犯罪被害に遭われた方にとって、加害者の量刑がどうなるか、というのは非常に大きな関心事になるかと思います。特に、大きな怪我をした事件や、被害者の方が亡くなってしまったような事件で、罰金や執行猶予の判決になるようなことになると、被害者やご遺族の方からしたら納得がいかないと思います。
そこで、被害者側にとって何とかならないか、被害者参加によって加害者にできるだけ重い処分を与えることができないか、が気になるところだと思います。今回は、被害者参加によって量刑にどのような影響があるのか解説していきたいと思います。
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1 参考事例
名古屋市内に住むAさんは、ある日、歩道を歩いていたときに、ハンドル操作を誤ったBの自動車が突っ込んできて衝突し、そのまま死亡しました。
Aさんの遺族であるCさんは、なんとかBに厳しい判決が下るようにできないか考えました。被害者参加制度などを使ったら果たしてそうなるのか、法律の専門家などではないので分かりませんでした。Cさんは、被害者参加制度などの利用を検討するため、弁護士に相談することにしました。
(この参考事件はフィクションです。)
2 法律上の問題点
上記事例について、過失運転致死罪に当たるのは間違いないでしょう。そのため、被害者参加の出来る事件に当たります。
また、Cさんは、とりあえずここでは被害者参加が出来る資格があるとします。そのため、被害者参加が出来ること自体には問題がありません。
しかし、被害者参加の効果を裁判上どのように考慮していくのかについては、以下のような規定があり、被害者参加人のした事実又は法律の適用についての意見陳述は証拠とはならないと定められております。
刑事訴訟法
第316条の38
第1項
裁判所は、被害者参加人又はその委託を受けた弁護士から、事実又は法律の適用について意見を陳述することの申出がある場合において、審理の状況、申出をした者の数その他の事情を考慮し、相当と認めるときは、公判期日において、第二百九十三条第一項の規定による検察官の意見の陳述の後に、訴因として特定された事実の範囲内で、申出をした者がその意見を陳述することを許すものとする。
略
第4項
第1項の規定による陳述は、証拠とはならないものとする。
そのため、被害者の方が上記の意見陳述をしたとしても、裁判の結果については少なくと大きく変わることはない、というのが刑事訴訟法上の扱いであると言えます。
3 どのように弁護活動をしていくのか
それでは、被害者参加によって量刑を変えていこうと考えた場合、どのような活動をしていけば良いのでしょうか?
一つは、まず検察官に働きかけを行うことです。被害者参加における検察官の活動については、このような規定があります。
(一応、起訴までこぎつけたことを前提とします。)
刑事訴訟法
第316条の35
被害者参加人又はその委託を受けた弁護士は、検察官に対し、当該被告事件についてのこの法律の規定による検察官の権限の行使に関し、意見を述べることができる。この場合において、検察官は、当該権限を行使し又は行使しないこととしたときは、必要に応じ、当該意見を述べた者に対し、その理由を説明しなければならない。
この規定については、証拠調べの請求だけでなく、論告や求刑といった量刑に直結する訴訟活動についても意見を述べることができます。そして、意見を述べた場合、当該訴訟活動を行った理由を被害者参加人やその弁護士に説明することになります。
基本的に多くの検察官は、被害者の意向になるべく沿うように活動しようとしますので、量刑についても被害者の意向に沿ったものにしてくれる可能性があります。
また、上記の通り意見陳述のみでは証拠にならないという規定があるので、被害者の処罰感情を証拠化してもらうことや、被告人質問についての方針などを検察官と話し合うようにすると、より良いでしょう。
さらに、量刑を決めるのは裁判官であり、心情に関する意見陳述や証人尋問・被告人質問などについても十分表現内容を検討する必要があります。そのような心情に至った具体的経緯がよく分かるように詳細に意見陳述を行うほか、意見陳述の時間を十分に確保させることも重要になってきます。さらに、表現についても、過激になりすぎたり過小になりすぎたりしないようにする必要が出てきます。
被害者御本人だけで参加すると、やはり公判の順序や、表現の内容や加減が難しくなるように思います。表現内容や、弁護士の有無によって十分な活動ができるかどうかには差が出るように思います。量刑や裁判長への印象が量刑に影響したのでは、とも思える事件もあるように思います。
4 まとめ
被害者参加での対応にお悩みの方は、一度弁護士にご相談ください。
御本人のみでも検察官が十分サポートしてくれますが、どうしても限界があるように見受けられます。弁護士がサポートすることで、納得のいく量刑判断が得られるかも知れません。
相談に関しては無料ですので、是非一度お気軽にご相談ください。