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自分や家族が不同意性交等致傷や不同意わいせつの被害に遭ったけれども、特段ケガをした形跡は無い。しかし、事件に遭ってから生活は変わってしまい、場合によっては人生が狂ってしまったとも言えるような状況になってしまった。このように感じている被害者の方も多いのではないかと思います。
今回は、不同意性交等で精神的な症状が出た場合について解説していきます。

1 参考事件
愛知県小牧市内に住む女性のAさんは、ある日、会社の上司の男性Bから、会社内の空き部屋に呼び出され、「応じなければ会社にいられない」等とも脅されたため、断り切れずに性交をしてしまいました。
その後、Aさんは精神や身体の不調を感じ、会社を休職するような事態になりました。不審に思った会社が動いたため、上記のような性行為の事実が明らかになり、Bは無期限謹慎を受けることになりました。Aさんが警察に被害届を出すと、数日後にBは警察に逮捕されました。
(この参考事件はフィクションです。)
2 法律上の論点
上記事例については、Aが「経済的又は社会的関係上の地位に基づく影響力によって受ける不利益を憂慮させること又はそれを憂慮していること」「により、同意しない意思を形成し、表明し若しくは全うすることが困難な状態にさせ又はその状態にあることに乗じて」を認識しつつBがAと性交を行ったのはほとんど明らかであるため(刑法177条1項,同法176条1項8号)、捜査や公判でも大きな障害なくBを不同意性交等罪で処罰してくことができるでしょう。不同意性交等罪で立件するだけであれば、警察や検察が捜査や起訴をためらうようなこともないでしょう。
問題としては、上記の行為によって、精神的な症状が引き起こされ、不同意性交等致傷罪での立件が可能であるか、というところになります。不同意性交等致傷罪での立件には、不同意性交等と精神的症状の因果関係が必要になります。精神的症状については、外から確認することができないので、不同意性交等との因果関係の立証が困難になる傾向があります。
3 不同意性交等致傷での立件のメリット
まず、不同意性交等致傷での立件のメリットとしては、加害者を重い罪で罰することができる事になります。不同意性交等のみでの処罰だと、法定刑は5年以下の懲役ですが(刑法177条1項)、特に初犯であれば酌量減軽がされることもあり、実際には懲役4年程度になることもあります。示談もしないで執行猶予になることまでは考えにくいですが、被害者側の立場からしたら納得はしづらいでしょう。
ただし、不同意性交等致傷については法定刑が6年以上の懲役あるいは無期懲役となります(刑法181条2項)。無期懲役になるケースは稀でしょうが、7年から8年程度の懲役となるケースは珍しくありません。被害者側の立場からすれば、ある程度は納得もしやすいでしょう。
もう一つの大きなメリットとしては、損害賠償金や示談金が高額になる傾向にあることです。民事裁判などで認められる損害賠償金も大きくなるのはもちろん、処罰が重くなるので高額な示談提案も出やすくなります。
4 不同意性交等致傷が認められるハードル
精神的な症状で不同意性交等致傷が認められる場合、代表的なものがPTSD(心的外傷後ストレス障害)です。これに関しては、事件を公訴時効にかけないためにPTSDの発症を認めた可能性もある裁判例(https://www.sankei.com/article/20220908-JNEVNBF2DRNILLIJTR3LI46ITY/)があるなど、訴訟上の都合から認められるのではないかという疑いもあるのですが、基本的には致傷結果の証明も厳格に行われるべきであるとされています。とくに、PTSDでの不同意性交等致傷については、先述の通り外見から判定することも出来ないので、立証のハードルは高くないと言えます。具体的に立証のハードルといえる主なものは以下です。
・具体的な基準があること
PTSDになった原因と思われる出来事の重大性などのほか、実際の生活や認知の状態にどのような変化があったのかが問題となります。診断基準が具体的に定められており、その診断基準に当てはまるかどうかがまず問題になります。
・審理が長期化すること
PTSDになったことや、事件との因果関係の証明のために、実際に診断や鑑定に当たった医師が法廷で証言する必要が生じることが多いです。また、事件が裁判員裁判になるほか、加害者側からの控訴がされる可能性も高くなります。
・被害者として尋問に立たなければならなくなる可能性も高くなること
具体的にどのような状況の変化が起きたのかなどについて、被害者様の調書等が不同意とされることも多いです。刑事訴訟法改正が進んでおり、法廷での証言についてはだいぶ負担が少なくなるようにはなっておりますが、それでも負担が大きいのは変わらないと言えます。
5 不同意性交等の被害に遭った方は一度弁護士にご相談ください。
不同意性交等の被害に遭われた方、納得いく処罰を実現し、納得のいく損害賠償金の獲得を目指されたい方は、ぜひ一度被害者弁護を扱う弁護士にご相談ください。
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