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アニメイト関連会社の元社長が特別背任の疑いで逮捕されたという報道記事をもとに、特別背任とはどのような罪か、会社役員が特別背任を犯した場合に会社としてどのような対応をとるべきかについて、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。
ニュースの概要
漫画やアニメのグッズ販売会社「アニメイト」の関連会社に約1億8000万円の損害を与えたとして、警視庁捜査2課は令和5年11月15日、同社元社長のAを会社法違反(特別背任)容疑で逮捕した。
逮捕容疑は社長在任中の2019年5月〜22年4月、約70回にわたって人気カードゲーム「遊戯王」や「ポケットモンスター」などの中古トレーディングカードの仕入れを装い、経理担当者に指示して現金計約1億8000万円を関連会社から知人の口座に振り込ませた疑い。
捜査2課によると、送金された現金は数%の手数料を知人が得た上で、9割以上がAの個人口座に還流していた。同課は高級車の購入や家賃、クレジットカードの支払いなど、Aの私的な支払いに充てたとみている。
(日本経済新聞令和5年11月15日のWEB記事https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUE152LX0V11C23A1000000/より抜粋、一部改変)
特別背任とは
特別背任罪とは、取締役など会社に対して重要な役割・義務を負う人物が、自己もしくは第三者の利益を図り、または会社に損害を与える目的で任務に背く行為をし、会社に財産上の損害を負わせた場合に成立する犯罪です。
取締役等による特別背任罪が成立した場合には「10年以下の懲役」もしくは「1000万円以下の罰金」に処せられるか、これらが併科されます。
刑法の背任罪よりも重い刑罰が定められており、行為者が会社の取締役や支配人などに限られていることが特徴です。背任罪については、こちらの記事もご参照ください。https://osaka-keijibengosi.com/haininzai/
今回のニュースのAは、会社の社長ということなので、代表取締役であったといえます。
そして、代表取締役が、知人及び自己の利益を図るために、架空の仕入れに基づいて会社財産を支出させ、会社に約1億8000万円の損害を負わせたということから、Aには特別背任罪が成立する可能性が高いといえるでしょう。
特別背任の被害に遭ったら
取締役等による特別背任の事実を発見した場合、会社としては①刑事告訴をする、②損害賠償を請求するという方法が考えられます。
①刑事告訴と②損害賠償請求は両立しますので、同時に行うこともできます。
①刑事告訴をする場合には、警察などの捜査機関に対して、告訴状を作成し、犯罪が行われたことを疑わせるに足りる十分な証拠を告訴状とともに提出することが一般的です。
告訴状の作成や証拠の収集のためには、内部調査として関係者への聴き取りや請求書・領収書・会計帳簿などの資料を精査するなどの必要があります。
そういった内部調査を十分に行ったうえで、捜査機関に捜査を開始してもらえるような告訴状を作成する必要があります。
しかし、内部調査だけでも膨大な時間と労力がかかりますし、告訴状も特別背任にあたるのか、それとも詐欺などの他の罪に当たるのか、特別背任にあたるということをどのように説明したらよいのかなど、専門的な知識が必要になります。
そのため、内部調査や告訴状の作成には、専門家である弁護士に担当してもらうのがよいでしょう。
②損害賠償を請求する場合には、いきなり訴訟を提起するよりも、直接取締役等に会社から賠償を請求することをまず考えるべきです。
民事訴訟を提起する場合には、訴状の作成、証拠の収集・提出、裁判への参加などとてつもない労力や費用が必要になりますし、時間も1年近くかかってしまいます。
そのため、まずは任意交渉で賠償を求めていくべきでしょう。
しかし、取締役等が事実を争ったり、支払い意思を示してくれなかったりという場合には、どうしても訴訟にせざるを得ず、場合によっては取締役の財産を差し押さえるなどのことも考えなければならなくなる可能性があります。
そういったときに、訴訟を提起しても費用倒れにならないかを検討したり、訴訟の前に今一度任意交渉をしたり、訴訟の遂行を担当するのが弁護士です。
専門家である弁護士に相談することで、任意交渉の仕方や訴訟をすべきかどうかについてのアドバイスももらえます。
刑事告訴や損害賠償を請求する前に
会社が特別背任の被害に遭った場合には、会社として加害者である取締役等になにがしかの罰を与えたいと思うと思います。
しかし、刑事告訴や損害賠償請求訴訟をする場合には、それによって会社自体が受ける影響も考慮する必要があります。
たとえば、今回のニュース記事のように、刑事告訴をして取締役等が逮捕されると、会社名を含めて報道に出てしまう可能性があります。
そのため、会社の信用が失われてしまい、会社経営に不利に働くかもしれません。
また、今回のニュースでは、会社社長が個人で得た利益について、確定申告をしていないことから、国税局からも法人税法違反等で告発を受けています。
法人税法違反で社長が起訴され有罪となると、会社も両罰として罰金刑を受け、会社が罰金を支払わないといけなくなる可能性があります。
このように、刑事告訴や損害賠償請求をしようとする場合には、それによって会社が被る悪影響についても検討しておく必要があります。
会社として、どのような対応をとるのが一番良いのかについて、専門家である弁護士に相談して、様々なリスクやメリットデメリットを検討してもらい、よりよい解決を目指してもらいましょう。弊所で実施しております無料法律相談の詳細については、こちらの記事をご覧ください。https://higaisya-bengo.com/soudan/