ニュースなどを見ると、被害者が法廷で被告人に質問をしたり、意見を述べたり、場合によっては代理人の弁護士と記者会見をするなどしているので、刑事裁判に被害者が参加できることがあることは一般の方にも大きく知られているのではないかと思います。刑事事件の経験が豊富な弊所でも、被害者参加が行われる事件を扱っております。
今回は、実際に被害者参加が出来る人数について説明をしたいと思います。
このページの目次
1 参考事件
愛知県内に住む45歳のAさんは、名古屋市内で歩道を歩いて進行中、いきなり自動車が猛スピードで突っ込んできて衝突され、死亡しました。
その後、数か月経って自動車の運転者Bは過失運転致死罪で起訴されました。Bとしては、過失の事実や衝突、傷害、死亡の事実は争わないということでした。
Aさんの主な遺族は、妻、子供3人、父、母です。できれば全員が被害者参加で法廷に立ち、Bさんを厳罰に処していくよう求めたいと考えました。
2 法律解説
本件については、まず過失運転致死罪で起訴されており、有罪判決が出ることは間違いないでしょう。
自動車の運転により人を死傷させる行為等の処罰に関する法律
(過失運転致死傷)第5条 自動車の運転上必要な注意を怠り、よって人を死傷させた者は、七年以下の拘禁刑又は百万円以下の罰金に処する。ただし、その傷害が軽いときは、情状により、その刑を免除することができる。
危険運転致死罪に当たるかどうかは、ひとまず考えないことにします。
被害者参加が出来るかどうかは、刑事訴訟法に規定があります。
刑事訴訟法
第316条の33第1項
裁判所は、次に掲げる罪に係る被告事件の被害者等若しくは当該被害者の法定代理人又はこれらの者から委託を受けた弁護士から、被告事件の手続への参加の申出があるときは、被告人又は弁護人の意見を聴き、犯罪の性質、被告人との関係その他の事情を考慮し、相当と認めるときは、決定で、当該被害者等又は当該被害者の法定代理人の被告事件の手続への参加を許すものとする。
四 自動車の運転により人を死傷させる行為等の処罰に関する法律(平成二十五年法律第八十六号)第四条、第五条又は第六条第三項若しくは第四項の罪
まず、被害者参加が出来ることは法律で正面から規定されています。なお、Aさんの遺族は、ここでは「被害者等」に当たります。
被害者等とは、被害者又は被害者が死亡した場合若しくはその心身に重大な故障がある場合におけるその配偶者、直系の親族若しくは兄弟姉妹をいいます。
3 対処法・弁護士のサポート
上記法令から見れば、基本的に一度の公判期日に参加出来る被害者参加人の数は規定されておらず、犯罪の性質などから「相当」といえるかどうかという点から裁判長が判断することになります。妻、息子一人であれば比較的容易に参加が認められそうです。ただし、それ以上の人数を参加させようと考えた場合、予定などを合わせる関係で訴訟も非常に複雑になりますから、全員の被害者参加を許可しない可能性もあります。
しかし、裁判所としては可能な限り被害者参加を希望する人の参加を許可しようとします。そのため、事件の性質や、訴訟が複雑にはならないことを検察官、裁判官に主張していくことにより、Aさんの遺族に関していえば全員が参加出来る可能性もあります。
遺族がどれだけ参加するか、どれだけ気持ちを主張していくかが重要となりますので、刑事事件を主に扱い、被害者参加の状況も多く見てきた弁護士に一度相談をすることをお勧めします。
4 最後に
以上、自動車死亡事故における被害者参加人の人数について簡単に紹介させて頂きました。
被害者参加事件で、可能な限り満足いく裁判にしたい、とお考えの方は、弁護士に相談することでその実現に近付くかもしれません。
交通死亡事故の被害者遺族となってしまってお悩みの方は、一度あいち刑事事件総合法律事務所にお電話ください。