金は数%の手数料を知人が得た上で、9割以上がAの個人口座に還流していた。同課は高級車の購入や家賃、クレジットカードの支払いなど、Aの私的な支払いに充てたとみている。
(日本経済新聞令和5年11月15日のWEB記事https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUE152LX0V11C23A1000000/より抜粋、一部改変)

特別背任とは

特別背任罪とは、取締役など会社に対して重要な役割・義務を負う人物が、自己もしくは第三者の利益を図り、または会社に損害を与える目的で任務に背く行為をし、会社に財産上の損害を負わせた場合に成立する犯罪です。
取締役等による特別背任罪が成立した場合には「10年以下の懲役」もしくは「1000万円以下の罰金」に処せられるか、これらが併科されます。
刑法の背任罪よりも重い刑罰が定められており、行為者が会社の取締役や支配人などに限られていることが特徴です。背任罪については、こちらの記事もご参照ください。https://osaka-keijibengosi.com/haininzai/
今回のニュースのAは、会社の社長ということなので、代表取締役であったといえます。
そして、代表取締役が、知人及び自己の利益を図るために、架空の仕入れに基づいて会社財産を支出させ、会社に約1億8000万円の損害を負わせたということから、Aには特別背任罪が成立する可能性が高いといえるでしょう。

特別背任の被害に遭ったら

取締役等による特別背任の事実を発見した場合、会社としては①刑事告訴をする、②損害賠償を請求するという方法が考えられます。
①刑事告訴と②損害賠償請求は両立しますので、同時に行うこともできます。

刑事告訴をする場合には、警察などの捜査機関に対して、告訴状を作成し、犯罪が行われたことを疑わせるに足りる十分な証拠を告訴状とともに提出することが一般的です。
告訴状の作成や証拠の収集のためには、内部調査として関係者への聴き取りや請求書・領収書・会計帳簿などの資料を精査するなどの必要があります。
そういった内部調査を十分に行ったうえで、捜査機関に捜査を開始してもらえるような告訴状を作成する必要があります。
しかし、内部調査だけでも膨大な時間と労力がかかりますし、告訴状も特別背任にあたるのか、それとも詐欺などの他の罪に当たるのか、特別背任にあたるということをどのように説明したらよいのかなど、専門的な知識が必要になります。
そのため、内部調査や告訴状の作成には、専門家である弁護士に担当してもらうのがよいでしょう。

損害賠償を請求する場合には、いきなり訴訟を提起するよりも、直接取締役等に会社から賠償を請求することをまず考えるべきです。
民事訴訟を提起する場合には、訴状の作成、証拠の収集・提出、裁判への参加などとてつもない労力や費用が必要になりますし、時間も1年近くかかってしまいます。
そのため、まずは任意交渉で賠償を求めていくべきでしょう。
しかし、取締役等が事実を争ったり、支払い意思を示してくれなかったりという場合には、どうしても訴訟にせざるを得ず、場合によっては取締役の財産を差し押さえるなどのことも考えなければならなくなる可能性があります。
そういったときに、訴訟を提起しても費用倒れにならないかを検討したり、訴訟の前に今一度任意交渉をしたり、訴訟の遂行を担当するのが弁護士です。
専門家である弁護士に相談することで、任意交渉の仕方や訴訟をすべきかどうかについてのアドバイスももらえます。

刑事告訴や損害賠償を請求する前に

会社が特別背任の被害に遭った場合には、会社として加害者である取締役等になにがしかの罰を与えたいと思うと思います。
しかし、刑事告訴や損害賠償請求訴訟をする場合には、それによって会社自体が受ける影響も考慮する必要があります。
たとえば、今回のニュース記事のように、刑事告訴をして取締役等が逮捕されると、会社名を含めて報道に出てしまう可能性があります。
そのため、会社の信用が失われてしまい、会社経営に不利に働くかもしれません。
また、今回のニュースでは、会社社長が個人で得た利益について、確定申告をしていないことから、国税局からも法人税法違反等で告発を受けています。
法人税法違反で社長が起訴され有罪となると、会社も両罰として罰金刑を受け、会社が罰金を支払わないといけなくなる可能性があります。
このように、刑事告訴や損害賠償請求をしようとする場合には、それによって会社が被る悪影響についても検討しておく必要があります。
会社として、どのような対応をとるのが一番良いのかについて、専門家である弁護士に相談して、様々なリスクやメリットデメリットを検討してもらい、よりよい解決を目指してもらいましょう。弊所で実施しております無料法律相談の詳細については、こちらの記事をご覧ください。https://higaisya-bengo.com/soudan/

被害者参加制度について

2023-12-01

今回は、被害者参加制度について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説いたします。

刑事裁判

被害者参加制度とは

被害者参加制度は、被害者自身が刑事裁判に当事者として参加し、証人尋問や被告人質問を行い、検察官とは別に論告・求刑を行うことができます。なお、弁護士による被害者支援は、刑事裁判の段階に限らず、裁判となる前の捜査段階からも行えます。詳しくはこちらの記事をご参照ください。https://higaisya-bengo.com/bengosi_tokucyou/

被害者参加制度の対象犯罪は、以下のとおりです。
① 故意の犯罪行為により人を死傷させた罪
  強盗殺人、殺人、傷害、傷害致死、遺棄等致死傷、不同意わいせつ等致死傷、強盗・不同意性交等致死、強盗致死傷、逮捕等致死傷、危険運転致死傷など
② 不同意わいせつ、不同意性交等、監護者わいせつ及び監護者性交等、業務上過失致死傷等、逮捕及び監禁、未成年者略取及び誘拐、営利目的等略取及び誘拐、身の代金目的略取等、所在国外移送目的略取及び誘拐、人身売買
③ 前号に掲げる罪のほか、その犯罪行為にこれらの罪の犯罪行為を含む罪(第一号に掲げる罪を除く。)
④ 自動車の運転により人を死傷させる行為等の処罰に関する法律の、過失運転致死傷アルコール等影響発覚免脱、過失運転致死傷、無免許運転による加重
⑤ 第一号から第三号までに掲げる罪の未遂罪

参加ができるのは、被害者と一部の遺族、法定代理人・両親、委託を受けた弁護士、です。
参加者は、被害者参加人、被害者参加弁護士、と呼ばれます。

被害者参加制度でできること

被害者参加人又はその委託を受けた弁護士は、公判期日に出席することができます。公判(刑事裁判)の流れについては、こちらの記事もご参照ください。https://sendai-keijibengosi.com/kouhannogaiyou/
検察官の横や後ろに座ることになります。
状況次第で他の人から見えないように衝立を設置することもあります。

被害者参加人又はその委託を受けた弁護士は、検察官に対し、当該被告事件についての検察官の権限の行使に関し、意見を述べることができます。
検察官と打ち合わせをしながら、進めていくことになります。

裁判所は、証人を尋問する場合において、被害者参加人又はその委託を受けた弁護士から、その者がその証人を尋問することの申出があるときは、申出をした者がその証人を尋問することを許すことができます。
被告人又は弁護人の意見を聴き、審理の状況、申出に係る尋問事項の内容、申出をした者の数その他の事情を考慮し、相当と認めるときに、認められます。
犯罪事実に関するものは除かれ、情状に関する事項についての証人の供述の証明力を争うために必要な事項について、尋問が認められます。

裁判所は、被害者参加人又はその委託を受けた弁護士から、その者が被告人に対して供述を求めるための質問を発することの申出があるときは、申出をした者が被告人に対してその質問を発することを許すことができます。
被告人又は弁護人の意見を聴き、被害者参加人又はその委託を受けた弁護士がこの法律の規定による意見の陳述をするために必要があると認める場合であって、審理の状況、申出に係る質問をする事項の内容、申出をした者の数その他の事情を考慮し、相当と認めるときに、認められます。
情状に関する事項だけでなく、犯罪事実に関するものも含まれます。

裁判所は、被害者参加人又はその委託を受けた弁護士から、事実又は法律の適用について意見を陳述することの申出がある場合において、申出をした者がその意見を陳述することを許すことができます。
審理の状況、申出をした者の数その他の事情を考慮し、相当と認めるときは、公判期日において、検察官の意見の陳述の後に、訴因として特定された事実の範囲内で、認められます。
どれぐらいの刑罰を受けるべきか、意見を述べることができます。
しかし、意見を述べるだけで、述べたことが証拠として採用されることはありません。

また、被害者参加制度以外でも行うことができますが、裁判所は、被害者等又は当該被害者の法定代理人から、被害に関する心情その他の被告事件に関する意見の陳述の申出があるときは、公判期日において、その意見を陳述させることができます。
被害者の気持ちを述べることができます。
犯罪事実の認定のための証拠とすることはできませんが、情状に関する証拠とすることはできます。

会社のお金を使い込まれてしまった!

2023-11-28

会社のお金を使い込まれてしまった場合に、会社としてはどのような対応をとることができるかについて、参考事例をもとに、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。

横領

1 事例

東京都内に本店を置くX社は、大阪支店の金銭管理に不審な点があったため、調査したところ、大阪支店の支店長であるAが、会社のお金を使い込んでいる疑いを抱きました。
そこで、X社は、Aの面談を行い、事情説明を求めたところ、Aが、会社のお金(合計300万円)を私的な飲食代や遊興費に遣っていることを認めました。
(事例はフィクションです。)

2 Aの刑事責任について―業務上横領罪の成立

Aの行為は、次のように、業務上横領罪(刑法253条)に該当するものと考えられます。
Aは、大阪支店のお金を管理していたことから、大阪支店のお金を「占有」、すなわち、事実上支配していたといえます。
これは、Aが、「業務上」、すなわち、X社大阪支店の支店長として行っていたものです。
そして、Aは、大阪支店の金銭を、X社から任されている業務に背き、会社の
お金を私的に流用していた(法律的には、不法領得の意思を実現する行為などといいます。)ため、「横領」したといえます。
そこで、Aには、業務上横領罪が成立し、10年以下の懲役の範囲で、その刑事責任を問われることになります(業務上横領罪についてはこちらの記事もご参照ください。https://osaka-keijibengosi.com/oryozai/)。
なお、Aは、大阪支店の支店長ではなく、単なるアルバイトで、大阪支店のお金に関し何らの権限もないのに、そのお金(合計300万円)勝手に持ち出し、私的に費消したという場合、業務上横領罪ではなく、窃盗罪(刑法235条)が成立するものと考えられます。
このときには、X社側からすれば、被害を受けた金額は、上の参考事例と異ならないです。
もっとも、業務上横領の場合、信頼し、預けていた(委託信任関係といいます。)にもかかわらず、それを裏切って私的流用していたという面があり、そのことが、Aの刑事責任・民事責任に影響を及ぼす可能性があります。

3 X社における対応について

X社においては、まず、①警察に被害申告(被害届など)や告訴を行うことによって、Aの刑事責任を追及していくことが考えられます。
また、②被害申告や告訴を行うかどうかにかかわらず、Aに対し、被害弁償を求めていくということも考えられます。
さらには、③Aが現に、X社の従業員である場合、Aに対し、懲戒処分を行うのかなどを検討する必要もあります。

4 業務上横領の被害者代理人活動

まず、①X社が、被害申告や告訴を行う場合、捜査機関に対し、Aが横領行為を行っているという疑いを抱かせるだけの証拠を提出する必要がある場合があります。
X社には、Aの業務上横領に関し、それなりの証拠(金銭出納帳や領収証等)が残っている場合が考えられます。
そこで、弁護士の助言のもと、必要な証拠を捜査機関に、早期に提出し、捜査を迅速に行わせることが重要になってきます。
また、②X社が、Aに対し、被害弁償を求めていく場合には、会社として、単純に被害金額のみを返還してもらえばいいのか、示談を締結するのかなどについて、刑事責任や民事責任にどのような影響があるのかも考慮しながら判断していく必要があります。
さらに、③Aに対し、懲戒処分を検討する場合、懲戒処分ができるのか、できるとすればどのような処分が妥当なのか、事案に応じた検討が必要になります。
以上の点について、それぞれ検討する際には、弁護士のアドバイスというのが必要になってきます。被害者代理人としての活動についてはこちらの記事もご参照ください。https://higaisya-bengo.com/bengosi_irai_meritto/

5 最後に

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所では、業務上横領の被害に遭われた方への支援を行っています。初回の相談は無料ですので、お気軽にお問い合わせください。

性的姿態等撮影罪の被害を相談

2023-11-24

性的姿態撮影罪被害に遭ってしまった場合、弁護士が行える被害者支援について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。

盗撮

1 参考事件

女性Aさんは、とある会社で事務員の仕事をしていましたが、ある日トイレに小型カメラが仕掛けられているのを発見してしまいました。警察に通報すると、小型カメラ内に残っている動画データから、会社の上司が容疑者として浮上してきました。事情聴取の中で警察官からお話しを聞いていくと、どうやら会社の上司はAさんに好意を抱いていて、Aさんがトイレに行くのを見計らって小型カメラの設置を行っていたようで、会社の上司の自宅に置いてあるパソコンからはAさんが用を足している動画が大量に発見されました。
(この参考事件はフィクションです。)

2 法律解説

性的姿態撮影罪
参考事件で、会社の上司がAさんにした行為は、Aさんがパンツを下ろして用を足す姿を撮影する行為であり、性的姿態等撮影罪に当たります。
性的姿態等撮影罪とは、令和5年に施行された性的な姿態を撮影する行為等の処罰及び押収物に記録された性的な姿態の影像に係る電磁的記録の消去等に関する法律第2条に規定する罪であり、法定刑は三年以下の拘禁刑(令和7年5月までは、懲役刑)または罰金三〇〇万円以下に当たる罪になります。
もともと、盗撮行為自体は各都道府県の条例で規制されていましたが、全国的に犯罪成立要件のばらつきをなくし、厳罰化するために、性的姿態等撮影罪が新設されました。性的姿態撮影罪の詳細については、こちらの記事もご参照ください。https://keiji-bengosi.com/tosatsu_nozoki/

【条文】性的な姿態を撮影する行為等の処罰及び押収物に記録された性的な姿態の影像に係る電磁的記録の消去等に関する法律第2条

一 正当な理由がないのに、ひそかに、次に掲げる姿態等(以下「性的姿態等」という。)のうち、人が通常衣服を着けている場所において不特定又は多数の者の目に触れることを認識しながら自ら露出し又はとっているものを除いたもの(以下「対象性的姿態等」という。)を撮影する行為
イ 人の性的な部位(性器若しくは肛(こう)門若しくはこれらの周辺部、臀でん部又は胸部をいう。以下このイにおいて同じ。)又は人が身に着けている下着(通常衣服で覆われており、かつ、性的な部位を覆うのに用いられるものに限る。)のうち現に性的な部位を直接若しくは間接に覆っている部分

本件では、加害者である会社の上司は、自分の性的な興味のために、Aさんの臀部、肛門、性器と言った「人の性的な部位」をAさんに気付かれない様に「ひそかに」撮影しています。性的な興味というのは「正当な理由」がないと言えますので、会社の上司の行為には性的姿態等撮影罪が成立することになります。

3 弁護士による被害者支援

今回は、警察によって盗撮動画のデータが確保されていますが、被害者の方自身が取り調べに行くことができないということになると加害者の処罰が出来ないということにもなりかねません。また、動画で被害者の方の顔がハッキリ写っていないということにもなると、もしかすると事件化できないということにもなりかねません。
そういったことを防ぐために、弁護士としては、被害者の方の心情に寄り添って、事実を確認しつつ、必要であれば取調べに付き添うなどし、被害者の方がしっかりと取調べを受けることができるように全力でサポートさせて頂きます。
特に、刑事事件の経験が豊富で、警察や加害者の考えをよく知っている弁護士がサポートすることで、被害者の方としては特に心強くなることでしょう。
また、性的姿態等撮影事件のような性犯罪の事件では、加害者の弁護士から示談の申し出を受けることもあります。
自分で性被害についての示談交渉を行うこと自体が大変つらいのはもちろん、加害者側の弁護士は法律や交渉のプロですから、自分だけで対応をすると自分が納得のいかない示談内容で示談をすることにもなりかねません。
刑事事件の加害者側弁護の経験も豊富で、被害者弁護の技術にも優れている弁護士のサポート受ければ、納得いかない示談内容で示談をすることを防ぎ、納得のいく示談金、示談条件を獲得できる可能性も上がります。刑事事件において示談がどのような意味を持っているかといった点については、こちらの記事で詳細をまとめております。https://higaisya-bengo.com/jidan_wakai_kaiketu/
特に、参考事件のような場合だと、一方的につけ狙われて多数回にわたってトイレ内での様子を盗撮されているわけですから、交渉次第では比較的高額の示談金と、より有利な示談条件を獲得できるかもしれません。

4 最後に

盗撮の被害に遭われた方、警察、加害者側弁護士に対してどう対応したらよいか迷っている方、自分で事件の対応をするのがつらい方、示談をするなら納得いく条件で示談をしたい方は、ぜひ一度被害者弁護を扱う弁護士にご相談ください。

被害申告をしたが警察が動いてくれない?!

2023-11-21

無理矢理性行為をされた場合における告訴について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。

被害届

1 事例

福岡県福岡市博多区で一人暮らしをする女性Xさんは、マッチングアプリで知り合った男性Aと食事に行くことなり、中央区天神にある居酒屋で食事をしました。
その後、Aから、「いまからカラオケに行こう」と言われ、近くのカラオケボックスに入店しました。
しばらく2人で歌った後、Xさんは、突然、Aから押し倒され、Aの片方の手で、両腕を押さえつけられました。
そして、Xさんは、抵抗しようとしましたが、Aには力では敵わず、Aの空いている手で、下着をずらされ、無理矢理性行為をされました。
Xさんは、この件があってから、ずっと塞ぎこんでいましたが、数か月後、実家に帰った際、Xさんの母親が、落ち込んでいるXさんを見て、「何かあったの?」と聞いたところ、Xさんは母親に今回の事件のことを打ち明けました。
Xさんと母親は、Aを処罰してもらいたいと考えています。

2 Aの刑事責任について―不同意性交等罪の成立

Aは、Xさんに対し、その両腕を押さえつけるなどの「暴行」を用いて、抵抗できない状態、すなわち同意しない意思を全う(まっとう)することが困難な状態にさせ、性交をしています。こうしたAの行為は、不同意性交等罪(刑法177条1項、176条1項1号)が成立しますので、5年以上の有期拘禁刑(拘禁刑となるまでは懲役刑)の範囲で、Aの刑事責任を問うことができる可能性があります(不同意性交等罪についてはこちらの記事もご参照ください。https://keiji-bengosi.com/gokan_kyoseiwaisetsu/)。

3 告訴について

通常、犯罪の被害に遭われた方が、警察に対し、被害届を出すなどして、警察が捜査を開始することになります。被害届は、通常、警察の方で作成してくれます。
しかし、今回の事例のように、Xさんの被害申告が、事件から一定期間経過後になされたものであるなどの場合、警察が、被害届だけでは捜査に着手してくれないこともあります。
そうした場合には、告訴(刑事告訴とも呼ばれます。刑事訴訟法230条)をするということ考える必要があります。
告訴とは、被害者その他法律上告訴権ある者が検察官または司法警察員(ごく簡単にいえば一定の警察官のことです)に対し、犯罪事実について犯人の処罰を求める旨の意思表示をすることをいいます。
告訴を行うことで、告訴を受けた司法警察員は、速やかに書類及び証拠物を検察官に送付しなければならず(刑事訴訟法242条)、捜査機関の捜査を促すことに繋がります。
告訴は、口頭でもできますが、通常は告訴状という文書を提出します。被害届との違いなど、告訴についての詳細はこちらの記事でも紹介しています(https://higaisya-bengo.com/hanzaihigai_attabaai_taisyo/)。

4 告訴における代理人活動

犯罪被害者であるXさんが告訴をしようと考えた場合、告訴状を作成するといった形式的な問題もありますが、警察が捜査に着手してくれないおおよその理由が考えられる場合には、その点に関して、別途、Xさんの側で、たとえば、事件の概要だけではなく、被害申告が遅れた理由などを説明するような文書を準備する必要があることも考えられます。
どのような文書を準備すべきかについては、弁護士のアドバイスが必要になってきます。
また、警察が捜査を開始した後も、事情聴取が行われることになりますが、事情聴取での対応を考えていく必要もあります。
捜査中に、Aから、示談の申入れがあることも考えられますので、それに対する対応も考える必要があります。
さらに、Aが刑事裁判に掛けられることになった場合、Xさんが刑事裁判に関与していくかどうかも検討する必要があります。

5 最後に

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所では、不同意性交等の被害に遭われた方への支援を行っています。初回の相談は無料ですので、お気軽にお問い合わせください。

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