交通事故に遭ったら

交通事故の被害に遭ったら

交通事故に遭ったら、まずは相手方を確認しましょう。本人の容姿や名前だけでなく、車の方も車種やナンバーを確認しましょう。

自分自身が大した怪我をしていなかったり、自車の損傷が軽微であっても、その場で話し合って立ち去るようなことは避けるべきです。後日後遺症が発生しても追及することが困難になります。また、交通事故を起こした加害者が警察に事故を報告しないこともあります。警察に報告をしたのを確認し、警察や救急がくるのを待つべきです。

警察や救急が来た後は、その指示に従いましょう。怪我をしていないのであれば、そのまま現場検証をすることもあります。相手方の名前や連絡先、保険会社についても確認しておくべきです。

物損か人損か

交通事故に遭ったときでも、車や工作物が損壊しただけで人には被害が出ていない物損か、人も死傷している人損かによって、扱いが異なってきます。

人損の場合は、加害者側は過失運転致死傷の刑事事件の被疑者としても扱われます。

一方で、物損の場合は、過失運転致死傷罪は成立しないため、刑事事件の加害者とはなりません。飲酒運転や事故報告義務違反など他の規定の違反があれば当該事件の被疑者とはなりますが、事故の相手方が被害者となるわけではありません。

民事―損害賠償

交通事故によって自分の車を損壊されたり、あるいは被害者が負傷したり亡くなったときは、被害者やその遺族は、加害者に対して不法行為に基づく損害賠償請求権を有します。

自賠責保険

自賠責は自動車損害賠償保障法によって全ての自動車に契約が義務付けられています。これは人損の場合に適用され、人の死傷がない物損事故には適用されません。

自賠責保険で支払われる支払限度額はあらかじめ決まっています。傷害による損害については120万円、死亡による損害については3000万円です。後遺障害による損害にも支払われ、神経系統の機能または精神・胸腹部臓器に著しい障害を残し、介護を要する傷害で、常時介護を要する第1級の場合は4000万円、随時介護を要する第2級の場合は3000万円となっています。その他の後遺障害では、等級によって3000万円から75万円支払われます。

任意保険

加害者側が任意保険に加入している場合、任意保険からも支払が行われます。対物も対象となっている場合、物損事故についても保険金が支払われます。

よく「対人対物無制限」という表現がなされますが、この場合でも被害者が望む損害賠償額全額が支払われるわけではなく、あくまで保険会社の算定基準に従って支払われます。

損害賠償

保険でも損害の回復に十分でない場合は、加害者本に対し損害賠償請求をすることになります。

多くの場合、いきなり訴えを提起するのではなく、まずは加害者と話し合いをすることになります。加害者と損害賠償について合意した場合、和解(示談)をすることになります。当事者同士の話合いで解決しなかった場合、調停など第三者の協力を求めることになります。

このような方法を用いても解決しない場合、訴えを提起し、裁判所による判断を求めることになります。

裁判ではけがの程度や入院・通院日数、後遺症の等級などを基準に損害賠償額が算定されます。裁判所もこれまでの裁判の結果を蓄積してつくられた算定基準によって損害賠償額を算定しますが、基本的に保険会社の算定する金額より高額になります。

刑事―捜査・裁判

交通事故を起こした加害者は、道路交通法や「自動車の運転により人を死傷させる行為等の処罰に関する法律」(「自動車運転処罰法」などと略されます)に違反したとして刑事事件の被疑者・被告人ともなります。被害者もこの刑事事件の捜査や裁判に関わることになります。

捜査

交通事故を起こした場合、加害者が飲酒をしていたり、被害者の怪我の程度が大きかったり亡くなったりしたときは、加害者が逮捕されることもあります。もっとも、その後勾留されずに釈放されることも多いです。

勾留された場合は逮捕も含めて最大23日の中に検察官が加害者を起訴するかどうか判断し、起訴するのであれば、勾留満期までに起訴します。

一方で、勾留されなかった場合、このような時間制限はありませんので、捜査は長期化することになります。概ね6か月ほどで検察官は終局処分をしますが、1年以上かかることも珍しくありません。終局処分の前に被害者又は被害者の家族・遺族が検察官から取り調べを受け、加害者に対する処罰感情の確認などがされます。

示談

加害者の依頼した弁護士(弁護人)から、保険金とは別に加害者が損害賠償金を支払って示談することを求められることもあります。この場合、示談書を交わして示談することになるでしょう。この示談は、上記の民事における示談(和解)示談書においては、謝罪や示談金の支払のほか、「この示談により本件事故についてお互い債権債務を有しない」「今後本件について損害賠償を求めない」などといった文言(清算条項)が付されることになります。また、「加害者を許す」「寛大な処分を求める」といった文言(「宥恕条項」といいます)を付けることも求められます。

示談締結や示談における宥恕の有無は、検察官の終局処分を大きく左右します。検察官としては、被害者の損害が回復したかどうか、被害者が処罰を求めているかを重視するからです。

公判

示談の有無や被害者の処罰感情にもよりますが、全治2週間以上の怪我を負わせた場合は、加害者が公判請求される可能性があります。

過失運転致死傷事件や危険運転致死傷事件のように被害者に甚大な被害を与える事件では、被害者や遺族、その依頼を受けた弁護士が、公判手続きに参加することができます。

公判手続きでは、証人に対して情状に関する事項について、尋問することができます。

また、事実又は法律の適用について意見を陳述することができますし、そのために被告人である加害者に対し被告人質問をすることができます。

また、加害者が被害者側に落ち度があるとか、自分に過失はないなどと主張することもあります。この場合、被害者が証人として出廷し、加害者である被告人の弁護人の反対尋問を受けることになります。

弁護士への依頼を考える

以上のように、交通事故が起きると、被害者も民事・刑事という大変負担のある手続に巻き込まれることになります。これに適切に対応するためにも、弁護士への依頼を考えるべきでしょう。

弁護士に依頼することで、次のような局面で役に立つでしょう。

適切な保険金の受取

加害者側の任意保険による支払いについて保険会社に任せたままだと、保険会社の算定基準により保険金額が決まってしまいます。被害者や遺族が不満を述べても、保険会社の担当者は経験豊富であり、難解な説明や慣例などを述べて、被害者側の主張が退けられることが多々あります。

しかし、弁護士が担当することで、裁判所の算定基準によるなど、被害の実態に合ったより高額な保険金の支払いを受けられる可能性があります。

適切な示談の対応

被害者側から加害者側に損害賠償を請求する前に、加害者側の弁護士から示談を求められることがしばしばあります。事故のことを忘れたいからと早急に示談に応じてしまうと、後遺障害の慰謝料も含めて債権債務が存在しないかのような清算条項にされてしまったり、意味も分からず宥恕文言を書いてしまい、加害者を許したかのようにされてしまう可能性があります。

弁護士が示談の対応をすることで、後遺障害が発生した場合は別途合意をする等、損害を回復するために適切な条項を設けることが期待できます。また、示談はするがやはり加害者を許せない場合、「処分については裁判所にゆだねる」など宥恕条項を入れずに示談を締結することができます。

民事裁判対応

加害者側と交渉しても解決できなかった場合、損害賠償請求をすることになります。慰謝料や逸失利益、後遺障害慰謝料などを請求することになります。このときには、休業損害や、入院・通院だけでなく、事故により労働能力が喪失し将来得るはずの利益が失われた分を計算し、これらの損害が発生した証拠を示す必要があります。このようなことを日常生活に復帰しながら行うことは非常に厳しいでしょう。こうしたことは法律の専門家である弁護士に依頼することでより適切に対応することが期待できます。

刑事裁判対応

刑事裁判においては、被害者やその遺族だけでなく、被害者から委託を受けた弁護士も、被害者参加をすることができます。証人への尋問や被告人質問、意見陳述において、被害者や遺族の思いを反映させて裁判所に示すことができます。

また、被告人が事件について争っているため被害者が証人として出廷する際は、検察官が証人テストを行いますが、弁護士も被害者や遺族と事前に打合せを行います。被告人の弁護人は、被害者側に落ち度があることを示そうと厳しい尋問をしてくることが予想されますが、このような尋問にも冷静に対応できるよう準備をすることができます。

このように、弁護士に依頼することで、各局面において適切に対応することが期待できます。

交通事故に遭われたら、まずは弁護士に相談することをお勧めします。

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