性犯罪の被害に遭ってしまったら

犯罪被害

性犯罪に関する処罰規定の改正動向や、弁護士による被害者支援について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。

性犯罪に関する被害者保護の動向

これまで、性犯罪被害者の多くが、泣き寝入りをしてきました。被害を第三者に相談しづらい苦痛、証拠が少ないから警察に訴えてもまともに扱ってもらえないかもしれないという不安、被害を受けたことが一般の人に知られるのが怖い、といった理由からです。
しかし、被害者を保護するために、近年は性犯罪に関する規定や制度が大きく変わりました。性犯罪に遭ってしまった場合は、速やかに警察と弁護士に相談しましょう。

性犯罪が成立しやすくなりました

これまでは、強制わいせつ罪や強制性交等罪において、暴行や脅迫の有無が問題とされてきました。加害者も、相手の同意があった、同意があると思っていた、と主張し、犯罪の成立を争うことが多かったのです。
しかし、性犯罪に関する規定ついて法改正があり、状況は大きく変わりました。まず、必ずしも暴行や脅迫がなくても犯罪が成立するようになりました
そして、被害者が同意していないと評価される範囲が広がりました。加害者が安易に、相手の同意があった、同意があると思っていた、と主張しても、以前よりも通用しなくなったのです。

不同意わいせつ罪

不同意わいせつにおいては、次に掲げる行為又は事由その他これらに類する行為又は事由により、同意しない意思を形成し、表明し若しくは全うすることが困難な状態にさせ又はその状態にあることに乗じて、わいせつな行為をした者は、婚姻関係の有無にかかわらず、6月以上10年以下の拘禁刑となります。
一 暴行若しくは脅迫を用いること又はそれらを受けたこと。
二 心身の障害を生じさせること又はそれがあること。
三 アルコール若しくは薬物を摂取させること又はそれらの影響があること。
四 睡眠その他の意識が明瞭でない状態にさせること又はその状態にあること。
五 同意しない意思を形成し、表明し又は全うするいとまがないこと。
六 予想と異なる事態に直面させて恐怖させ、若しくは驚愕させること又はその事態に直面して恐怖し、若しくは驚愕していること。
七 虐待に起因する心理的反応を生じさせること又はそれがあること。
八 経済的又は社会的関係上の地位に基づく影響力によって受ける不利益を憂慮させること又はそれを憂慮していること。
行為がわいせつなものではないとの誤信をさせ、若しくは行為をする者について人違いをさせ、又はそれらの誤信若しくは人違いをしていることに乗じて、わいせつな行為をした者も、不同意わいせつ罪が成立します。
16歳未満の者に対し、わいせつな行為をした者も、原則として不同意わいせつ罪が成立します。不同意わいせつ罪については、こちらの記事もご参照ください。https://sapporo-keijibengosi.com/kyouseiwaisetu/

不同意性交等罪

不同意性交等罪においては、不同意わいせつ罪の各号に掲げる行為又は事由その他これらに類する行為又は事由により、同意しない意思を形成し、表明し若しくは全うすることが困難な状態にさせ又はその状態にあることに乗じて、性交、肛門性交、口腔性交又は膣若しくは肛門に身体の一部若しくは物を挿入する行為であってわいせつなものである性交等をした者は、婚姻関係の有無にかかわらず、5年以上の有期拘禁刑となります。
行為がわいせつなものではないとの誤信をさせ、若しくは行為をする者について人違いをさせ、又はそれらの誤信若しくは人違いをしていることに乗じて、性交等をした者も、不同意性交等罪となります。
16歳未満の者に対し、性交等をした者も、不同意性交等罪が成立します。

被害者のプライバシーは守られます

警察や弁護士に事件を伝えても、被害者の個人情報が勝手に公表されたりはしません。住所・電話番号・勤務先等は、加害者や一般の人が知られないように扱われます。
起訴されて刑事裁判となっても、法廷で被害者の名前は読み上げられないようにすることができます。
被害者が法廷で証言することになっても、衝立が設置されたり、他の部屋からモニターで行われたりして、加害者や傍聴人に見られることもありません。
このように、捜査・公判を問わずに、被害者のプライバシーが守られるように配慮されています。被害者のプライバシー保護については、こちらの記事もご参照ください。https://higaisya-bengo.com/hanzaihigai_himitu/

刑罰や損害賠償以外にも加害者に約束させることができます

場合によっては、加害者から被害者へ、示談が申し込まれることがあります。金銭的な解決をメインとした交渉となりますが、示談が成立することで、加害者の刑事処分が軽くなる可能性もあります。

加害者との示談においては、二度と被害者に近づかないこと、電話やSNS等も含めて被害者に接触しないこと、被害者が被害に遭ったことなどを第三者に言いふらさないこと、といった約束も含めて交渉することができます。
将来的な不安を出来るだけ小さくするために、被害者の意向を確認して、弁護士を通じて交渉することになります。

刑事裁判における損害賠償の請求

状況次第では、加害者側との示談交渉の形ではなく、刑事裁判を通じて損害賠償を請求することもあります。被害者が別途、民事裁判を起こさなくてもよい損害賠償命令という制度があるため、対象となる事件の場合は、被害者の負担を軽くすることができます。
損害賠償命令では刑事裁判で提出された証拠が使うことができ、刑事裁判の裁判官がそのまま損害賠償についても判断するので、早期の解決につながることがあります。

早期に警察と弁護士へ相談を

性犯罪の被害に遭ってしまった場合、その苦痛や負担は計り知れません。警察も弁護士も、そのような苦しみを抱えている被害者の方のために、全力でサポートいたします。
性犯罪の被害に遭ってしまった場合は、速やかに警察と弁護士に相談してください。今すべきことや今後の手続の流れについて、懇切丁寧にご説明します。

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