弁護士以外に依頼する危険性

自宅で心配した若い女性のポートレート

犯罪被害に遭われた方々の考えとして、「なるべく費用を払いたくない」、と言うのがあるかと思います。そういった考えになってくると、どうしても弁護士に依頼をする、ということをためらってしまうと思います。自分自身で解決が出来そうなので弁護士に依頼しない、ということであればまだ問題はないと思いますが、弁護士ではない人に示談交渉を依頼する場合、以下のように非常に大きなデメリットもあります。
今回は、弁護士以外に依頼をして示談交渉を行ってもらう場合の危険性について解説していきます。

1 参考事件

名古屋市内に住むAさんは、知り合いの男性Bとお酒を飲んでいました。お酒をたくさん飲んでしまっていたので、歩けないというわけではないですが気持ち悪くなったり、頭がボーッとしているような状態になっていました。Aさんは、知り合いの男性Bから誘われて、B宅に行って休むことになりました。その日はB宅で寝るようなことになってしまいましたが、ふと起きたところ、BがAさんの胸やお尻を揉んだりさわったりしているような状態でした。Aさんは、大声を出してBをはねのけ、B宅を飛び出しました。
Aさんは、不同意わいせつに遭った次の日、友人Cに前日の出来事を相談しました。すると、友人Cは、弁護士ではないが法律や交渉ごとに強いというDさんを紹介してくれました。Dが、「弁護士はすごく高いお金がかかるし、世間知らずだから交渉もうまくできない。でもオレだったら取れた金額の2割でいいし、弁護士みたいに世間知らずじゃないから思い切った手段もとれる。」と言ってきたので、Aさんは交渉事を弁護士に頼むか、Dに頼むか考えることにしました。
(この参考事件はフィクションです。)

2 弁護士でない人に依頼をする危険性

上記事例について、昔で言うところの準強制わいせつであったり、今でいうところの不同意わいせつに当たるのはおそらく間違いないでしょう。
また、Dに交渉を依頼してうまく損害賠償金を支払わせることができれば特に問題はありません。Bにも「不同意わいせつ行為をした」という大きな弱みがありますから、損害賠償金を支払わせたあともBからトラブルが露見するリスクは比較的少ないと言ってもいいかもしれません。
しかし、よく考えていけば、以下のようなトラブルが考えられます。

⑴ そもそも示談書などの効力が怪しくなる
Dは結局弁護士などでは全くないので、示談書の作成も正しく行えない可能性があります。そうなると、あとで法的効力について争いが出るかもしれません。

⑵ 交渉自体を拒否されるおそれがある
犯罪行為を行っているとはいえ、Bからしたら弁護士でも何でもないDとの交渉は怖いと言えます。仮に、DがAさんの友人であると紹介するとしても、やはり「なぜただの友人がこんなことの交渉に出て来るんだ?」という疑問は消えません。その上、B側に弁護士がついた場合には、交渉自体を拒否されてしまう可能性はさらに高くなります。

⑶ 恐喝や弁護士法違反その他の共犯になる可能性がある
通常、交渉を拒否されてしまうことについては、Dも想定しています。そうなると、Dはいかに交渉を拒否させないか考えるようになります。一番典型的なのは、「交渉を拒否すると怖いぞ」と思わせることでしょう。そのため、Dは一見して怖そうに見える外見をして現れるとか、しきりに「警察に行けば実刑になるかも知れない」などと過度に刑事事件のリスクをアピールするとかを行います。同時に、弁護士に依頼されないように、「弁護士に依頼しても高いお金を取られるだけだから止めた方がいい」と言ったり、「弁護士に頼むとは誠意がないということだな」と言ったりします。
ここまでであればまだ法に触れるか触れないかギリギリのところだと思います。しかし、場合によっては、「お前の住所も勤務先も全部知っている」であるとか、「私も割と顔が広いのでね。その筋の人たちとも仲良くしているんだよ」であるとか、「示談に応じないなら警察に行って事件をお前の家族や職場にばらす」というようなことを言ったりします。こうなると、恐喝行為にあたる可能性が高くなります。そもそも、弁護士でもないのに報酬をもらって交渉すること自体が弁護士法第72条違反の非弁行為になります。
AさんがDに交渉を頼んでしまったとすると、上記の恐喝や非弁行為の共犯になってしまう可能性があります。法律を知らなかったという言い訳は通用しませんし、「恐喝までするとは思っていなかった」という言い訳も通る保証はありません。
Bには不同意わいせつを行った弱みがあるのだから、警察には駆け込むことが無い、と思われるかもしれません。しかし、自首をすれば刑が軽くなるかもしれない、というのはBも知らないわけではないでしょう。その上、Bが腕の良い弁護士に依頼した場合、絶妙なタイミングで自首をしてきます。Bが自分で警察に行くことはない、という想定は非常に危険です。

⑷ あとから弱みを握られて、恐喝などに遭う可能性もある
Dのような者については、弁護士のように倫理規定も無ければ守秘義務、利益相反行為の禁止なども一切ありません。というか、Dはそういった概念があること自体知らないかも知れません。資格などもありませんから、多少の刑事罰を受けても失うものはありません。
Aからしても被害を受けたことは知られたくない情報であり、その情報をDのような者に渡すことによって、恐喝のネタにされることがあります。
さらに、Aさんの個人情報が悪い人たちに流され、悪用されるということもあります。Dのような者に依頼をしたこと自体や、⑶のように恐喝や弁護士法違反の共犯になったという弱みを作られることで、恐喝などに遭う可能性、その後Dの犯罪行為に協力される可能性もかなり高くなるでしょう。

⑸ 逃げられる
Dのような人については、資格も何もないわけですから、しっかり仕事をしなくても失うものはありません。
したがって、交渉が難しくなったときに逃げられる可能性もあります。

⑹ 法外な報酬を請求される
Dのような人は、報酬についても適正な額に止める意味はありません。
⑶とも関連しますが、Aさんにも弱みが出て来るので、Dとしては高額報酬を請求しても問題ない、という考えになりやすいです。

3 弁護士による交渉ではうまくいかないのか

それでは、弁護士に交渉を依頼した場合、弁護士は世間知らずなので交渉は上手くいきにくいのでしょうか。
それは、弁護士によると思います。少なくとも弊所の弁護士に関しては、刑事事件の加害者弁護の経験がベースにありますから、Dのような世間知らずと言う批判は一切当たりません。
さらに、弁護士であれば警察に被害届を出すときに同席するなどして警察が動いてくれる可能性もさらに上がりますし、特に加害者弁護の経験があれば刑事手続がどのようになるかよくわかっているので、交渉力のベースとしてはかなりのものがあると言えます。
加えて、刑事手続に乗った場合のプライバシーについても、被害者のプライバシーについてはかなりの程度保護されますから、近しい人に事件の被害に遭ったことが分かってしまう可能性も低いです。
もちろん、交渉が難しい状況になったとしても不当に職務を放棄することはありませんし、最後まで交渉成立の糸口を探ります。
たしかに、弁護士が脅迫まがいのことをすることはできませんし、事案の内容を大きく外れた示談金の要求をすることもできません。
しかし、弁護士でない者が脅迫まがいの方法を使って事案の内容を大きく外れた示談金の要求をしても、結局加害者側が処罰を受ける覚悟を決めればそのような示談金は獲得できません。
結局、弁護士でない者に報酬を払って交渉を依頼するのに、メリットはありません

4 まとめ

犯罪被害の交渉は、一度弁護士にご相談ください。
弁護士ではない人に交渉を依頼してしまうと、交渉自体が成立しないだけでなく、ご自身が思わぬ犯罪に巻き込まれてしまう可能性があり、大変危険です。
相談に関しては無料ですので、是非一度お気軽にご相談ください

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