【報道解説】元従業員の顧客情報の持ち出し

元従業員が顧客情報を持ち出したという報道について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。

不正競争防止法

1 報道の内容

勤務していた事務所から顧客の情報を持ち出した疑いで元社員の40代の税理士補助の男が逮捕されました。
不正競争防止法違反疑いで逮捕されたのは、静岡県富士市三ツ沢に住む税理士補助の男(47)です。
警察によりますと、男は2023年4月頃、当時の勤務先だった富士市内の税理士事務所で、60の事業者の顧客情報をUSBなどに複製し、持ち出した疑いがもたれています。
事件は、男が仕事を辞めた後の5月に、被害を受けた事務所が警察に相談したことで発覚しました。
男によって持ち出された情報による被害の有無などは現在調査中だということです。
(令和5年11月27日 静岡放送(SBS)Yahoo!ニュース より抜粋https://news.yahoo.co.jp/articles/ea3def710c20e7ce03448831834c223f3f16f6f1)

2 不正競争防止法とは

不正競争防止法は、不正競争を防止するなどによって、国民経済の健全な発展に寄与することを目的とした法律です。
どのような行為が「不正競争」にあたるかは、不正競争防止法2条1項に書かれています。
今回の報道で問題となるのは、「営業秘密」(同法2条6項)です。
「営業秘密」とは、「秘密として管理されている生産方法、販売方法その他の事業活動に有用な技術上又は営業上の情報であって、公然と知られていないもの」をいい、顧客情報は、この「営業秘密」に該当すると考えられます。

3 顧客情報の持ち出し―加害者側の刑事責任

報道の事件では、当時の勤務先の事務所から顧客情報を持ち出した容疑となっています。
この男性がいた職場で、男性が顧客情報を取り扱うことができる業務に就いていましたが、事務所内から顧客情報を持ち出すことを禁止していたという場合、この男性は、「営業秘密を営業秘密保有者から示された者」として、不正の利益を得る目的や事務所に損害を加える目的があるとき、不正競争防止法21条1項3号に違反し、10年以下の懲役または2000万円以下の罰金(もしくは併科)の範囲で刑事責任を問われる可能性があります。
なお、具体的な事情によっては、適用される罰条が変わる可能性があります。

4 被害者側における代理人活動

まず、報道のような、不正競争防止法違反の事案における被害者となった場合、被害者側としては、捜査機関から捜査協力の依頼や事情聴取を受けることが考えられます。
その際には、弁護士のアドバイスを踏まえて、対応していくことが重要になってきます。
また、報道の事件では、既に刑事事件化しているため、加害者側の弁護人から、被害者側へ示談交渉の連絡が来る可能性があります。
示談に応じるか、応じるとしてもどのような内容であれば応じるかについては、具体的な事案を踏まえて、慎重に検討する必要があり、この点にも弁護士のサポートの必要性があります。
加害者側との間で示談をせず、民事訴訟を提起するという方法も検討する必要があります。損害賠償の請求については、こちらの記事もご参照ください。https://higaisya-bengo.com/isyaryou_songaibaisyoiu/
民事訴訟となった場合のメリット、デメリットを想定し判断していく必要があります。
さらに、不正競争防止法においては、「不正競争によって営業上の利益を侵害され、又は侵害されるおそれがある者は、その営業上の利益を侵害する者又は侵害するおそれがある者に対し、その侵害の停止又は予防を請求することができる。」とされ、差止請求というものもあります(同法3条1項)。
手続も一般の方には馴染みのない手続となりますので、こうした手続を採ることを考えた場合、弁護士のサポートは不可欠のように思われます。

5 最後に

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所では、不正競争防止法違反の被害に遭われた方への支援を行っています。初回の相談は無料ですので、お気軽にお問い合わせください。

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