Archive for the ‘犯罪被害者支援’ Category

特殊詐欺被害~複数人からの示談の申入れ~

2024-02-02

オレオレ詐欺などの特殊詐欺被害に遭ったときに、複数人から示談の申入れがある場合があります。その場合の問題について弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。

オレオレ詐欺

事例

東京都葛飾区に住むAさんは、オレオレ詐欺の被害に遭い300万円をだまし取られてしまいましたが、警察の捜査の結果、Aさんを騙した掛け子役のXと出し子役のY及び指示役のZの3人が逮捕されました。
その後、XとYのそれぞれの弁護人から別々に、Aさんに対して「300万円の賠償と引き換えにXに対して刑事処罰を求めないという示談をしてくれないか」という連絡がありました。
Aさんは、XやYとの示談をした場合に自分が不利にならないために、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所の無料相談を受けることにしました。
(フィクションです)

示談とは

示談と一口に言っても、その内容は様々です。
単に賠償金(被害弁償金・示談金・解決金)を受け取っただけでも示談と言われることがありますが、基本的には、賠償金を受け取ったうえで、それ以上にお互い金銭のやり取りはしないという条項「清算条項」という。「本示談書に定めるもののほか、何らの債権債務がないことを相互に確認する」というような文言のことが多い。)を設けて解決を図ることを示談や和解ということが多いです。
もっとも、刑事事件においては、さらに「加害者に対して刑事処罰を求めない」などの加害者を許す条項「宥恕条項」という。)まで設けた示談(刑事示談)を行うことが多いです。
示談については、こちらもご覧ください。https://higaisya-bengo.com/jidan_wakai_kaiketu/

複数人から示談の打診があった場合~被害金額を超えて示談金を受け取れるか~

刑事事件の内容によっては、加害者が複数人いる場合があり、そういった場合には、複数人から示談を申し込まれることもあります。
損害賠償請求をする場合には、加害者が複数人いるときには、共同不法行為となり、被害者の方は加害者それぞれに対して自分が被った損害の額全額を請求することができます。
事例のAさんの場合には、Xに対して300万円、Yに対して300万円、Zに対して300万円をそれぞれ請求することができます。
しかし、仮にXがAさんに対して300万円を支払った場合には、AさんはさらにYやZに対して300万円を請求することは出来なくなります。
もっとも、示談交渉の中で受け取る場合には、あくまでも任意交渉ですので、一人から被害金額全額を受け取ったとしても、別の人から別途解決金として金銭を受け取るということは可能です。
そのため、事例のAさんの場合には、XとYそれぞれから300万円を支払うという打診が来ていますので、それぞれから300万円を受け取ることが可能です。

複数人から示談の打診があった場合~宥恕の効果~

共犯事件で、加害者全員から示談の申入れがあった場合、示談を受けると当然加害者全員に対して効果を与えることになります。
特に宥恕文言が入っている示談を締結した場合、加害者全員が不起訴処分となり刑罰を受けなくなる可能性があります。
もし、どうしても刑罰を受けてほしいと考えている場合には、賠償金は受け取るが許すつもりはないということを明確にしておくべきでしょう。
問題となるのは、共犯者の一部の者からしか示談の申入れがなかった場合です。
共犯者の一部とだけ示談をしたとしても、その効果は示談をしていない共犯者に対しても及ぶ可能性があります。
たとえば、事例のAさんがXとYから示談金の支払を受け、XとYには刑罰を求めないという宥恕付きの示談をした場合、XとYの処分について軽くなることは当然ですが、示談金を受け取ったことにより、Zについても有利な事情として扱われ、Zの処分も軽くなる可能性があります。
特に、告訴をしている事件について、共犯者の一部とだけ示談して、示談の内容としてその一部の共犯者に対する告訴を取り消すという文言が入っていた場合、告訴の取消しは共犯者全員に効力が及ぶため(刑事訴訟法238条1項)、共犯者全員に対する告訴の効果が失われてしまいます。
刑事裁判にかけるために告訴が必要とされている事件(親告罪)の場合には、一部の者に対する告訴の取消しであったとしても、全員に対する取消とされてしまうので、刑罰を与えることが出来なくなってしまうことに注意が必要です。
その他、示談における一般的なメリット・デメリットについては、こちらをご覧ください。https://www.houterasu.or.jp/higaishashien/toraburunaiyou/keiji_tetsuzuki/jidan/faq1.html

示談の申入れがあれば

示談の申入れがあった場合、その申入れの内容が法律的に見て妥当かどうかは経験を積んだ弁護士に確認してもらうのが一番です。
特に複数人から示談の打診があった場合には、安易に示談を受け入れてしまうと思ってもいなかった効果が発生する場合もあります。
そのため、示談の申入れがあったときにすぐに結論を出すのではなく、専門家である刑事事件専門の弁護士にまずは相談してみてください。

少年事件への被害者としての関わり

2024-01-30

少年事件による犯罪被害に遭ってしまった場合、手続の中で被害者ができることについて、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。少年事件においては、適用される少年法の趣旨や理念のもと、加害者である少年を保護するという側面が重視され、被害者の置かれる立場がより厳しくなりがちです。
被害者の立場でどのような対応が取れるかお悩みの場合は、被害者支援に詳しい弁護士へ相談しましょう。

裁判記録

被害者等による記録の閲覧・謄写

家庭裁判所は、少年に係る保護事件について、審判開始の決定があった後、当該保護事件の被害者等又は被害者等から委託を受けた弁護士から、その保管する当該保護事件の記録の閲覧又は謄写の申出があるときは、申出をした者にその閲覧又は謄写をさせるものとされております。
閲覧又は謄写を求める理由が正当でないと認める場合及び少年の健全な育成に対する影響、事件の性質、調査又は審判の状況その他の事情を考慮して閲覧又は謄写をさせることが相当でないと認める場合は除かれます。
申出は、次に掲げる事項を明らかにしてしなければなりません。
・申出人の氏名、名称又は商号及び住所
・閲覧又は謄写を求める記録を特定するに足りる事項
・申出人が申出をすることができる者であることの基礎となるべき事実
・閲覧又は謄写を求める理由
この申出は、その申出に係る保護事件を終局させる決定が確定した後3年を経過したときは、することができません。
記録の閲覧又は謄写をした者は、正当な理由がないのに閲覧又は謄写により知り得た少年の氏名その他少年の身上に関する事項を漏らしてはならず、かつ、閲覧又は謄写により知り得た事項をみだりに用いて、少年の健全な育成を妨げ、関係人の名誉若しくは生活の平穏を害し、又は調査若しくは審判に支障を生じさせる行為をしてはなりません。
加害少年の名前をもとに事件を特定して手続が進められますので、分からない場合は被害者が警察署で加害者の名前を教えてもらうことになります。

被害者等の申出による意見の聴取

家庭裁判所は、少年に係る事件の被害者等から、被害に関する心情その他の事件に関する意見の陳述の申出があるときは、自らこれを聴取し、又は家庭裁判所調査官に命じてこれを聴取させることとなります。
ただし、事件の性質、調査又は審判の状況その他の事情を考慮して、相当でないと認めるときは、実施されません。
申出は、次に掲げる事項を明らかにしてしなければなりません。
・申出人の氏名、名称又は商号及び住所
・当該申出に係る事件を特定するに足りる事項
・申出人が申出をすることができる者であることの基礎となるべき事実
意見を聴取するときは、申出人の心身の状態に配慮して実施されます。加害少年の前で意見を述べたいと希望した場合でも、家庭裁判所が認めないこともあります。

被害者等による少年審判の傍聴

少年審判は非公開が原則です。
家庭裁判所は、被害者等から、審判期日における審判の傍聴の申出がある場合において、少年の年齢及び心身の状態、事件の性質、審判の状況その他の事情を考慮して、少年の健全な育成を妨げるおそれがなく相当と認めるときは、その申出をした者に対し、これを傍聴することを許すことができます。
対象事件は、以下の事件となります。
・故意の犯罪行為により被害者を死傷させた罪
・業務上過失致死傷等の罪
・過失運転致死傷等の罪
いずれも被害者を傷害した場合にあっては、これにより生命に重大な危険を生じさせたときに限ります。
家庭裁判所は、少年に係る事件の被害者等に審判の傍聴を許すか否かを判断するに当たっては、少年が、一般に、精神的に特に未成熟であることを十分考慮しなければなりません。
家庭裁判所は、審判の傍聴を許す場合において、傍聴する者の年齢、心身の状態その他の事情を考慮し、その者が著しく不安又は緊張を覚えるおそれがあると認めるときは、その不安又は緊張を緩和するのに適当であり、かつ、審判を妨げ、又はこれに不当な影響を与えるおそれがないと認める者を、傍聴する者に付き添わせることができます。
裁判長は、審判を傍聴する者及びこの者に付き添う者の座席の位置、審判を行う場所における裁判所職員の配置等を定めるに当たっては、少年の心身に及ぼす影響に配慮しなければなりません。
傍聴・付添いをした者は、正当な理由がないのに傍聴により知り得た少年の氏名その他少年の身上に関する事項を漏らしてはならず、かつ、傍聴により知り得た事項をみだりに用いて、少年の健全な育成を妨げ、関係人の名誉若しくは生活の平穏を害し、又は調査若しくは審判に支障を生じさせる行為をしてはなりません。
家庭裁判所は、審判の傍聴を許すには、あらかじめ、弁護士である付添人の意見を聴かなければなりません。裁判長は、適正な審判をするため必要があると認めるときは、少年以外の者を退席させる等相当の措置をとることができます。少年審判の流れについては、こちらの記事もご参照ください。https://sendai-keijibengosi.com/syounensinpan/

被害者等に対する説明

家庭裁判所は、少年に係る事件の被害者等から申出がある場合において、少年の健全な育成を妨げるおそれがなく相当と認めるときは、その申出をした者に対し、審判期日における審判の状況を説明することになります。申出は、その申出に係る事件を終局させる決定が確定した後3年を経過したときは、することができません。
説明を受けた者は、正当な理由がないのに説明により知り得た少年の氏名その他少年の身上に関する事項を漏らしてはならず、かつ、説明により知り得た事項をみだりに用いて、少年の健全な育成を妨げ、関係人の名誉若しくは生活の平穏を害し、又は調査若しくは審判に支障を生じさせる行為をしてはなりません。

被害者等に対する通知

家庭裁判所は、少年に係る事件を終局させる決定をした場合において、当該事件の被害者等から申出があるときは、その申出をした者に対し、次に掲げる事項を通知することになります。少年事件における被害者への通知制度等については、こちらの記事もご参照ください。https://higaisya-bengo.com/syounenjiken_higaisya/
・少年及びその法定代理人の氏名及び住居
・決定の年月日、主文及び理由の要旨
ただし、その通知をすることが少年の健全な育成を妨げるおそれがあり相当でないと認められるものについては、除外されます。申出は、終局決定が確定した後3年を経過したときは、することができません。
通知を受けた者は、正当な理由がないのに通知により知り得た少年の氏名その他少年の身上に関する事項を漏らしてはならず、かつ、通知により知り得た事項をみだりに用いて、少年の健全な育成を妨げ、関係人の名誉若しくは生活の平穏を害し、又は調査若しくは審判に支障を生じさせる行為をしてはなりません。

加害者が不起訴処分になってしまったら

2024-01-26

犯罪被害に遭っても、加害者が不起訴処分となって処罰されないこともあります。不起訴処分とはどのようなものか、加害者が不起訴処分となった場合に被害者としてできることはあるかについて、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。

審査会

不起訴処分とは

犯人・加害者を刑事裁判にかけるか、すなわち起訴の判断は、検察官が行うことになります。しかし、全ての犯罪が起訴されるわけではありません。
まず、きちんとした証拠が不十分だと判断されたら、嫌疑不十分で起訴されないことがあります。また、犯罪行為が認められ、きちんとした証拠があっても、検察官は、犯人の性格、年齢及び境遇、犯罪の軽重及び情状並びに犯罪後の情況により訴追を必要としないと判断したときは、起訴猶予で起訴しないことができます。不起訴処分については、こちらの記事もご参照ください。https://sapporo-keijibengosi.com/fukiso/
検察官は、公訴を提起しない処分をした場合において、被害者等の請求があるときは、その理由を告げることになります。
しかし、実際には、「起訴猶予」「嫌疑不十分」等だけ伝えられ、詳細な理由の開示はなされないことがほとんどです。

検察審査会への不服申し立て

被害者等は、検察官の公訴を提起しない処分に不服があるときは、その検察官の属する検察庁の所在地を管轄する検察審査会にその処分の当否の審査の申立てをすることができます。審査申し立ての流れについては、こちらの記事もご参照ください。https://higaisya-bengo.com/kensatukan_syobun_fufuku/
検察審査会は、地方裁判所及び地方裁判所支部にあります。審査の申立は、書面により、且つ申立の理由を明示しなければなりません。審査申立人は、検察審査会に意見書又は資料を提出することができます。
検察審査会は、当該検察審査会の管轄区域内の衆議院議員の選挙権を有する者の中からくじで選定した11人の検察審査員で組織されます。検察審査会議は、非公開で審理されます。
起訴を相当と認める起訴相当決議、公訴を提起しない処分を不当と認める不起訴不当決議、公訴を提起しない処分を相当と認める不起訴相当決議、のどれかが判断されることになります。
検察審査会議の不起訴相当・不起訴不当の判断は、過半数でこれを決することになります。起訴相当の議決は、検察審査員8人以上の多数によらなければなりません。
検察官は、速やかに、当該議決を参考にして、公訴を提起すべきか否かを検討した上、当該議決に係る事件について公訴を提起し、又はこれを提起しない処分をしなければなりません。
起訴相当の議決にもかかわらず、検察官が公訴を提起しない処分をした場合は、検察審査会は当該処分の当否の審査を行わなければなりません。
その結果、検察審査会が検察審査員8人以上の多数によって起訴相当の議決をしたら、裁判所は、起訴議決に係る事件について公訴の提起及びその維持に当たる者を弁護士の中から指定しなければなりません。
指定弁護士は、起訴議決に係る事件について、公訴を提起し、及びその公訴の維持をするため、検察官の職務を行うことになります。検察事務官及び司法警察職員に対する捜査の指揮は、検察官に嘱託してこれをすることになります。

早めに弁護士に相談を

しかし、被害者が不起訴処分に不満を持っても、検察官がいったん不起訴処分をしてしまったら、そこから起訴になることはほとんどありません。検察審査会を通じて起訴がなされることもほとんどありません。被害者は、起訴されることを期待して何もしないでいると、状況がどんどん悪化してしまうことがあります。
犯罪被害に遭ってしまった場合は、ぜひ早めに弁護士に相談して、今後の対応を検討するようにしてください。
出来るだけ起訴されるためにはどのような対応が必要か、不起訴の可能性が高いのであればどのように対応すればいいのか、などを検討していくことになります。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所では、犯罪被害者支援の弁護活動に精通した弁護士が所属しております。ご自身やご家族が犯罪の被害者となってしまったら、早めにご相談してください。
対応が遅れると、加害者側のペースに乗ってしまい、最終的に被害者側の納得できない形で終わってしまう可能性があります。
まずはお気軽にお電話して無料相談を受けていただけたらと思います。03-5989-0892までお電話してください。丁寧にご説明させていただきます。

【制度解説】被害者参加制度とは

2024-01-24

被害者参加制度について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。

法廷

1 被害者参加制度の概要

日本では、ひと昔前、被害者は、刑事事件の手続上、証拠の一つにすぎないとされてきました。
しかし、平成19年6月の刑事訴訟法改正によって、被害者参加制度が創設され、一定の犯罪については、被害者が独自の立場として、刑事訴訟(つまり、既に起訴されている事件)に関与することができるようになりました。刑事裁判の流れについては、こちらの記事もご参照ください。https://sendai-keijibengosi.com/kouhannogaiyou/

2 被害者参加の対象事件

被害者参加ができる事件については、刑事訴訟法316条の33第1項各号に列挙されており、次のとおりです。
① 故意の犯罪行為により人を死傷させた罪(殺人、傷害など)
② 刑法176条から179条の罪(不同意わいせつ不同意性交など)
③ 逮捕・監禁(刑法220条)の罪
④ 略取・誘拐・人身売買(刑法224条~227条)の罪
⑤ 業務上過失致死傷・重過失致死傷(刑法211条)の罪
⑥ 上記②~⑤の犯罪行為を含む罪(強盗・不同意性交等、特別公務員職権乱用など)
⑦ 過失運転致死傷等(自動車の運転により人を死傷させる行為等の処罰に関する法律4条、5条、6条3項、6条4項)の罪
⑧ 上記①~⑥の罪の未遂罪
大まかにいえば、人の生命・身体・自由に重大な侵害を加える犯罪が対象となります。

3 被害者参加でできること

刑事訴訟に被害者参加することによってできることとしては、
① 公判期日への出席(刑事訴訟法316条の34)
② 検察官に対する意見申述(刑事訴訟法316条の35)
③ 証人尋問(刑事訴訟法316条の36)
④ 被告人質問(刑事訴訟法316条の37)
⑤ 事実又は法律の適用についての意見陳述(被害者論告)(刑事訴訟法316条の38)
があります。
もっとも、たとえば、証人尋問に関しては、質問できる事柄や質問の時期に制約あるなど、実際の事案で具体的にどのようなことができるのかは簡単に分かるものとはなっていません。被害者参加制度については別記事でも紹介していますので、ご参照ください。https://higaisya-bengo.com/keijisaiban_sanka/

4 被害者参加をするにあたって

先ほどお話ししたように、被害者参加をするといっても、実際にどのようなことができるかは事案によって様々です。
犯罪被害に遭われた方が抱いている思いも様々で、被害者参加をすることによって、そうした思いを少しでも叶えることができるか、弁護士に一度相談してみる必要があります。
また、被害者参加をするにあたっては、当然、事件内容を把握する必要がありますが、そのために、検察庁にて事件記録を閲覧することになります。
もっとも、たとえば、その事案において証拠とされているものが、どのような意味をもっているのか一見して分かるとは限りません。
そうすると、事件内容を把握するためにも、法律的なサポートというのは欠かせません。
被害者参加をし、刑事訴訟に関与していくという場合には、検察官との打ち合わせや裁判所との情報共有が必要になってくることも予想されます。
さらに、犯罪被害に遭われた方にとっては、法廷で被告人に質問をしたり、意見を述べること自体、大きな負担となります。
こうしたことも、弁護士が代わりに行うことによって、犯罪被害に遭われた方の精神的負担を軽減しつつ、刑事訴訟に関与していくということも、弁護士の大事な使命だと考えられます。
その他、被害者参加以外にも、刑事手続においては、たとえば、捜査機関からの事情聴取や加害者側から示談交渉のための連絡が来るなど、様々な場面で対応が求められます。

5 最後に

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所では、犯罪被害に遭われた方への様々な支援を行っています。刑事訴訟へ関与していきたいと考えている方は、初回の相談は無料ですので、お気軽にお問い合わせください。

家族を交通事故で亡くしてしまったら

2024-01-19

家族を交通事故で亡くしてしまった場合、大きな悲しみが生じると同時に、被害者遺族は民事・刑事の両面で対応する必要に迫られます。簡単に気持ちを切り替えられるようなことではありませんが、対応をおざなりにしてしまうと、遺族としては納得のできない形で終わってしまうおそれがあります。そのような事態になれば、理不尽な悔しい気持ちや苦しみを長く抱えていくことになってしまいます。
弁護士として活動していると、そのような被害者遺族の方とお会いすることも少なくありません。もう少し早く弁護士に相談していただいていれば、と思うこともあります。
今回は、交通死亡事故での被害者遺族が対応する民事・刑事上の問題について弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説いたします。

死亡事故

民事賠償

交通事故で家族が亡くなってしまった場合、まずは民事の損害賠償の問題が生じます。加害者が任意保険に加入していたら、保険会社と賠償の交渉となります。この場合、保険会社は賠償金を出来るだけ低くしようと交渉してくる可能性があるので、遺族も弁護士を立てて、毅然と交渉する必要があります。
また、この保険会社からの賠償とは別に、加害者が弁護士を通じて示談を申し込んでくることがあります。謝罪と慰謝料・お見舞金の支払いがなされ、示談が成立すると、加害者の刑事処分が軽くなる可能性が出てきます。この交渉に対しても、被害者遺族は弁護士を立てて、内容面の検討も含めて慎重に対応した方がいいと思われます。
難しい専門的な判断が求められますので、この問題に精通した弁護士を選ぶべきです。

刑事裁判への被害者参加

加害者に過失・不注意が認められたら、起訴されて刑事裁判となる可能性があります。死亡事故によって加害者に成立し得る罪名については、こちらの記事もご参照ください。https://sapporo-keijibengosi.com/zinsinziko/
この刑事裁判では、遺族は被害者として参加することができます。特に、加害者が普段から交通違反を繰り返していたり、飲酒運転をしていたり、無謀運転をしていたり、轢き逃げをしたりした場合、遺族は加害者に対して大人しく黙っていることができない心境になります。
そこで、被害者として刑事裁判に参加し、いろいろな活動をすることが考えられます。被害者だけで参加することもできますが、きちんとした活動ができるように、弁護士を立てて参加するべきです。
被害者は、傍聴席でなく、法廷内の検察官の近くの椅子に座って参加する事ができます。被害者は、加害者側の証人に対して、尋問をすることができます。加害者はどんな人物なのか、事故が起きた背景、事故が起きた後の対応、今後の監督、等について尋問することが考えられます。
被害者は、加害者に対して質問することができます。事故そのものについて、事故が起きた背景、反省や謝罪、今後の対応、等について質問することが考えられます。
被害者は、被害に関する心情その他の事件に関する意見の陳述をすることができます。被害者遺族としての、今現在の気持ち・考えを語ることができます。
手続の最後には、事実又は法律の適用について意見を陳述することができます。つまり、加害者に対してどれぐらいの刑罰を与えるべきか等を主張することができます。この事実又は法律の適用についての意見は、証拠としては採用されませんが、被害者遺族としての思いを訴えることができます。加害者の刑事裁判に関与できる手段については、こちらの記事もご参照ください。https://higaisya-bengo.com/keijisaiban_sanka/

死亡事故が起きてしまった場合は弁護士へ相談を

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所では、交通死亡事故の被害者遺族の民事・刑事の弁護活動に精通した弁護士が所属しております。家族に死亡事故が起きてしまった場合は、お早めにご相談してください。対応が遅れると、加害者側のペースに乗ってしまい、最終的に遺族の納得できない形で終わってしまう可能性があります。
初回の相談は無料かつ電話でお受けしておりますので、03-5989-0892までお電話してください。懇切丁寧にご説明させていただきます。

【報道解説】営業秘密が不正取得されたため損害賠償請求

2024-01-16

営業秘密の不正取得に関する報道について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。

不正競争防止法

1 報道の内容

「かっぱ寿司」の運営会社「カッパ・クリエイト」の前社長が営業秘密を不正に取得したとして、回転ずしチェーンなどを展開する「ゼンショーホールディングス(HD)」の子会社はま寿司は27日、カッパ社や前社長らに5億円の損害賠償などを求めて東京地裁に提訴した。ゼンショーHDが発表した。
カッパ社の田辺公己前社長(47)はゼンショーHD幹部だった2020年、商品原価データなどの営業秘密を不正に取得したとして不正競争防止法違反(営業秘密領得など)の罪に問われ、懲役3年、執行猶予4年、罰金200万円の判決が確定している。
ゼンショーHDによると、事件の捜査や刑事裁判の過程で、持ち出されたデータがカッパ社内で使用されていたほか、同じコロワイドグループのコロワイドMDにも開示されていたことが分かった。はま寿司各店舗の損益計算書や売上高なども不正取得され、カッパ社に開示されていたことを確認したとしている。
ゼンショーHDは損害額を63億円以上と算出した。
(令和5年12月27日 共同通信/Yahoo!ニュース https://news.yahoo.co.jp/articles/93f8f98623dc3bcaad258572c8326ab36ec69698

2 営業秘密の不正取得

報道において、カッパ・クリエイト社の元社長は、不正競争防止法違反(営業秘密領得など)の罪に問われ、懲役3年、執行猶予4年、罰金200万円の判決が確定しているとされています。
不正競争防止法は、不正競争を防止するなどによって、国民経済の健全な発展に寄与することを目的とした法律です。
「営業秘密」とは、「秘密として管理されている生産方法、販売方法その他の事業活動に有用な技術上又は営業上の情報であって、公然と知られていないもの」をいい、商品原価データなどは「営業秘密」に当たります。
そして、報道で指摘されている営業秘密領得とは、不正の利益を得る目的で、又はその営業秘密保有者に損害を加える目的で、人を欺いたり、暴行や脅迫をしたり、財物の窃取、施設への侵入、不正アクセス行為などにより、営業秘密を取得することをいいます(不正競争防止法21条1項1号)。
カッパ・クリエイト社の元社長が具体的にどのような方法によったかは、報道では指摘されていませんが、上記のような営業秘密領得に該当する場合、10年以下の懲役もしくは2000万円以下の罰金(または罰金を併科)とされています。

3 損害賠償請求・代理人活動

報道において、カッパ・クリエイト社の元社長は、既に、その刑事責任に関する処分がなされており、その上で、「はま寿司」は、カッパ・クリエイト社や元社長らに対し、5億円の損害賠償請求をしています。
これは、はま寿司がカッパ・クリエイト社等に対し、民事責任を追及するものです。
そもそも民事責任を追及しようと民事訴訟を起こす場合、請求する側が証拠に基づいて主張する必要があります。
どのような証拠に基づき、どのような主張をする必要があるかについては、法律的な観点が必要になります。
特に、不正競争防止法に関する損害賠償請求の場合、請求の相手方が、故意・過失によって不正競争を行い、他人の営業上の利益を侵害したことを主張していく必要があります同法4条)。
さらに、不正競争防止法には、損害額を推定する規定(同法5条1項)など特別な規定もあり、弁護士のサポートというのは必要不可欠ともいえます。
このように、営業秘密領得の被害を受けた会社は、その加害者側に刑事処分が下された後でも、生じた損害の回復を目指すなど、状況に応じた対応が求められます。

4 最後に

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所では、不正競争防止法違反の被害に遭われた方への支援を行っています。初回の相談は無料ですので、お気軽にお問い合わせください。https://higaisya-bengo.com/soudan/

加害者から示談の申し入れがあったら

2024-01-09

犯罪被害に遭ってしまった後、加害者本人や加害者の弁護人から示談の申し入れがあった場合、どのような対応をとるべきかについて、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。

示談
示談

参考事例

Aさん(女性)は、近所に住むBさん(男性)と会って話していた際に、不意にBさんから抱き着かれました。Aさんは驚きましたが、Bさんが近所に住んでいることもあり、抱き着かれたことは誰にも話しませんでした。1週間ほど経ってから、Bさんから「この間のことは申し訳なかった。大事になってしまうと困るので、示談にしてほしい」という申し入れがありました。
(この参考事例はフィクションです)

参考事例の解説

不意に抱き着いたBさんは、「暴行(刑法176条1項1号)」によって、Aさんが「同意しない意思を形成し、表明し若しくは全うすることが困難な状態にさせ又はその状態にあることに乗じて、わいせつな行為(同項本文)」をしています。また、「同意しない意思を形成し、表明し又は全うするいとまがない(同項5号)」状況でわいせつ行為に及んだともいえます。
そのため、Bさんには不同意わいせつ罪が成立する可能性があります。証拠の有無にもよりますが、Aさんが出した被害届を警察が受理した場合、Bさんに対する捜査が行われます。Bさんは警察による取調べを受けるほか、場合によっては、逮捕や勾留といった身体拘束を伴うこともあります。
不同意わいせつ罪の法定刑は「6月以上10年以下の拘禁刑(刑法176条1項本文)」です。罰金刑は定められていないため、検察官が起訴した以上は、Bさんは刑事裁判にかけられます。不同意わいせつ罪の解説については、こちらの記事もご参照ください。
https://sendai-keijibengosi.com/kyouseiwaisetuzai_jyunkyouseiwaisetuzai/

示談が持つ意味

示談という言葉に法律上の正式な定義があるわけではありませんが、刑事事件に関して、被害者と加害者の間で、損害賠償などの取り決めを行うことを指します。場合によっては、被害届を出さない、あるいは既に出した被害届を取下げるといった、加害者の刑事処分に関わる事項について合意することもあります。
ひとたび有効に成立した示談は、当事者双方を法的に拘束します。例えば、示談金の支払い義務とその上限額を定めた場合、加害者は上限額までの支払い義務は負いますが、同時に、被害者からそれ以上の額を請求することはできないことになります。示談についてはこちらの記事でも解説していますので、ご参照ください。https://higaisya-bengo.com/jidan_wakai_kaiketu/

加害者側からの示談の申し入れ

示談を締結すること自体は、弁護士が間に入らなくても可能です。そのため、参考事例のAさんのように、加害者から直接、示談の申し入れがくることもあり得ます。また、既に加害者が勾留されているような場合は、加害者についた弁護人から連絡がくることもあります。
先ほども触れたとおり、示談は加害者の刑事処分や損害賠償に関して、重大な影響をもたらすことになります。加害者側から提示された条件が納得できるものであれば、そのまま合意して示談を締結することもよいですが、条件に納得がいかない場合や、この条件で本当によいのかと不安な場合は、被害者側でも弁護士をつけた方が無難です。
弁護士がついた場合、被害者の代理人として示談交渉を行うため、加害者側と直接やりとりをしなくて済みます。特に、加害者本人が直接示談を申し入れてきた場合には、二次加害を防ぐためにも、被害者の側も弁護士をつけた方がよいといえます。

加害者からの連絡があった場合は弁護士に相談を

被害者の側でも弁護士に依頼をして示談交渉を行う場合は、被害者支援の経験が豊富な弁護士に頼むのが望ましいといえます。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所では、これまで刑事事件を中心に取り扱ってきた経験を活かし、示談交渉のポイントを押さえつつ、被害者の方の心情や意向に配慮した対応に努めます。弁護士による初回の電話相談は無料で行っていますので、示談交渉についてお悩みの場合は、まずは弊所までお電話ください。

【事例解説】ひき逃げの被害者になったら…

2024-01-05

ひき逃げの被害者になった場合について、参考事例に基づいて、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。

ひき逃げ

1 参考事例

東京都に住む女性Xさん(45歳)は、仕事から帰宅する途中、後ろから来た自動車にはねられ、怪我を負いました。
Xさんをはねた自動車の運転手Aさんは、一度停止しましたが、自動車から降りることなく、そのまま現場から逃走しました。
(参考にした報道:令和5年12月14日 FNNプライムオンライン https://www.fnn.jp/articles/-/629929)

2 加害者Aさんの刑事責任について

加害者であるAさんは、交通事故を起こしているため、負傷者であるXさんを救護する(たとえば救急車を呼ぶ)など必要と考えられる措置を講ずる義務があります(救護義務と呼ばれます。道路交通法72条1項前段)。
それにもかかわらず、Aさんは、Xさんを救護することなく、その場から逃走しているため、道路交通法117条1項に違反し、5年以下の懲役または50万円以下の罰金の範囲で、その刑事責任を問われることになります。

また、交通事故を起こした場合において、その場に警察官がいないときは、直ちに最寄りの警察署に事故を起こした旨などを報告する義務があります(報告義務。道路交通法72条1項後段)。
Aさんは、そうした報告も行っていないことから、報告義務違反として、道路交通法119条1項10号に違反する罪も成立します。
その法定刑は、3か月以下の懲役または5万円以下の罰金です。

さらに、Aさんに、事故を起こしたことについて不注意があった場合、過失によって、Xさんに怪我を負わせていることから、過失運転致傷罪自動車の運転により人を死傷させる行為等の処罰に関する法律5条)が成立します。
その法定刑は、7年以下の懲役もしくは禁錮、または100万円以下の罰金です。

3 被害者Xさんとしてすべきこと・代理人活動について

Xさんは、怪我をしていますので、当然ですが、病院にて検査や治療を受ける必要があります。
参考事例では、怪我の程度が明らかになっていませんが、その程度によっては、治療費が高額になるケースもあります。
最終的には、加害者であるAさんに請求をしていくということになりますが、Aさんが逃亡しているため、いつ頃、AさんやAさんの保険会社と賠償の話ができるか分かりません。
そのような場合には、Xさんが加入している保険がある場合、その保険で一旦まかなうことができないか、弁護士によるアドバイスを受けながら、保険会社と話をしていく必要があります。保険会社との対応については、こちらの記事もご参照ください。https://higaisya-bengo.com/jikenbetu_jiko_higai/

また、Xさんは、刑事事件における被害者ですので、警察や検察での事情聴取に対応することになります。
その際にも、具体的な事案に応じて、弁護士のアドバイスを受けながら、必要な話しをしていく必要があります。
捜査機関の言われるままに供述調書が作成された場合、Aさんの刑事責任に関する場面でも、賠償を請求する場面においても、影響が及ぶ可能性もあります。

それから、仮に、Aさんが検挙された場合、Aさん側から、謝罪や示談についての連絡があることが予想されます。
まず、弁護士がAさん側との連絡の窓口となることができます。
その上で、謝罪や示談を受けるか判断する際には、その意味合いや金額について、その内容を十分に検討した上で、対応していく必要があります。
示談交渉の場面では、金額の交渉もする必要があります。
Aさんとの間で示談をしなかった場合、最終的には、民事訴訟を起こし、賠償を求めていく必要があります。

このように、一連の流れの中で、被害者であるXさんも様々な対応を求められ、そこには弁護士のサポートが必要になってくることが考えられます。

4 最後に

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所では、交通事故やひき逃げの被害に遭われた方への支援を行っています。初回の相談は無料ですので、お気軽にお問い合わせください。

風俗店での仕事中に盗撮された場合の相談

2024-01-02

風俗店に勤務している方がサービス中の様子を男性客に盗撮された場合、性的姿態等撮影罪等の犯罪が成立し、刑事告訴や損害賠償請求が可能なことがあります。

盗撮

1 参考事件

Aさん(女性)は、とある風俗店に在籍しており、今日も男性客に対してサービスを行っていました。風俗店はファッションヘルスと言われるもので、お店を構えて性的なサービスを提供するものになります。具体的には、女性従業員が衣服を脱いだ状態で、プレイルームなどと言われる密室で男性客の性器を刺激する等のサービスを行っています。
男性客Bの接客を始めたのですが、男性客Bが外してプレイルーム内に置いた腕時計の形が何となくいびつであり、サービスを行うベッドの方に文字盤を向けているような状態だったため、少し不審に思いましたが何もないだろうと思ってシャワーを浴び、サービスに入りました。
Aさんが全裸でBに対してサービスをしている最中、何となくBさんが腕時計を気にしている素振りがあったこと、サービス終了時に素早く腕時計を回収する等の様子からいよいよ不信感が高まり、風俗店の男性従業員を呼んで腕時計を確認したところ、実は腕時計は腕時計型盗撮カメラでした。
店舗事務所で腕時計型盗撮カメラの内部の映像を確認したところ、Aさんが全裸で性的サービスをしている映像が記録されていて、Bの顔も鮮明に映っていました。
直ぐに警察に通報し、Bは逮捕されたようですが、後に釈放され、警察の取調べを受けるようになりました。

(この参考事件はフィクションです。)

2 法律解説

性的姿態等撮影罪

参考事件で、Bがした行為は、Aさんが全裸で性的サービスを提供する姿を撮影する行為であり、「わいせつな行為又は性交等(略)がされている間における人の姿態」を撮影しているといえるため、「性的姿態等撮影罪」に当たる可能性が高いです。
性的姿態等撮影罪とは、令和5年に施行された性的な姿態を撮影する行為等の処罰及び押収物に記録された性的な姿態の影像に係る電磁的記録の消去等に関する法律第2条に規定する罪であり、法定刑は三年以下の拘禁刑(令和7年5月までは、懲役刑)または罰金三〇〇万円以下に当たる罪になります。
もともと、盗撮行為自体は各都道府県の条例で規制されていましたが、全国的に犯罪成立要件のばらつきをなくし、厳罰化するために、性的姿態等撮影罪が新設されました。性的姿態等撮影罪については、こちらの記事もご参照ください。https://keiji-bengosi.com/tosatsu_nozoki/

【条文】性的な姿態を撮影する行為等の処罰及び押収物に記録された性的な姿態の影像に係る電磁的記録の消去等に関する法律第2条

一 正当な理由がないのに、ひそかに、次に掲げる姿態等(以下「性的姿態等」という。)のうち、人が通常衣服を着けている場所において不特定又は多数の者の目に触れることを認識しながら自ら露出し又はとっているものを除いたもの(以下「対象性的姿態等」という。)を撮影する行為
ロ イに掲げるもののほか、わいせつな行為又は性交等(刑法(明治四十年法律第四十五号)第百七十七条第一項に規定する性交等をいう。)がされている間における人の姿態

本件では、風速店の男性客Bは、自分の性的な興味のために、Aさんが全裸で性的サービスをしている状況を撮影しているので、特に「正当な理由」はありません。
また、特にAさんに承諾を得るでもなく、腕時計に偽装されたカメラで撮影を行っているので、「ひそかに」撮影したという要件も問題なく満たされます。
Bの行為には、性的姿態等撮影罪が成立します。

3 弁護士による被害者支援

本件では、被害に遭った後にすぐに警察に通報し、盗撮された動画も警察が確保しているので、「被害届や告訴状を警察が受け付けてくれない」と言った問題は発生しにくいでしょう。
しかし、被害者の方が警察の取調べに行くことができないなどと言った状況になると、Aさんに刑罰を受けさせるための手続が進まなくなる可能性があります。
そういったことを防ぐために、弁護士としては、被害者の方の心情に寄り添って、事実を確認しつつ、必要であれば取調べに付き添うなどし、被害者の方がしっかりと取調べを受けることができるように全力でサポートさせて頂きます。取調べへの立ち合いについては、こちらの記事もご参照ください。https://higaisya-bengo.com/torisirabe_hitoride/
特に、刑事事件の経験が豊富で、警察や加害者の考えをよく知っている弁護士がサポートすることで、被害者の方としては特に心強くなることでしょう。
また、本件のような盗撮、性的姿態等撮影事件のような性犯罪の事件では、加害者が性犯罪での前科をつけることを嫌う傾向にあることから、加害者の弁護士から示談の申し出を受けることもありますし、被害者側から損害賠償の請求を行うことも考えられるでしょう。
加害者側から示談の申入れがある場合は、加害者と直接やりとりする必要は無いわけですが、自分で対応をするのはなかなかつらいものですし、加害者側弁護士も示談交渉には慣れていることが考えられ、自分が納得いかない示談をすることになるかも知れません。
刑事事件の加害者側弁護の経験も豊富で、被害者弁護の技術にも優れている弁護士のサポートを受ければ、納得がいかない内容で示談をすることを防ぎ、納得のいく示談金、示談条件を獲得できる可能性も上がります。
特に、参考事件のような場合だと、性的行為の状態をそのまま撮影されていること、加害者としても風俗店利用中の行為について処罰されるのを嫌うと考えられることから、交渉次第では比較的高額の示談金と、より有利な示談条件を獲得できるかもしれません。

4 最後に

盗撮の被害に遭われた方、警察、加害者側弁護士に対してどう対応したらよいか迷っている方、自分で事件の対応をするのがつらい方、示談をするなら納得いく条件で示談をしたい方は、ぜひ一度被害者弁護を扱う弁護士にご相談ください。
また、風俗店等の運営関係者の方で、店舗で盗撮事件が発生し、従業員のために弁護士を付けることを検討されている方も、是非被害者弁護を扱う弁護士にご相談ください。
一度被害者弁護を扱う弁護士に相談をすることにより、より良い解決の方向性が見える可能性が高まることでしょう。

【報道解説】元従業員の顧客情報の持ち出し

2023-12-30

元従業員が顧客情報を持ち出したという報道について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。

不正競争防止法

1 報道の内容

勤務していた事務所から顧客の情報を持ち出した疑いで元社員の40代の税理士補助の男が逮捕されました。
不正競争防止法違反疑いで逮捕されたのは、静岡県富士市三ツ沢に住む税理士補助の男(47)です。
警察によりますと、男は2023年4月頃、当時の勤務先だった富士市内の税理士事務所で、60の事業者の顧客情報をUSBなどに複製し、持ち出した疑いがもたれています。
事件は、男が仕事を辞めた後の5月に、被害を受けた事務所が警察に相談したことで発覚しました。
男によって持ち出された情報による被害の有無などは現在調査中だということです。
(令和5年11月27日 静岡放送(SBS)Yahoo!ニュース より抜粋https://news.yahoo.co.jp/articles/ea3def710c20e7ce03448831834c223f3f16f6f1)

2 不正競争防止法とは

不正競争防止法は、不正競争を防止するなどによって、国民経済の健全な発展に寄与することを目的とした法律です。
どのような行為が「不正競争」にあたるかは、不正競争防止法2条1項に書かれています。
今回の報道で問題となるのは、「営業秘密」(同法2条6項)です。
「営業秘密」とは、「秘密として管理されている生産方法、販売方法その他の事業活動に有用な技術上又は営業上の情報であって、公然と知られていないもの」をいい、顧客情報は、この「営業秘密」に該当すると考えられます。

3 顧客情報の持ち出し―加害者側の刑事責任

報道の事件では、当時の勤務先の事務所から顧客情報を持ち出した容疑となっています。
この男性がいた職場で、男性が顧客情報を取り扱うことができる業務に就いていましたが、事務所内から顧客情報を持ち出すことを禁止していたという場合、この男性は、「営業秘密を営業秘密保有者から示された者」として、不正の利益を得る目的や事務所に損害を加える目的があるとき、不正競争防止法21条1項3号に違反し、10年以下の懲役または2000万円以下の罰金(もしくは併科)の範囲で刑事責任を問われる可能性があります。
なお、具体的な事情によっては、適用される罰条が変わる可能性があります。

4 被害者側における代理人活動

まず、報道のような、不正競争防止法違反の事案における被害者となった場合、被害者側としては、捜査機関から捜査協力の依頼や事情聴取を受けることが考えられます。
その際には、弁護士のアドバイスを踏まえて、対応していくことが重要になってきます。
また、報道の事件では、既に刑事事件化しているため、加害者側の弁護人から、被害者側へ示談交渉の連絡が来る可能性があります。
示談に応じるか、応じるとしてもどのような内容であれば応じるかについては、具体的な事案を踏まえて、慎重に検討する必要があり、この点にも弁護士のサポートの必要性があります。
加害者側との間で示談をせず、民事訴訟を提起するという方法も検討する必要があります。損害賠償の請求については、こちらの記事もご参照ください。https://higaisya-bengo.com/isyaryou_songaibaisyoiu/
民事訴訟となった場合のメリット、デメリットを想定し判断していく必要があります。
さらに、不正競争防止法においては、「不正競争によって営業上の利益を侵害され、又は侵害されるおそれがある者は、その営業上の利益を侵害する者又は侵害するおそれがある者に対し、その侵害の停止又は予防を請求することができる。」とされ、差止請求というものもあります(同法3条1項)。
手続も一般の方には馴染みのない手続となりますので、こうした手続を採ることを考えた場合、弁護士のサポートは不可欠のように思われます。

5 最後に

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所では、不正競争防止法違反の被害に遭われた方への支援を行っています。初回の相談は無料ですので、お気軽にお問い合わせください。

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