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キャバクラの店員であるボーイが店のお酒を盗んだ事件を例に、キャバクラ店としてどういった対応ができるのかを弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。
事例
大阪市北区にあるキャバクラ店でボーイとして働いていたAが、店でお客さんに提供するために発注していた高級シャンパン(購入価格1本あたり4万円、店での販売価格1本あたり10万円)を合計10本を勝手に持ち帰り、転売していたことが、在庫が合わないことを不審に思った同店のオーナーVの調査で発覚した。
VはAに責任を取らせるためにはどうするのがよいのか弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所に相談することにした。
(フィクションです)
窃盗罪か業務上横領罪か
本事例のAは、店のお酒を勝手に持ち帰っているため、窃盗罪が成立すると考えられます。
もっとも、Aが単なる従業員ではなく、店長など店の在庫を管理する権限を持っていた場合には、窃盗罪ではなく業務上横領罪が成立することになります。
このように、Aの店での立場や役職によって、成立する犯罪が変わる場合があります。
なお、Aは持ち帰ったお酒を転売していますが、転売していることは「不可罰的事後行為」となり、基本的に犯罪は別途成立しません。
刑事事件化する場合のメリットデメリット
Aが店のお酒を持ち帰ったことは、上述のように犯罪に該当するため、Vとしては、警察に対して被害届の提出や告訴などを行い、刑事事件化することが考えられます。
刑事事件化するメリットとしては、Aが刑罰を受ける可能性が出てくること、Aから示談交渉などで被害弁償をしてくれやすくなることが挙げられます。
デメリットとしては、警察が捜査のために店に立ち入ったり、Vや店の店員に事情聴取などが行われたりするなど、捜査へ協力しなければならなくなり、警察の立ち入りにより店のイメージが損なわれたり、事情聴取などへ協力しなければならなくなることから業務に支障が出たりすることが挙げられます。また、刑事事件化したとしても必ずAが刑罰を受けるとは限らないという点にも注意が必要です。
刑事事件化するには
刑事事件化するには、警察に捜査を開始してもらう必要があります。
そのためには、被害届を提出したり、告訴をしたりする必要があります。
しかし、多くの場合、警察は被害届や告訴をすぐには受け取ってくれません。
「犯罪の証拠がない」「民事の話である」などと理由を付けて受理を拒みます。
そのため、警察に被害届等を受理してもらうためには、あらかじめ重要と思われる証拠は収集しておき、被害届等を受理するように警察に働きかける必要があります。
弁護士に依頼すれば、証拠収集や警察に受理してもらいやすい被害届や告訴状の作成などを行ってくれます。刑事事件化した場合の流れについては、こちらの記事もご参照ください。https://osaka-keijibengosi.com/keiziziken_flow/
損害賠償請求する場合のメリットデメリット
Vとしては、Aに対して店が被った損害の賠償を求めることもできます。
Aに対して金銭賠償を直接求めることもできますし、裁判所に損害賠償請求訴訟を提起することもできます。
多くの場合は、直接賠償を求めると思いますが、いくら損害賠償を請求する権利があるとしても、請求の仕方によっては恐喝罪に問われてしまう可能性もあるため、弁護士に依頼して交渉の窓口になってもらいましょう。
裁判所に損害賠償請求訴訟を提起する場合のメリットは、裁判所が下した判決を基にAの財産を差し押さえるなど強制執行が可能になることが挙げられます。
一方デメリットとしては、損害の立証をVがしなければならないこと、裁判には時間もお金もかかること、Aに財産がなければ勝訴したとしても金銭的な賠償が実現されないことがあげられます。
そのため、損賠賠償請求訴訟を起こす前に、充分な証拠を収集し、Aに財産があるかないかを調査する必要があります。
また、本件では、損害としてシャンパンの購入価格での算出をするのか、販売価格での算出をするのかについても検討する必要があります。
キャバクラの場合には、購入価格と販売価格が大きくことなることがあり、本件でも1本当たり6万円の差があります。
そのため、Aとしては購入価格での賠償を申し出てくる可能性が高いため、販売価格での賠償を求めていく場合には、その請求が正当なものかどうかを含めて弁護士に相談することが重要です。
示談交渉の活用を
これまで説明してきたように、刑事事件化では店のイメージダウンにつながったり、業務に支障が出たりといったデメリットが考えられ、民事訴訟にも時間と労力、お金の問題があります。
そのため、まずは示談交渉を行い、Aから任意で損害を賠償してもらえるように働きかけることも活用しましょう。示談交渉については、こちらの記事もご参照ください。https://higaisya-bengo.com/jidan_wakai_kaiketu/
Aに絶対に刑罰を受けてもらいたいといったような要望が強くある場合でなければ、もっともはやく賠償を実現できる可能性があります。
また、示談は契約の一種なので、AだけではなくAの家族に賠償金の支払いをしてもらったり、連帯保証をしてもらうというような条件を付けることも可能です。
民事裁判の判決では、そういったことは不可能なので、早期の賠償実現のために示談交渉の活用もご検討ください。