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被害申告をしたが警察が動いてくれない?!
無理矢理性行為をされた場合における告訴について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。
1 事例
福岡県福岡市博多区で一人暮らしをする女性Xさんは、マッチングアプリで知り合った男性Aと食事に行くことなり、中央区天神にある居酒屋で食事をしました。
その後、Aから、「いまからカラオケに行こう」と言われ、近くのカラオケボックスに入店しました。
しばらく2人で歌った後、Xさんは、突然、Aから押し倒され、Aの片方の手で、両腕を押さえつけられました。
そして、Xさんは、抵抗しようとしましたが、Aには力では敵わず、Aの空いている手で、下着をずらされ、無理矢理性行為をされました。
Xさんは、この件があってから、ずっと塞ぎこんでいましたが、数か月後、実家に帰った際、Xさんの母親が、落ち込んでいるXさんを見て、「何かあったの?」と聞いたところ、Xさんは母親に今回の事件のことを打ち明けました。
Xさんと母親は、Aを処罰してもらいたいと考えています。
2 Aの刑事責任について―不同意性交等罪の成立
Aは、Xさんに対し、その両腕を押さえつけるなどの「暴行」を用いて、抵抗できない状態、すなわち同意しない意思を全う(まっとう)することが困難な状態にさせ、性交をしています。こうしたAの行為は、不同意性交等罪(刑法177条1項、176条1項1号)が成立しますので、5年以上の有期拘禁刑(拘禁刑となるまでは懲役刑)の範囲で、Aの刑事責任を問うことができる可能性があります(不同意性交等罪についてはこちらの記事もご参照ください。https://keiji-bengosi.com/gokan_kyoseiwaisetsu/)。
3 告訴について
通常、犯罪の被害に遭われた方が、警察に対し、被害届を出すなどして、警察が捜査を開始することになります。被害届は、通常、警察の方で作成してくれます。
しかし、今回の事例のように、Xさんの被害申告が、事件から一定期間経過後になされたものであるなどの場合、警察が、被害届だけでは捜査に着手してくれないこともあります。
そうした場合には、告訴(刑事告訴とも呼ばれます。刑事訴訟法230条)をするということ考える必要があります。
告訴とは、被害者その他法律上告訴権ある者が検察官または司法警察員(ごく簡単にいえば一定の警察官のことです)に対し、犯罪事実について犯人の処罰を求める旨の意思表示をすることをいいます。
告訴を行うことで、告訴を受けた司法警察員は、速やかに書類及び証拠物を検察官に送付しなければならず(刑事訴訟法242条)、捜査機関の捜査を促すことに繋がります。
告訴は、口頭でもできますが、通常は告訴状という文書を提出します。被害届との違いなど、告訴についての詳細はこちらの記事でも紹介しています(https://higaisya-bengo.com/hanzaihigai_attabaai_taisyo/)。
4 告訴における代理人活動
犯罪被害者であるXさんが告訴をしようと考えた場合、告訴状を作成するといった形式的な問題もありますが、警察が捜査に着手してくれないおおよその理由が考えられる場合には、その点に関して、別途、Xさんの側で、たとえば、事件の概要だけではなく、被害申告が遅れた理由などを説明するような文書を準備する必要があることも考えられます。
どのような文書を準備すべきかについては、弁護士のアドバイスが必要になってきます。
また、警察が捜査を開始した後も、事情聴取が行われることになりますが、事情聴取での対応を考えていく必要もあります。
捜査中に、Aから、示談の申入れがあることも考えられますので、それに対する対応も考える必要があります。
さらに、Aが刑事裁判に掛けられることになった場合、Xさんが刑事裁判に関与していくかどうかも検討する必要があります。
5 最後に
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所では、不同意性交等の被害に遭われた方への支援を行っています。初回の相談は無料ですので、お気軽にお問い合わせください。
不同意わいせつ罪の被害を相談。被害届の受理や示談交渉といった弁護士による被害者支援
不同意わいせつ罪の被害に遭ってしまった場合、弁護士が行える被害者支援について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。
参考事件
Aさんは職場の上司であるBさんに誘われ、仕事終わりに2人で食事に出かけました。Aさんは出先で泥酔してしまったBさんをタクシーに乗せようとしましたが、その際にBさんから不意に抱き着かれました。
(この参考事件はフィクションです)
不同意わいせつ罪
参考事件でAさんがBさんにされた抱き着くという行為は、不同意わいせつ罪(刑法176条)に該当する可能性があります。不同意わいせつ罪に関する規定は、令和5年の刑法改正によって新設されています(詳細については個別記事をご覧ください。https://osaka-keijibengosi.com/rape/)。
刑法が改正される前は、わいせつ行為を罰する規定として、強制わいせつ罪や準強制わいせつ罪が存在していました。もっとも、強制わいせつ罪や準強制わいせつ罪が適用されるには、単にわいせつ行為があっただけでは足りず、加害者による暴行や脅迫の事実、被害者の心神喪失や抗拒不能が証明される必要がありました。また、たとえ暴行や脅迫があった事実を証明できたとしても、その暴行や脅迫によって被害者の反抗が著しく困難になったという要件も求められていました。
そのため、わいせつ行為の被害に遭っていても、暴行や脅迫の事実やその程度に関する証明ができずに、警察で被害届が受理されない、検察官による起訴ができないといったケースも散見されました。
刑法改正により新設された不同意わいせつ罪は、このような弊害に対応すべく、①暴行や脅迫のように従来の強制わいせつ罪、準強制わいせつ罪でも捕捉できていた場合に加えて、新たに「同意しない意思を形成し,表明し又は全うするいとまがない」(刑法176条1項5号)、「経済的又は社会的関係上の地位に基づく影響力によって受ける不利益を憂慮させる」(同項8号)といった行為類型を追加して罰則の対象を拡大するとともに、②「同意しない意思を形成し,表明し若しくは全うすることが困難(刑法176条1項本文)」であれば犯罪が成立するようになっています。
それゆえ、従来の強制わいせつ罪や準強制わいせつ罪では被害届の受理や検察官による起訴を断念せざるを得なかったケースでも、加害者を処罰できる可能性が拡大したといえます。
弁護士による被害者支援
もっとも、刑法176条は不同意わいせつ罪が成立する場合として複数の行為類型を列挙しているため、自分が受けた被害が果たして不同意わいせつ罪に該当するのかを判断するのは容易ではありません。警察に被害届を提出しようにも、不同意わいせつ罪の要件を満たしているかを意識して事情を説明しなければ、立件が困難だという理由で被害届が受理されないということにもなりかねません。
このような場合、弁護士による被害者支援を受けることが重要です。刑事事件の経験が豊富で、被害者支援にも長けた弁護士によるサポートを受けることができれば、被害届も受理されやすくなります。警察へ事情を説明しに行く際に、弁護士が同行することもできます。法的知識に基づいたアドバイスにとどまらず、犯罪被害に遭われた方の心情に配慮したサポートも期待できるため、一人ですべてを対応する場合と比べ、心強さには大きな差があります。
不同意わいせつ罪の罰則は「6月以上10年以下の拘禁刑に処する」と規定されています。つまり、加害者が刑事処分を受ける場合、必ず刑事裁判を行うことになります。刑事裁判の局面でも、弁護士が被害者の方をサポートできる場面は多岐にわたります。一例を挙げると、証人尋問や意見陳述のために出廷した被害者の方に同席する、判決を下す裁判官へ被害感情をしっかりと伝えるために書面の作成や代読を行うといったことが可能になります。また、検察官とのやりとりをスムーズに行う、加害者側の弁護人との示談交渉を行うといった、裁判外での対応もサポートできます。
刑事裁判が行われる場合、被告人(加害者)には必ず弁護人がつきます。これに対して、被害者には一定の場合を除き、自動的に弁護士がつくことはありません。しかし、法律の知識や制度の十分な理解がなければ、どのような手続が行われているかもよく分からないまま、気がついたときには加害者の処分が決まっているということにもなりかねません。弁護士による被害者支援の重要性はますます高まっているため、犯罪被害に遭ってしまった場合は、速やかに弁護士へ相談することが大切です。弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所では、犯罪被害に遭われた方へ向けた無料法律相談を実施しております(https://higaisya-bengo.com/soudan/)。まずは弊所までお電話ください。
不同意性交等の被害に遭ったら
不同意性交等の被害にあった場合の対応方法などについて、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。
不同意性交等とは
令和5年7月13日より改正刑法が施行され、これまで強制性交等と呼ばれていた犯罪が「不同意性交等」になりました。
不同意性交等罪は、これまで強制性交等として処罰されていた①暴行脅迫を用いた性交等に加えて、
②心身障害
③アルコールや薬物
④睡眠その他意識が明瞭でない状態
⑤同意しない意思を形成し、表明し又は全うするいとまがないこと
⑥予想と異なる事態に直面して恐怖させ、又は驚愕
⑦虐待に起因する心理的反応
⑧経済的又は社会的関係上の地位に基づく影響力によって受ける不利益の憂慮
などの行為によって被害者が同意しない意思を形成し、表明し若しくは全うすることが困難な状態にさせ又はその状態にあることに乗じて性交等をした場合も処罰の対象となりました。
また、性交等には、陰茎を膣に挿入する性交行為だけでなく、口腔性交や肛門性交も含まれており、さらに、口腔、膣、肛門に身体の一部又は物を挿入する行為も含まれることになっています。
そのため、例えば治療と偽って器具を膣に挿入する行為も不同意性交等となります。
さらに、性交同意年齢が16歳に引き上げられました。
強制性交等の場合、13歳未満の児童に対して性交等をした場合には、仮に暴行脅迫を用いていなくても強制性交等となりましたが、不同意性交等では、16歳未満の子に性交等をした場合には、同意があったとしても不同意性交等になります。
なお、相手が13歳以上16歳未満の場合には、相手との年齢差が5歳以上ある場合が処罰対象となります。
不同意性交等の被害に遭ったら
不同意性交等の被害に遭った場合、被害者として取りうる方法は、大きく分けて二つあります。
一つが警察に被害届の提出や告訴を行い、刑事事件化することです。
もう一つは、加害者に直接損害賠償を請求することです。
この二つの方法は、いずれか一方を行うこともできますし、二つを同時に行うこともできます。
①刑事事件化する場合
刑事事件化する場合には、警察に被害届の提出や告訴を行うことになります。
被害届と告訴の違いは、加害者の処罰を明示的に求めるかどうかという点と、捜査を開始することが義務化されるかという点、検察官への送致が義務化されるかという点で異なります。
いずれの場合でも、警察に受理させるためにはそれなりの証拠が必要です。
たとえば、被害に遭った直後に親や友人に対して被害にあったことを相談していたり、産婦人科などの診察を受けていたりしているか、加害者との関係性ややり取りの内容などです。
こういった証拠を集めておかないと、警察はなかなか被害届などを受理してくれません。
そのため、警察に受理してもらえるように、十分な証拠を事前に集めておきましょう。
また、被害届が受理された後も事情聴取に協力したり、場合によっては刑事裁判に協力する必要もあります。
こういった証拠収集や事情聴取、裁判への対応については、専門家である弁護士に依頼して代理人として活動してもらうこともできます。
②損害賠償を請求する場合
加害者が誰かはっきりしている場合には、直接損害賠償を請求することができます。
いきなり民事裁判を起こすこともできますし、まずは話し合いで賠償を求めることもできます。
いずれの場合でも、加害者と直接対応するのは被害者にとってかなりの精神的苦痛を伴うものになりますので、弁護士に代理人として交渉等にあたってもらいましょう。
加害者から示談の打診があった場合
不同意性交等の被害に遭った場合に、加害者側から示談の打診があることがあります。
示談のメリットは、金銭賠償を早期に受けることができること、裁判で認められる賠償額よりも高額な賠償を受けられる可能性があること、様々な条件(接触禁止、口外禁止など)をつけることができることが挙げられます。
一方、デメリットとしては、示談が成立した場合、加害者側が罪に問われなかったり、受ける刑事罰が軽くなったりする可能性があります。
示談交渉においては、示談に応じるタイミングも重要ですし、その内容もしっかりと確認しないと思ってもいない不利益を受ける場合もあります。
また、交渉は加害者本人又はその代理人とすることになりますが、主張に食い違いがあったり、金額面や条件面で折り合いがつかなかったりして、交渉が長くなり二次被害を受けてしまう場合もあります。
そのため、示談交渉の打診があった場合には、被害者としても弁護士に依頼して交渉の窓口となってもらいましょう。
子供の性被害
子供の性被害が多発
近年、子供に対する性被害が多発しています。
もっとも、これは最近になって急増したのではなく、発覚する事件が増えたことも一因といえます。これまで子供に対する性被害があまり発覚しなかったのは大人とは違う子供ゆえのいくつかの原因があります。
子供自身が被害を受けたことを自覚していない
子供は性被害を受けても、自分が被害を受けたとは認識していないことが多いとされています。
子供は知識が十分ではなく、自分が何をされているか理解できていないことが多いです。
また、大人がしていることなので、悪いことではないだろうと受け止めることもあります。保育園や学校の先生、親戚の人など信頼している大人にされた場合は、よりこのように受け止めるでしょう。
大人に訴えても聞き入れてくれない
子供でも性被害を受けて違和感を感じたり、気持ち悪いと思い、親や先生といった身近の大人に相談することがあります。そうしたときでさえ、親や先生は「何かの間違いだ」「大したことじゃない」などと言って子供の訴えを否定することがしばしば見受けられます。大人からすれば、子供は未熟だと思っているので、子供の勘違いだと思うのでしょう。また、知り合いや学校の教師など信頼できる立場の人が子供を性の対象にしたり、性犯罪のようなことをするはずがないと思い込むこともあります。特に深刻なのが、パートナーが再婚相手の子供に対して性加害をした場合です。このようなときでも、一家の離散を避けるために被害がなかったようにするでしょう。こうした対応をされてしまうと、子供もおかしいと思っても相談しなくなってしまいます。
捜査が進まない
親などが子供の訴えを聞いて、警察に被害届けを出したとしても、捜査が進展するとは限りません。
大人が被害者の場合にも当てはまりますが、性加害は周囲に誰もいないような状況で行われることが多いです。そのため、警察も当事者である子供を取り調べてその話を聞かなければなりません。これは大人でも大変苦痛を伴うものです。子供にはより厳しい苦痛となるでしょう。
また、被害を受けた事実を正確に認識し、記憶したうえで、供述することは容易ではありません。ショックでそもそも被害状況を覚えていないことがありますし、被害のショックを和らげるために無意識のうちに記憶を変容させていることもあります。被害事実を正確に記憶していたとしても、聴き取りをする人が正確に認識できるよう供述することは非常に難しいことです。子供が供述するとなると、一層困難でしょう。そのため、何度も取り調べを繰り返すことになり、被害者であるはずの子供にはさらなる負担となってしまいます。このような負担を避けるため、警察への被害届を断念することもあります。
このようにして苦労して被害者の供述が取られたとしても、これで犯人を処罰できるとは限りません。被害者供述が信用できるものでなければ、証拠として不十分とされます。証拠の信用性の判断に当たっては、供述の一貫性や迫真性が重視されます。供述の内容が首尾一貫していたり、犯行状況が目に浮かぶほど迫りくるものである必要があります。ところが、既に述べたように、被害者であっても、一部の記憶が失われたり、変容している可能性があります。また、正確に記憶していてもそれを上手く表現するのは難しいです。さらに、複数回に渡って取り調べを受けても一貫した供述するのは容易ではありません。その結果、供述が一貫していなかったり、曖昧なものになってしまいます。このような被害者供述は信用できないとされてしまうおそれが十分にあります。
もちろん被害者供述以外の証拠があるかどうかも重要となります。スマートフォンで子供の性器が露出している場面を撮影したり、児童買春に当たってのSNSでの事前のやり取り等、自分の犯罪の証拠ともいえるような画像を残している事件もあります。しかしながら、このような客観証拠がなければ、被害者供述以外では被疑者(容疑者)供述しか証拠がないことが多々あります。被疑者も犯行を認めているならまだしも、犯行を否認している場合は、その弁解を排斥できるかどうかが重要となります。ここで被害者供述が十分に信用できないとなれば、被疑者が起訴されて被告人となっても、有罪とすることはできません。結局、検察官が、有罪にできる見込みがないとして、不起訴としてしまうことが多々あります。
一方で、起訴されることは加害者側にとってもリスクです。特に否認したまま有罪となると、長期間の実刑となる可能性があります。そのため、加害者側も、詳細はおいて被害者側と示談をして不起訴を目指します。その際、加害者側の弁護士から、「示談しないと裁判で証人尋問されることになる」などと言われる可能性があります。そのため、やむを得ず示談に応じたり、低廉な金額で泣き寝入りする虞があります。また、加害者を許すつもりがないのに、示談書に「宥恕する」など加害者を許すことを意味する条項を盛り込まれてしまうこともあります。
厳しい裁判
検察官が起訴したとしても、それで終わりではありません。捜査段階では認めていても、起訴されて被告人となってから否認に転じることはしばしばみられます。この場合、被害者供述を録取した供述調書は証拠とはならず、被害者本人が証人として、出廷しなければなりません。近年では、被告人や傍聴席から証人が見えないようにする遮蔽措置が採られたり、保護者の同伴が認められるなど、被害者への配慮もなされてきていますが、それでも尋問対象となるプレッシャーは相当なものとなります。特に、弁護人から、性的な事項も含め私生活について詳細に訊かれたり、侮辱的な反対尋問をされることがあります。このようなことは大人でも非常に苦しいことですが、子供となると一層厳しいものとなるでしょう。
法廷における証人の証言が信用できるか判断する際も、供述の一貫性や迫真性が重視されます。警察の取調べよりも厳しい状況で、裁判官が信用できるような証言をすることは困難でしょう。
このように、起訴されて裁判となっても、子供や家族が酷く傷付けられることが多くあります。このようなことを恐れて、被害届を取り下げたり、低廉な示談金で示談に応じて泣き寝入りすることも多々あります。
子供の被害を正しく訴えるには
このように子供に対する性犯罪が処罰されるまでには、多くの障害があります。万が一子供が被害に遭ったときでも被害を止め、加害者に責任を負わせるためには、様々な段階で、適切な対応が必要です。
子供の話をよく聞く
子供が性被害を訴えたときは、それを頭ごなしに否定するのではなく、まずは話を聞くことが大切です。その際も、問い詰めたりせずに、何が起きたのか事実を話してもらうようにしましょう。話してくれた後も、「なぜ早く言わなかったのか」とか「それは違う」などと言わずに、「よく話してくれたね。辛かったね」と寄り添うことが大事です。
被害の届け出
上でも述べたとおり、取調べは子供にとって過酷なものです。警察に被害を訴えるにあたっては、親の方で子供の話を詳しく聞いておいて、整理しておきましょう。取調べは、できる限りリラックスした状態で受けられるよう、日時を調整しましょう。出来る限り同席して、休憩もしっかりとるようにして、子供へのプレッシャーを軽減するように心がけましょう。
また、同種の被害がないかどうか近隣の方々と情報共有をすることも重要となります。同種の被害があって複数の被害者が供述すれば、供述の信用性も高まります。
弁護士への相談
警察や検察、加害者側との示談交渉や裁判への対応は大変困難です。このような状況では、弁護士に依頼することも検討するべきです。被害者となった子供の供述を整理して警察や検察に報告書を提出します。警察や検察の取調べに際しても、事前に面談して取調べにおいて供述する内容の確認などを行います。
また、加害者側との示談交渉も被害者の代理人たる弁護士の役割です。安易に示談に応じるのではなく、損害を償わせるのに相応しい金額で示談を締結させます。また、示談をしても、「宥恕」など加害者を許す意味の文言を入れないようにすることもできます。
強制わいせつ罪などの重大事件においては、被害者やその法定代理人(被害者が未成年の場合は保護者です)や被害者から依頼を受けた弁護士は、犯罪の性質や被告人との関係その他の事情を考慮し相当と判断されれば、刑事裁判の手続に参加することができます。被害者や被害者代理人の弁護士も、被告人に質問したり、被告人側の情状証人などの証人に尋問することができます。また、事実や法律の適用について意見を述べることができます。この手続きを利用することで、被害の実態を裁判官により適切に伝えることが期待できます。
また、被告人が否認している場合は、被害者が証人尋問を受けることになります。被害者代理人でも公判廷において犯罪事実に関することについて証人尋問をすることはできませんが、公判前に検察官が行う証人テストやそれ以外の機会にも証人尋問について打合せをして、厳しい証人尋問にも対応できるようにしていきます。
刑事裁判で被告人に有罪判決が下され、それまでに示談などで加害者から損害賠償金の支払いを受けていないのであれば、損害賠償命令制度を利用して加害者に対する損害賠償命令を求めることもできます。
このように、弁護士は被害の届け出から刑事・民事事件の終結まで力になることができます。
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