刑事裁判における犯罪被害者の保護

犯罪被害者は、公開の法廷で加害者や傍聴人の目にさらされることに恐怖を覚えます。
そのため、被害者が証人として出廷することが難しくなり、検察官が起訴を断念せざるを得ないこともあります。
もっとも,法はそのような事態に備えて、法廷で犯罪被害者が加害者や傍聴人の視線から守られるために、各種制度を設けています。

証言

<遮蔽>

裁判所は、証人を尋問する場合において、犯罪の性質、証人の年齢、心身の状態、被告人との関係その他の事情により、証人が被告人の面前において供述するときは圧迫を受け精神の平穏を著しく害されるおそれがあると認める場合であって、相当と認めるときは、被告人とその証人との間で、一方から又は相互に相手の状態を認識することができないようにするための措置を採ることができます。証人尋問や遮蔽以外の被害者保護の措置については、法務省のホームページでも紹介されています。https://www.moj.go.jp/keiji1/keiji_keiji11-4.html
具体的には、被告人と証人の間に衝立を設けることになります。
検察官及び被告人又は弁護人の意見を聴いたうえで判断されることになります。
被告人から証人の状態を認識することができないようにするための措置については、弁護人が出頭している場合に限り、採ることができます。

裁判所は、証人を尋問する場合において、犯罪の性質、証人の年齢、心身の状態、名誉に対する影響その他の事情を考慮し、相当と認めるときは、傍聴人とその証人との間で、相互に相手の状態を認識することができないようにするための措置を採ることができます。
この場合も、傍聴人と証人の間に衝立を立てることになります。
検察官及び被告人又は弁護人の意見を聴いたうえで判断されることになります。

上記の2つを併用し、証人が被告人にも傍聴人にも見られないように衝立が設置されることが多いです。
後に述べるビデオリンク方式による証人尋問においても、証人の映像が被告人や傍聴人から見られないようにできます。
この制度は、被害者等の意見の陳述や被害者参加人にも準用され、利用することが可能となっております。意見陳述や被害者参加については、こちらの記事もご参照ください。https://higaisya-bengo.com/keijisaiban_sanka/#3%E3%80%80%E5%BF%83%E6%83%85%E7%AD%89%E3%81%AB%E9%96%A2%E3%81%99%E3%82%8B%E6%84%8F%E8%A6%8B%E9%99%B3%E8%BF%B0

<ビデオリンク方式>

裁判所は、対象となる者を証人として尋問する場合において、相当と認めるときは、裁判官及び訴訟関係人が証人を尋問するために在席する場所以外の場所であって、同一構内にあるものにその証人を在席させ、映像と音声の送受信により相手の状態を相互に認識しながら通話をすることができる方法によって、尋問することができます。
同じ裁判所内でライブ映像で会話をしながら尋問することになります。
対象は、
・不同意わいせつ、不同意性交等、監護者わいせつ及び監護者性交等、不同意わいせつ等致死傷、十六歳未満の者に対する面会要求等、営利目的等略取及び誘拐・人身売買(わいせつ又は結婚の目的に係る部分に限る)、被略取者引渡し等、強盗・不同意性交等及び同致死の罪又はこれらの罪の未遂罪の被害者
・児童福祉法違反、児童ポルノに係る行為等の規制及び処罰並びに児童の保護等に関する法律違反、性的な姿態を撮影する行為等の処罰及び押収物に記録された性的な姿態の影像に係る電磁的記録の消去等に関する法律違反の一部犯罪の被害者
・そのほか、犯罪の性質、証人の年齢、心身の状態、被告人との関係その他の事情により、裁判官及び訴訟関係人が証人を尋問するために在席する場所において供述するときは圧迫を受け精神の平穏を著しく害されるおそれがあると認められる者
となります。
検察官及び被告人又は弁護人の意見を聴いたうえで判断されます。

裁判所は、証人を尋問する場合において、相当と認めるときは、同一構内以外にある場所に証人を在席させ、映像と音声の送受信により相手の状態を相互に認識しながら通話をすることができる方法によって、尋問することができます。
同じ裁判所内でない場所からライブ映像で会話をしながら尋問することになります。
対象は、以下の場合となります。
・犯罪の性質、証人の年齢、心身の状態、被告人との関係その他の事情により、証人が同一構内に出頭するときは精神の平穏を著しく害されるおそれがあると認めるとき。
・同一構内への出頭に伴う移動に際し、証人の身体若しくは財産に害を加え又は証人を畏怖させ若しくは困惑させる行為がなされるおそれがあると認めるとき。
・同一構内への出頭後の移動に際し尾行その他の方法で証人の住居、勤務先その他その通常所在する場所が特定されることにより、証人若しくはその親族の身体若しくは財産に害を加え又はこれらの者を畏怖させ若しくは困惑させる行為がなされるおそれがあると認めるとき。
・証人が遠隔地に居住し、その年齢、職業、健康状態その他の事情により、同一構内に出頭することが著しく困難であると認めるとき。
検察官及び被告人又は弁護人の意見を聴いたうえで判断されることになります。

これらの方法により証人尋問を行う場合において、裁判所は、その証人が後の刑事手続において同一の事実につき再び証人として供述を求められることがあると思料する場合であって、証人の同意があるときは、その証人の尋問及び供述並びにその状況を映像及び音声を同時に記録することができる記録媒体に記録することができます。
検察官及び被告人又は弁護人の意見を聴いたうえで判断されます。

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