特殊詐欺

近年振り込め詐欺やキャッシュカードのすり替えなどが社会問題となっています。これらは特殊詐欺と呼ばれています。ここでは特殊詐欺について解説します。

特殊詐欺とは

特殊詐欺とは、電話等の非対面の方法で被害者を信じ込ませ、現金やキャッシュカードを騙し取ったり、犯人の口座に送金させる等して、不特定多数の者から現金等を騙し取る犯罪をいいます。

特殊詐欺の特徴としては、被害者とは直接対面することなく、電話等により被害者を誤信させることです。また、犯罪の種類としては、詐欺だけでなく、窃盗なども含まれます。

特殊詐欺の種類としては、以下のものがあります。

オレオレ詐欺

親族等を名乗り、「大事な書類の入った鞄を置き忘れた」「会社に損害を与えてしまいお金が必要」などと言って、現金を騙し取ったり脅し取る手口です。

預貯金詐欺

警察官や銀行協会職員等を名乗り、「あなたの口座が犯罪に利用されています。キャッシュカードの交換手続が必要です。」などと言って、暗証番号を聞き出し、キャッシュカード等を騙し取ったり脅し取る手口です。

架空料金請求詐欺

有料サイトやサービス料金等をうたい、「未払いの料金があります。今週中に支払わなければ法的手続きを取ります。」などと知らせ、犯人指定の口座に振り込ませたり、電子マネーを購入させて番号を聞くなどして、金銭等を騙し取ったり脅し取る手口です。

還付金詐欺

医療費、税金、保険料等をうたい、「還付金の返還のため手続きが必要です」等と言い、被害者にATMを操作させて被害者の口座から犯人の口座に送金させるなどして、不法な利益を得る手口です。

キャッシュカード詐欺盗

銀行協会職員等を名乗り、「あなたのキャッシュカードが犯罪に利用されています。職員がキャッシュカードの確認に伺います。」などと言い、キャッシュカードを準備させ、隙を見て偽物のカードとすり替える等して、キャッシュカード等を窃取する手口です。

融資保証金詐欺

電話やはがき、DM等で、実際には融資しないのに、「無担保、低金利、保証人不要」など簡単に融資が受けられると信じ込ませ、融資を申し込んできた人に対して「保証金が必要です」などと言って金銭等を騙し取る手口です。

金融商品詐欺

電話やはがき、DM等で、価値が全くない株や物品について嘘の情報を教え、購入すれば儲かると信じ込ませ、購入代金として金銭等を騙し取る手口です。

ギャンブル詐欺

雑誌やインターネット記事に「パチンコ、パチスロ必勝法」「パチンコ打ち子募集中」したり、電話やDM等で、「宝くじに当選しました」等と連絡を入れ、会員登録が必要等と言って、登録料や情報料として金銭等を騙し取る手口です。

交際あっせん詐欺

「女性紹介」等と雑誌に掲載したり、「交際相手を紹介します」といったDMを送り、利用を申し込んできた人に、会員登録料や保証金等として、金銭等を騙し取る手口です。

強盗

特殊詐欺の手口を用いた強盗が多発しています。消防の点検や銀行員の訪問予約等と偽って被害者が自宅にいるようにして、正規の訪問だと思って応対した被害者を脅して、金銭等を強取手口です。予約を装った電話では、在宅の有無の他、家族構成や住人がいる時間、資産状況やその場所なども聞いてきます。

特殊詐欺の特徴

特殊詐欺は、上記のように非対面で相手を信じ込ませて行う犯罪です。特殊詐欺に特徴的なものとして以下のものがあります。

かけ子

不特定多数に電話をかけて被害者を信じ込ませる役割を担います。

受け子

現金を受け取りにったり、キャッシュカードをすり替えるために被害者宅を訪問する役割を担います。その後現金やキャッシュカードをロッカーに入れたり別の者に渡すことも行います。

アポ電

事前にかけ子が警察、消防、銀行協会の職員等と偽って被害者に電話をかけ、予め銀行員等が訪問する時間を予約して、被害者が自宅にいることを確保して、さらなる特殊詐欺や強盗につなげるものです。アポ電では、訪問の予約の他、家族構成や住人がいる時間、資産状況やその場所なども聞いてきます。

特殊詐欺の被害に遭ったら

特殊詐欺の被害の回復

特殊詐欺の被害を受けた後で、特殊詐欺の犯人を捕まえるのは容易ではありません。

捕まったとしても、たいていは受け子です。これらは被害金額に比して低い報酬しか受け取っていないことが多く、被害者も複数に上ることが多々あります。そのため、一人の被害者が受け子から回収できる損害賠償金額は少なくなってしまいます。犯人の家族が賠償に協力することはありますが、それでも被害金額の全額が返ってくる保障はありません。

暴対法による救済

特殊詐欺により逮捕された受け子などが暴力団の構成員である場合は、暴力団の代表者等に対し損害賠償請求できる可能性があります。

暴力団員による不当な行為の防止等に関する法律(暴対法)第31条の2では「指定暴力団の代表者等は、当該指定暴力団の指定暴力団員が威力利用資金獲得行為(当該指定暴力団の威力を利用して生計の維持、財産の形成若しくは事業の遂行のための資金を得、又は当該資金を得るために必要な地位を得る行為をいう。以下この条において同じ。)を行うについて他人の生命、身体又は財産を侵害したときは、これによって生じた損害を賠償する責任を負う。」(第1項本文)と定めています。この規定により、暴力団員が暴力団のしのぎ(資金獲得活動)として、携帯電話等の設備の準備や受け子の手配など特殊詐欺に関わり、被害者に財産的な損害を与えた場合は、指定暴力団の代表等に損害を賠償することができます。この暴対法により損害賠償請求が認められた事件もあります(東京地裁判決令和3年2月26日、最高裁第一小法廷決定令和3年9月9日等)。

もっとも、これも暴力団の関与が明らかな事案に限られ、たまたま暴力団員が受け子だっただけで暴力団の関与が明らかでない事案などでこれを用いて暴力団の代表の責任を追及するのはハードルが高いといるでしょう。

振り込め詐欺救済法による救済

特殊詐欺の被害者の救済策として、犯罪利用預金口座等に係る資金による被害回復分配金の支払等に関する法律(振り込め詐欺救済法)に定める被害回復分配金の支払があります。これは、金融機関が、犯罪に利用されているとの疑いがある預金口座等の取引を停止し、公告を経て失権(預金等債権の消滅)させ、その残額分を原資として、被害者に被害回復分配金を支払うものです。

分配金の支払を受けるには、被害の申請が必要となります。

また、この法律は預金口座等に振り込んだ事件を対象とするものです。受け子に現金を手渡ししたり、キャッシュカードをすり替えられたり、現金を郵送したような場合は、この法律の適用は受けられません。

犯人の処罰

近年は特殊詐欺について厳罰化しており、受け子で前科がなくとも実刑となることが多いです。事件数や被害金額によっては10年近くの懲役刑になることもあります。

特殊詐欺を防ぐには

特殊詐欺の方法は複雑になってきており、思いもよらない方法で犯人グループが近づいてきます。それでも、特殊詐欺の被害を防ぐためにはいくつかの方法があります。

すぐに電話に出ない

特殊詐欺のかけ子は巧みな話術で話しかけてくるため、電話に出るとそのまま信じ込まされてしまうおそれがあります。

ナンバーディスプレイ機能の電話にして誰がかけてきたか分かるようにするのがよいでしょう。在宅時でも留守番電話設定にして、知っている相手にだけ折返しかけるようにするのが良いでしょう。通話相手に警告メッセージを出して通話内容を録音する機能が付いているものも効果的です。

通話相手に確認する

親族等を名乗って電話をかけてきたときは本当に本人がかけてきたのか確認しましょう。かけ子は電話番号を変えたなどと言ってくることもあるため、かけてきた番号へ直接折返すと、そのまま誘導されてしまうおそれがあります。折返しではなく、電話帳に登録している番号にかけましょう。

不自然な行動には対応しない

特殊詐欺では警察や銀行協会職員等社会的に信用性がありそうな職業を名乗ってやってくることが多いです。しかし、警察や銀行員がカードの確認などと言って自宅に訪問することはありません。また、コンビニ等で電子マネーのカードを購入させて、その番号を聞き出すことも行われますが、このような形で支払いを求める正規の事業者はいません。このような行動にはすぐには対応しないようにしましょう。本当の話かどうか警察等に電話をする手もありますが、かけてきた番号に折り返しをしてはいけません。必ず自分で調べた番号に書けるようにしましょう。

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