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犯罪被害に遭ってしまった場合、捜査機関に対して犯罪被害を受けたことを報告する被害届を提出するだけでなく、犯人への刑事処罰を求める告訴を行うこともあります。今回はこの告訴について、制度や告訴が必要となる犯罪、告訴を行うにあたってのポイントについて解説します。
<告訴権者>
犯罪被害に遭ってしまった方は、告訴をすることができます。
名誉毀損罪・侮辱罪に関しては、告訴をすることができる者が天皇、皇后、太皇太后、皇太后又は皇嗣であるときは内閣総理大臣が、外国の君主又は大統領であるときはその国の代表者がそれぞれ代わって告訴を行うことになります。
被害者の法定代理人は、独立して告訴をすることができます。
被害者が死亡したときは、その配偶者、直系の親族又は兄弟姉妹は、告訴をすることができますが、被害者が告訴をしない意思を明示しているのであればすることができません。
被害者の法定代理人が被疑者であるとき、被疑者の配偶者であるとき、又は被疑者の四親等内の血族若しくは三親等内の姻族であるときは、被害者の親族は、独立して告訴をすることができます。
死者の名誉を毀損した罪については、死者の親族又は子孫は、告訴をすることができます。
名誉を毀損した罪について被害者が告訴をしないで死亡したときも、死者の親族又は子孫は、告訴をすることができますが、被害者が告訴をしない意思を明示しているのであればすることができません。告訴については、こちらの記事もご参照ください。https://higaisya-bengo.com/hanzaihigai_attabaai_taisyo/
<親告罪>
親告罪とされる犯罪については、告訴がなければ公訴を提起・起訴することができません。
親告罪としては、秘密漏示罪、過失傷害罪、未成年者略取誘拐罪、名誉毀損罪、侮辱罪、親族間の窃盗罪・不動産侵奪罪・詐欺罪・恐喝罪・横領罪、毀棄・隠匿罪、等があります。
親告罪について告訴をすることができる者がない場合には、検察官は、利害関係人の申立により告訴をすることができる者を指定することができます。
親告罪の告訴は、犯人を知った日から6か月を経過したときは、これをすることができません。
ただし、名誉棄損罪・侮辱罪について外国の代表者が行う告訴、日本国に派遣された外国の使節に対する名誉棄損罪・侮辱罪につきその使節が行う告訴については、告訴期間の制限はありません。
告訴をすることができる者が数人ある場合には、一人の期間の徒過は、他の者に対しその効力を及ぼしません。
告訴は、公訴の提起があるまでこれを取り消すことができます。
告訴の取消をした者は、更に告訴をすることができません。
親告罪について共犯の一人又は数人に対してした告訴又はその取消は、他の共犯に対しても、その効力を生じます。
告訴とその取消は、代理人によりこれをすることができます。親告罪については、こちらの記事もご参照ください。https://sapporo-keijibengosi.com/kokuso/
<捜査機関の対応>
告訴は、書面又は口頭で検察官又は司法警察員にしなければなりません。
検察官又は司法警察員は、口頭による告訴を受けたときは調書を作らなければなりません。
司法警察員は、告訴を受けたときは、速やかにこれに関する書類及び証拠物を検察官に送付しなければなりません。
<告訴はしっかりとした手続により行わなければならない>
告訴はとにかくすればいいというわけではありません。
告訴をされた警察としても、告訴された事実が具体的にどういうことなのか、本当なのか、犯罪として成立するのか、どのような経緯や背景があったのか、証拠としては何があるのか、今後どのような捜査をしていけばいいのか、等がある程度検討できるようにしなければなりません。
いい加減な告訴をしても、警察としてもどのように対応すればいいか分からず、結局は捜査がまともに進まずに犯罪被害者にとって悪い結果になる可能性があります。
犯罪被害に遭ってしまった方は、告訴についてぜひ弁護士に相談してください。
きちんとした手続きで告訴を進めていき、捜査機関と話し合いながら、犯人の処罰を求めていくことになります。